代表者からの挨拶 ~ jannovation spring に懸ける想い ~。

2011年8月。私はシリコンバレーにあるPlug and Play Tech Center 大ホールの片隅で、350人の聴衆を前に、慣れない英語で懸命にプレゼンをする20名を超える日本人の若い起業家の姿を見ながら、昭和の高度経済成長を実現した先輩方の苦労に思いを馳せていました。

私の両親はふたりとも昭和一桁生まれで、貧しい日本に育ち、戦争を経験し、そして、戦後の高度経済成長を担ってきました。父は幼少の頃、自宅で飼っていたヤギの乳を絞り、動物性タンパク質を摂っていたそうです。その後、昭和の高度経済成長の恩恵を存分に享受した私達の世代は、何不自由ない生活を送ることができるようになりました。

しかし、1991年の金融・不動産バブルの崩壊以降、日本経済は「失われた20年」とまで言われるようになり、それに追い打ちをかけるように「3.11」が起こり、日本は一瞬にして、「激動の時代」に突入しました。

10年ほど前に、作家の村上龍氏は、「希望の国のエクソダス」という本の中で、こんなことを書いています。

「この国にはなんでもある。本当にいろいろなものがあります。だが、『希望』だけがない」。

少子高齢化とGDPの2倍以上の政府債務に苦しんでいながら、その一方で、各種規制や既得権益に群がる人達は改革を阻み、その結果、若者の雇用が犠牲にされ、これからの日本を担うはずの世代が、将来に対する「希望」を持てなくなっています。

それでも、今年の「新成人」を対象とした調査結果1 では、「自分たちの世代が『日本を変えていきたい』」とする声が「約8割」と、戦後最大の国難と言われる現状をきちんと直視ししています。失われた20年といわれる時代に育った、失うもののない「若い世代」こそ、この国の「当事者」としての意識が高いこともまた事実です。

社会を「変革」し、人々に「勇気と自信」と「感動」をもたらし、将来に対する「希望」を持てるような試みができるのは、政府ではなく、我々一人一人の国民です。そして、このような時代にこそ求められるのが、変化を「当然」且つ「健全」なこととして受け入れ、そこに「イノベーションの機会」を見出し、リスクをとって果敢に挑戦する「起業家」です。

起業家の聖地であり、グローバルイノベーションを次々と輩出するシリコンバレーの空気に触れ、様々な人達と出会い、議論をすること、それも学生時代にそのような「機会」を得ることは、自分自身がそうであったように、その後の人生にとって大きな影響をもたらすと確信しています。

一人でも多くの学生の方がこのプログラムに参加し、刺激を受け、ご自身の将来を切り拓いていくきっかけとなることを心より願っています。

2012年2月1日

株式会社サンブリッジ グローバルベンチャーズ
代表取締役社長 平石郁生

(※1:全国の新成人男女500名を対象に『2012年新成人に関する調査』を実施。2011年12月6日~8日、マクロミル社による)