「一生、チャレンジャー(挑戦者)でいたい」。

2月3日。今日は「節分」。文字通り、季節を分けると書く。今日を境に少しずつ暖かくなっていくことを期待したい。

ところで、とあることで一昨日から妻が入院し、ここ2日間、子供とふたりで過ごす夜が続いている。

無くしてみて初めて、その存在の大きさや有難みに気づくというが、まさしく、そう思う。

ところで、激動に揺れた2011年が終わり、2012年を迎えて一ヶ月が経った。

昨年後半からあまり書かなくなったブログも最後の更新から一ヶ月、そして、サンブリッジ グローバルベンチャーズを設立してからもちょうど一ヶ月ということで、久しぶりにブログを書くことにした。

さて、書きたいことは色々あるが、嬉しい出来事があった。

先程、起きてきてfacebook をチェックしていたら、Message の Others のところに「1」とあり、何かな・・・と思ってクリックしてみると、今から12~13年前、僕が原宿のマンションの一室で、ベンチャーとは言えない零細なベンチャーを細々と経営していた頃に訪ねてきてくれた、当時、とある証券会社に勤めていたという方からの「起業します!」という挨拶だった。

その彼には大変申し訳ないが、彼のことは覚えていないし、その時の僕が、彼にどんな話をしたのかも当然、覚えていない。

でも、「『起業したい!』と思ったのも平石様から大きな影響を受けた所が非常に大きいと思っております」という一文を読み、とても嬉しく思ったと同時に、自分自身の生き方に責任を持たなければいけないと、改めて思わされた。

実は、以前にも何度か今回のようなことがあり、その都度に同様な思いをしてきたが、僕にとっては「7度目の創業」にあたるサンブリッジ グローバルベンチャーズを設立して一ヶ月目の「節分」に、そのようなメッセージを頂戴したことは、何かの「意味」があると思っている。

事実として、彼に返事を書きながら、今からちょうど12年前(干支でいう一周。あの時も年男の翌年だった)、現ALBERT代表取締役会長の山川さん達と一緒にインタースコープを創業した頃、自社のウェブサイトのスタッフ紹介でのメッセージに、「一生、チャレンジャー(挑戦者)でいたいと思います。僕にとっての挑戦とは、一生、自分らしく生きていくことです」と書いていたことを思い出した。

メッセージをくれた彼に感謝し、彼の決断に恥じないよう、僕自身も頑張っていかなければと思う。

二つ目のトピック。サンブリッジ グローバルベンチャーズでは「2/27~3/2」の5日間、大学生と大学院生を対象とした「jannovation spring」という、シリコンバレーでの「缶詰プログラム」を開催する。

実はこのプログラムのきっかけは、サンブリッジ創業者のアレンが関西出張に行った際、とある教授の方との話で盛り上がり、彼の一存で決めてきたことであり、突如として発生した台風のようなプロジェクトに、現場のスタッフは大騒ぎとなった。

まあ、いつものパターンで、慣れていると言えばそれまでだが、僕のように何度か起業し、会社経営をしてきて、尚且つ、アレンと歳も近い人間は別として、若いスタッフは、アレンから言われたら、そりゃ、ノーとは言えない。

こうして書きながら、インタースコープ時代やドリームビジョンとしてスタッフを抱えていた頃の自分を思い出し、アレンを反面教師(失礼!)としなければと思う次第である。

但し、サンブリッジの仕事とは言え、僕の責任で開催を決定した「Innovation Weekend Grand Finale 2011」に、アレン(サンブリッジ)がスポンサーしてくれたお陰で何とか開催できたことを考えると、僕が「jannovation spring」開催に責任を持つのは、ある種、イーブン(フェア)な話である。

ところで、その「jannovation spring」だが、準備の時期が「Innovation Weekend Grand Finale 2011」と重なり、昨年の間は、僕は殆ど手伝うことができなかったのだが、何とかスポンサー企業の目処もたち、無事に開催できそうなところまで漕ぎ着けた。

ここまで来れたのは、例によって超優秀なインターンの面々のお陰だが、それに加えて、シリコンバレー側のスタッフのコミットが大きい。僕のブログ上で恐縮だが、心からお礼を申し上げたい(まだ、終了していないので、お礼を言うのは早いけどw)。

そして、今年からGVH(Global Venture Habitat)大阪の責任者となった牧野というスタッフの頑張りなくしては、ここまでさえ、来れていないと思う。

