初めての「ロンドン」。

僕に似たのか、4月から小学生になった長男は甘えん坊で、最初は毎朝、僕が小学校まで送って行っていた。

彼との約束は、徐々に送っていく距離を短くし、最後は一人で行く、というものだったが、僕がシリコンバレー出張の時、偶然、同じマンションに住んでいる人と登校時に一緒になり、途中まで一緒に行ったらしい。

その後、毎朝、その方と一緒に行くようになったのだが、友だちから「だんだん短くして、最後は一人で行くって言ってたじゃん!?(話が違う)」と言われたらしく(そりゃ当然!)、そのオジサンに、友だちと遭遇しない途中まででいい、と言うようになった。

今もマンションの玄関を出たところまでは僕が一緒に行っているのだが、下の子の面倒を見るので大変な妻からは「いい加減、一人で行くように言ってよ・・・」とクレームを頂戴している。

ところで、来週は一週間、ロンドンに出張である。

「LeWeb」という、ネット関連のヨーロッパで最大級のカンファレンスに参加するためだ。

因みに、このカンファレンスに参加する人たちのリストが公開されているのだが、日本人は、三木谷さんと僕の2人だけ。

三木谷さんはスピーカーとして参加されるので、純粋な参加者は僕だけということになる。

そんなわけで「唯一の日本人」ということもあってか、LeWeb開催期間中、僕と会いたいというメッセージが、専用システムを通じて送られてくる。

シリコンバレーでは日本人は当たり前だが、さすがに「ロンドン」まで出掛けていく日本人は少なく、僕は「希少価値」というわけだ。

ところで、僕にコンタクトしてくるヨーロッパの人たちとのやり取りを通じて、僕は、とても大きなことに気がついた。

それだけでも、高いお金を払って参加することを決めた価値があったと思う。

LeWebに公開されている僕のプロフィールは、シリアル・アントレプレナーとして今までに計8社の創業を経験し、そのうち1社は東証マザーズ上場、もう1社は Yahoo! JAPANに売却。現在は「Global Seed-Accelerator, President & CEO」なわけで、実際の人物はともかく、プロフィールだけを見たら、会いたいと思うのは不思議ではないw。

尚、現在の僕の立場を反映してか、僕にコンタクトしてくる人たちは、ほぼ全員、例外なく、国際展開を考えているスタートアップの経営者である。

彼らのビジネスモデルや送られてくる資料を見て気づいたことは、それらの殆どすべてが、僕が既に「知っているモデル」であり、「驚かされるモデルはない」ということだ。

イギリス人もフランス人もロシア人も、そして、日本人も、今のインターネットに見出す「オポチュニティ」は「同じ(変わらない)」だということである。

彼らが手がけるビジネスは「ネットビジネス」であり、ドラッカーのいう「イノベーションの7つの機会」の中の「知識に基づく産業(イノベーション)」に該当し、そこには共通する要素がある。

以下は、ドラッカーの「イノベーションと起業家精神」から引用(一部、加工)。

まず最初に、イノベーションが起こりそうでありながら何も起こらないという期間が長く続く。

そして突然、爆発が起こる。数年に渡る「開放期」が始まり、興奮と「乱立」が見られ、脚光が当てられる。5年後には「整理期」が始まり、僅かだけが生き残る。

自動車も家電も、コンピュータも然りである。

そして、いずれの場合も、生き残った企業は例外なく、初期のブームの時に生まれたものである。ブームの後では事実上、新規参入は不可能になる。

また、今日、この「開放期」が混み合ってきたことは間違いない。

1830年代の「鉄道ブーム」は、イギリス国内に限られていたが、現在は「先進国」と言われるものの数が増えており、100年前には極わずかの国しかもたなかったもの、つまり「知識を持つ人たち」、特に科学や技術によるイノベーションのために直ちに働き始める用意のある訓練された人材を持っている。

しかも、通信技術の発達により情報は瞬時に伝播、共有され、旅行も簡単に行われる。

そして、最も重要なことは、知識に基づく産業(イノベーション)の場合、「市場はひとつ(グローバル市場)」になる、ということだ。

<ここまで>

特に、ネットビジネスが「ソーシャル」になり、顧客のニーズに応える方法が「ソーシャル・アプリ」になると、「英語」市場と「日本語」市場にローンチするのとでは、同じ能力と努力でも獲得できる「市場規模(=成長性)」が異なり、資金を調達する上でも「英語版」の方が「有利」なのは間違いない。

獲得した資金で事業を拡大し、余力が出たところで、非英語圏にも参入する。

しかし、日本語でのサービスでは、そうはいかないだろう。

製造業と異なり、「取扱説明書」を現地の言葉に「翻訳」すればいいというわけにはいかない。

たった4人で始めたスタートアップも、グローバル市場での競争に直面している。

日本のスタートアップは勿論、彼らに「投資」をしている我々も、その事実を改めて直視する必要がある。

ロンドン滞在中は、LeWeb で知り合ったスタートアップや訪問予定の現地企業の経営者との会話を通じて感じたことを、時間の許す限り、書こうと思っている。