プレミアムモルツ V.S. エビスビール

「政治と経済」は混迷し、一方、それを吹き飛ばすかのような「WBC」2連覇に沸く昨今の日本社会において、また、僕のブログの傾向からも、ちょっと唐突感のあるエントリーだが、暫く前から気になっていたことなので書いてみることにした。

「モルツ」は、僕が大学生の頃、「麦芽100%」が売り物で、クリアなイメージのブランドとして登場した。「プレミアムモルツ」は、文字どおり、モルツの「プレミアム版」である。

一方の「エビス」は「100年以上(1887年誕生)」の歴史を誇る「老舗ブランド」で、やはり、「麦芽100%」のビールである。

但し、最近は「新興勢力」の「プレミアムモルツ」に勢いに押されて、「エビス」の影が薄くなっているように思う。

両社共に「著名タレント」を起用し「華やかさ」を演出しているが、狙っているポジショニングは、大きく異なる。

「永ちゃん」こと矢沢永吉の「ホンモノ感」とモンドセレクション「金賞受賞」という「ファクト(事実)」により、圧倒的な存在感を発揮する「プレミアムモルツ」に対し、「エビス」は、20年近く前に一世を風靡した「小泉今日子」(ターゲットが彼女を支持する世代なのだろう)と玄人受けする映画俳優「浅野忠信」や元YMOの「高橋幸宏」を起用し「クオリティ感」を出そうとしているのだろうが、ブランドとしての「エネルギー(存在感)」という意味では、「プレミアムモルツ」の方が高いように思う。

ひと言で表せば、「プレミアムモルツ=モダン」に対して、「エビス=ゆったりした時間」といったブランドバリューの違いが感じられる。

商品の歴史的背景やコンセプト、また、企業文化等を考えると、「エビス」が「プレミアムモルツ」のような戦略を採るのは現実的ではないが、もうちょっと違った戦略で、「エビス」の良さを生かし、歴史や伝統を損なわずに「華やかさ」や「洗練された」感じを出すことは、出来るように思う。

ただ、キリンの「ラガー」と「一番絞り」の関係に見られるのと同じ問題が、この両ブランドにも垣間見れる気がする。

「ビール」と聞いて相応しいシーンは?その時の「擬態語」は?といった調査をすると、「ワイワイ」「ガヤガヤ」といった「動的」なイメージがマジョリティを占める(随分前の話なので、今はひょっとしたら違うかもしれない)。

「しっとり」とか「ゆったり」といった「静的」なイメージも出てはくるが、どうしてもマジョリティは「みんなで楽しく」といった「動的」なイメージなのである。

何を言いたいかというと、約20年前、キリンが「一番絞り」を出した時、名優「緒形 拳」をキャラクターに起用し、炉端で串に刺した魚を焼き、一番絞りと一緒に「美味しそう」に飲む、シズル感たっぷりのテレビCMを放映し、素晴らしい成功(売上)を収めたが、欲張って更なる売上とシェアを狙い、「品質感」ではなく、ラガーのような「メジャー感」を狙って「路線(訴求内容)」を変えたところ、「ラガー」と「一番絞り」の差は何?という感じになってしまった時期があったということである。

数字は覚えていないが、売上も伸び悩んだと記憶している。

つまり、その商品のコンセプトなり「ブランド資産」に合わないことをやっても上手く行かない、ということだ。

因みに、人間も同じである。

自分自身のことでも、痛い経験がある。自分には適性のないことをして、たくさんの人達に迷惑をかけた。自分に出来ることとして、その「失敗」から「学びたい」と思う。

さて、話を「プレミアムモルツ」V.S.「エビスビール」に戻すと、エビスはプレミアムモルツと同じような戦略を採ることは難しいが、商品自体が持っているポテンシャルは、まだまだあるように思う。

ところで、ビール系大手4社の業績や関連数値でおもしろいものを発見した。

「売上」「利益」「資産」といった項目では、「キリン」「アサヒ」が拮抗し、「サントリー」「サッポロ」という順番になるのだが、従業員の「勤続年数」となると、なぜか、「サッポロビール」が「首位」になる。

つまり、人が「辞めない」ということだ。

そのこと自体は良いことなのだが、おそらく、欠員が出ない=新しい人(転職者)も少なく、「人的資産(知識やノウハウ)」の「新陳代謝」が進みにくい(活性化しにくい)ということが危惧される。

因みに、「年収」の順位でみると、「サントリー」はアサヒを抜いて「2位」に浮上。「サッポロ(HD)」は「4位」。首位の「キリン(980万円)」と比較して、「162万円」ほど少ない。

このあたりにも、「動」と「静」の違いや「ブランド資産」の「レバレッジ係数(僕が勝手につくった言葉)」の違いがあるように思うのは、僕だけだろうか。

サッポロHDの営業利益に占める恵比寿ガーデンプレイス等の「不動産事業」の比率が「74%(2006年度)」というのも、何をかいわんやである。

でも、僕は「エビスビール」のファンである。そして、「プレミアムモルツ」のファンでも。