その牧野のリクエストで、「代表者からの挨拶 ~ jannovation spring に懸ける想い ~」という原稿を書いた。

今日明日には「jannovation spring」のウェブサイトがカットオーバーされると思うが、節分と立春(明日)に因んで、僕のブログにも掲載させていただくことにする。

実は、この原稿、少々恥じらいながら書いたことが文脈に表れていたらしく、シリコンバレーオフィス責任者でサンブリッジ グローバルベンチャーズの取締役でもある川鍋が「思いが直球で伝わるように原稿を変えてみました」というメッセージと共に、少々リライトしてくれた。

以前にも書いたとおり、アレンとは個人的に12年の知り合いだが、サンブリッジという会社としては「外様」である僕にとって、こうして、理念とビジョンを共有できるスタッフと仕事ができることは、とても幸せなことだ。

実は、アレンからは昨年の夏前から、(サンブリッジに)フルコミットしてもらえないか?と言われていたのだが、当時の僕は、また大きな責任を背負い込むことと、ドリームビジョンの株主に対する責任から、良い返事を避けてきたのだが、前者はともかく、後者に関しては、サンブリッジの仕事を通じて(実際に、ドリームビジョンから SunBridge Startups LLPに出資をしている)、彼らへの責任を果たしていこうと決断をした。

三つ目のトピック。今年に入って2冊目となる「日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門」という本を読んだ。

「もう代案はありません」という副題がつけられたその本の著者は、藤沢数希という、アゴラ言論プラットフォームでのブログで有名な外資の投資銀行に勤務する人だが、計算科学や理論物理学の分野で「博士号」を持つ彼の著作は、極めて複雑な経済や高度な理論が、とても平易な言葉で分り易く解説されており、僕のように経済学部を出たわけでもない人間が読むにはうってつけの本である。

是非、一読されることをお勧めする。

そして、ドリームビジョンとして手掛けていた人材紹介業から撤退し、エンジェル投資と投資先の社外取締役や顧問等の仕事を除き、一切の仕事を止め、毎朝、妻を仕事に送り出した後、カフェをハシゴしながら、唯ひたすら「読書」をすることが日課だった2009年に読んだ「自助論(スマイルズ)」を、今こそ、全国民に読んで欲しいと思う。

また、福沢諭吉が書いた「学問のすすめ」は、人口が「3,500万人」しかいなかった当時の日本で、なんと「350万分」が売れたそうだが、それはつまり、赤ちゃんから高齢者まで含めた10人に1人が読んだことになり、当時の日本国民には、そういう「危機感」とスマイルズの「自助の精神」があったということである。

10年ほど前、作家の村上龍氏は「希望の国のエクソダス」という本の中で、「この国にはなんでもある。本当にいろいろなものがあります。だが、『希望』だけがない」と書いたが、3.11で不幸にも被災した方々や一部の尊敬すべき人達を除き、今の日本には「自助の精神」が足りないと思う。

話は変わるが、田中康夫氏が国会答弁で述べたように、「遺伝子組み換え」の食料が輸入されてくることは断固として阻止しなければいけないが、そのこととTPP参加の是非は別の議論である。

上述の藤沢数希氏の著作によると、1970年以降、政府の「コメの減反政策」に関する「補助金」に「年間2,000億円」という国費(税金)が投入され、その額は現在までに「累計7兆円」にもなるという。また、OECDによると、日本の農業への直接的な補助金と、関税800%というコメのように極めて割高な農産物を買わざるを得ない間接的な日本国民の負担の合計は、毎年「5兆円」を超えているらしい(L.A.に住む叔母は日本に来る度に、野菜が高い高いと言って文句を言っている)。

僕は、藤沢数希氏の著作を読み、読書が日課だった日々に読んだミルトン・フリードマンの「資本主義と自由」を思い出した。

「jannovation spring に懸ける想い」の中に、既得権益に群がる人達ということを書いたが、僕には「族議員」や「自助努力を忘れて、政府に助成金の陳情をする人達」や「赤字国債を発行し続ける政治家」が理解できない。

しかし、一国の政治のレベルはその国の国民のレベルを表すわけであり、環境や周囲を批判する暇があったら、自分にできる努力をコツコツと積み上げ、足元から変えていく以外に方法はない。

僕にもう一度、大きな責任とチャンスをくれたアレンと僕の決断を支持してくれたドリームビジョンの株主の期待に応えるためにも、若くして亡くなった両親の愛情に応えるためにも、そして、僕が生まれ育った日本の復興の一助となれるよう、一生、挑戦者でいられるよう、頑張っていこうと思う。