「捨てるもの」を決める。

「内定式」と「日本社会」というエントリーを書いた後、暫く間が空いてしまったが、僕にしては珍しく?、これといったテーマが無かった。

書こうと思えば書けるネタはいくつもあったが、どうしても書きたいテーマが無かった。

今日は久しぶりに、起業というかベンチャーに関することを書いてみたい。

今年4月から法政大学のビジネススクールで「プロジェクト(事業計画立案)」の指導を仰せつかることになり、様々な事業計画(ビジネスプランのドラフト)を拝見する機会が増えたことは以前にも書いたが、ここ最近、既に起業されている20代30代の方やこれから起業しようとしている人から相談されることが多くなった。

彼・彼女達の相談にのることにより、自ずと自分自身のことを振り返ることになるが、僕にも彼・彼女たちにも共通して言えるのは、「市場の構造化」が出来ていないということだ(僕の場合、出来ていなかった)。

「市場の構造化」とは、どのような「顧客」が存在し、彼らがどのような「理由」により、どのような「商品・サービス」を買っており、その「市場規模はどのぐらいか?」ということと、その中で「自分(自社)」にとって「市場機会」となるのはどの領域で、自分の「顧客」は誰か?ということを明確にするということである。

特に、自分の「顧客」は誰か?(顧客の定義)ということが、意外と明確になっていない。

確かに、多少の分析スキルや経験を要することではあるが、それほど難しいことではない。

にも関わらず、「顧客の定義」が出来ていないのは、「捨てる顧客とサービス」を明確にできないからなのだろう。

何故なら、少々無理をしてでも頑張って色々とチャレンジする方が人間の性(特に起業するような人)には合っており、出来そうかもしれないことを止める(捨てる)ことは、相当な勇気が必要だから。

ドラッガーが「劣後順位(やってはいけないことの優先順位)」が重要だと言っているが、まさしく、そういうことだ。

話は変わるが、今週の土曜日、ドリームゲートのアドバイザー総会なる会合で、「起業を成功に導くプロ支援者とは?」なるテーマで講演をさせていただくことになっている。

あまりにご大層なテーマで、少々気が引けてしまうところがあるが、自分自身の経験と最近の相談事の内容を踏まえて、少しでも参考になる話ができればと思っている。

ところで、日銀が「ゼロ金利」を容認する追加金融緩和を決めたが、はたして、どの程度の効果があるだろうか?

今の日本社会は、人口減、財政破綻リスク等の先行き不透明感(閉塞感)から、「リスクを売りたい人(資金需要)」も「リスクを買いたい人(投融資先を求める組織)」も少ないのが現実であり、量的緩和がストレートに経済の活性化に結びつくとは、当の日銀も考えてはいないだろう。

今日、資金(財源)を必要としているのは、年金や健康保険、介護等の「社会福祉」領域が殆どであり、その財源の元となる、次の成長分野が存在しない。

いや、存在しないのではなく、既得権益を保持しようとするがあまり、これからの成長分野に、人材と資金を思い切って振り向けることができないのだろう。

「ノーベル化学賞」を2人も受賞するほど、日本には優秀な人材と技術が存在することが、そのことを証明している。

ブログの更新が滞っている間に「ハーバードの『世界を動かす授業』」という本を読んだが、戦後の焼け野原から、日本がいかにして「奇跡的な経済成長」を遂げたか?が「ジャパン・ミラクル」として紹介されている。

そこには、緻密な「国家戦略」があった。

人間は結局、危機感からしか変われないのかもしれないし、裕福になった国(国民)は、一度得たものを失いたくはなく、既得権を守りたくなるのは宿命なのかもしれない。

ネットバブルの頃は、一攫千金を狙って、千載一遇のチャンスとばかりに、放っておいても若者が起業したわけだが(そういう僕もそのひとりだった)、今日のような社会情勢の時ほど「リスクを売りたい人」が必要だし、オールジャパンで、彼・彼女達を応援するべきではないだろうか?

あれから、ほんの10年。まるで違う世界に住んでいるようである。

ソーシャルゲームだけは、元気がいいけれど・・・。