「野菜工場」と「シリコンバレー」。

先日、とあることで、千葉県柏の葉キャンパスにある「千葉大学」を訪ねた。「水耕栽培」や「LED」による「野菜作り」に関するレクチャーを受け、キャンパス内に広がる「野菜工場(研究施設)」を見学するためだ。

レクチャーをして下さったのは、野菜工場に関する日本の第一人者の丸尾教授。丸尾教授の話は非常に分かりやすく、予備知識の乏しい僕にも、日本そして農業先進国オランダの野菜工場の現状がとてもよく理解できた。

日本におけるLEDと水耕栽培による野菜作りは、露地物に対してまだまだコスト競争力がなく、すべての野菜生産量に占めるシェアは、まだ数%と記憶している。

それでも、今から10年後には、野菜の種類によっては30%程度にはなるだろうということだ。

現状はどうか?例えば「朝取りレタス」は「朝10時に店頭に並ぶ(その必要があるかは疑問)」が、そのためには「午前0時」から「投光器」を使って収穫しているという。そんな激務の後継者は見つからないし、親も継がせたくない。

一方、レタスを含めて、野菜の5~6割が「業務用(カットレタス:スーパー、レストラン向け)」になって来ているらしく、となると、味は勿論、食感(歯応え)、色味等は大切だが、見てくれが悪くても問題はない。LEDと水耕栽培によるレタス(に限らない)栽培では、そのような需要を反映した品種開発をすれば良い。

また、ご存じの方も多いと思うが、日本の農業人口の約半分(46.8%)は「70歳以上」。 日本の就農人口は、10年後には確実に「半分」になる!

ひょっとすると、一年中、好きな野菜をリーズナブルな値段で食べられる今の時代は、ある意味、特殊とも言えるかもしれないし、今後は就農人口が減り、国産野菜は値段が高くなり、その野菜の旬な季節しか食べられなくなるかもしれない(丸尾教授)。TPPによる廉価な野菜の輸入は増えるだろうけど、日本人は「国産」が好きだからね・・・。

では、農業先進国のオランダではどうか? DENSO等の「日本の技術(農業ロボット)」が使われているが、それを「オランダの企業」が「システム化」しているらしい。どこかで聞いたような話である。

因みに、日本の技術は、定植日に、開花日、収穫日が予測できるらしい。つまり、光量や温度をコントロールすることで、出荷日を調整することが可能ということだ。凄いことである。

また、オランダには「Glass City」なる「10km x 10km」の広さの「野菜工場の集積地」があるらしい。然るに、ロジスティクスを含めて「労働効率・生産性」を高くできる。

この「集積地」であるが、I.T.の世界で言えば「シリコンバレー」である。

リスクマネー、リーガル(法律)、アカウンティング(会計)、起業成功者によるエンジェル投資、EXIT候補企業(スタートアップを買収する大企業)、起業家を歓迎するカルチャー、グローバルな銀行等が、50マイル内に存在している。

それが、ユニコーンと呼ばれる時価総額「10億ドル」以上のスタートアップ(株式未公開)を多数産む理由である。

日本における「I.T.系スタートアップ」の「集積地」は間違いなく「東京」である。

では、日本に「農業」における「集積地」はあるのだろうか? 現時点では恐らく無いだろう。

シリコンバレーは政策で出来たエリアではないが、オランダの農業の成功には政策が働いているように思う。

政府は事業には介入せず、民間に任せれば良い、という話はよく聞くし、僕も基本的にはそう考えているが、ある程度のモーメンタム(勢い)が着いた後は、New York や London が成功しているように、政府が後押しすることは有効なように思う。

たった半日の「野菜工場ツアー」ではあったが、想像していた以上に「農業」は「サイエンス」であり、「テクノロジー」だということが理解できた。

僕が20歳若かったら、農業ベンチャーをやろうと思ったかもしれない・・・。そのぐらい「可能性」を感じた。

日本には素晴らしい技術がたくさんある。問題は、どうやってそれらを事業化するか?である。

甚だ微力ながら、貢献したい。