「プーチン」のロシア。

僕のブログを読んで下さっている方々も、そろそろ、ロシア話には辟易とされているかと思うので、今日のエントリーでひとまず、ロシアに関する話は終了としたいと思います。

さて、今日のエントリーのテーマである「プーチンのロシア」というのは、NHKが計4回シリーズで放映したテレビ番組の名前でもある(正式には「揺れる大国 プーチンのロシア」)。

今日がその最終回(4回目)だった。

僕がロシアに関わりだしてから、約1年。計3度の訪露を通じて、少しずつではあるが、ロシアという国の輪郭がぼんやりと見えてきたように感じている。

2007~2008年頃、ロシアに駐在している友人から、彼が帰国する度に、「モスクワは世界一、物価の高い都市だ」とか「東京はもはや最先端ではない」と聞かされていたが、70年に渡る「社会主義」の実験に失敗してソビエト連邦が崩壊し、ロシアになってからも、ついこの間まで「ハイパーインフレ」だの「ロシア経済危機(1998年)」だのと騒がれていた国の首都が、ほんの10年で東京を凌ぐ都市になっているとは、どう考えても信じられなかった。

しかし、昨年5月にモスクワを訪れて以来、彼の言っていることの意味がよく理解できるようになった。

まだ、その経済構造までは理解できていないが、平均的なモスクワ市民の収入に比して、モスクワの物価は極めて高い。

きっと一部の富裕層が、その富を吸い上げているのだろう。

因みに、モスクワの人口は、約1,400万人。ロシアの人口の約12%が集まっている。

しかし、ロシアの「富」の実に「約80%」が、モスクワに集まっているとも言われている。

異なる見方をすれば、ロシアという国は、それだけ貧富の差が激しい、極端な「格差社会」だということである。

ところで、僕はモスクワよりも、サンクトペテルブルグの方が好きだ。

サンクトペテルブルグ建造時、当時のヨーロッパの著名な建築家を集めて建築した歴史的建物がそのまま残っており、街中は、さながらヨーロッパを彷彿とさせる。

そういう僕は、実は一度もヨーロッパには行ったことがないけど・・・。

因みに、世界の「ナカタ」も、サンクトペテルブルグがお気に入りらしい。

さて、話を今日のエントリーのタイトルに戻すと、NHKの番組での「異質な存在感を示す」という表現のとおり、ロシアという国は「独特の威圧感」を感じさせる国である。

特に、モスクワには、その「威圧感」を感じる。

ソビエト連邦崩壊後、旧ソ連の国々で構成された「CIS国家共同体」の中心国として再スタートしたロシアは、ヴォッカ中毒じゃないの?と思わせる「エリツィン」大統領の下、世界における影響力を低下させていったが、「原油価格の高騰」と「プーチン」という指導者の登場により、再び、国際情勢の「表舞台」に登場してきた。

社会主義から資本主義への移行に伴う国営企業の民営化の過程で誕生した「オリガルヒ(新興財閥)」に代表される世界経済における影響力増大の一方、ソ連時代と比較して、当時の見る影もなく「軍」が「弱体化」したことに危機感を憶えた「プーチン」は、大統領に就任するなり「軍」の強化に力を入れた。

それまでの「徴兵制」ではなく、「志願兵」を組織したのである。そして、その「志願兵」を厚遇し、同時に「愛国心」を植え付ける教育をしていった。それが「カデット」と呼ばれる「軍人養成学校」である。

プーチンが「軍」強化に動いた背景には、ブッシュ政権下のアメリカがロシア軍の弱体化に付け込むかのように、CIS諸国を次々と「NATO(北大西洋条約機構)」陣営に取り込んでいったというプレッシャーがある。

ロシアと国境を隣接する「ウクライナ」や「グルジア」までもがNATO加盟かという情勢になり、プーチンが強い危機感を抱いたのだろうことは想像に難くない。

ところで、ロシアにおける「愛国主義」は同時に、その歴史的背景も影響し「ナショナリズム」を生みやすいという。

その負の側面が、ここにきて現れているらしく、モスクワでは、外国人排斥運動が発生しているらしい。

しかし、現在のロシアは、さすがに旧ソ連時代とは異なり、政権や軍を批判するメディアや団体も存在し、NHKの番組では、それらの人々も紹介されていた。

それらの人の存在は、僕のような、よく言えばロマンチスト、悪く言えば(それが現実)「イマチュアな人間」には、ある意味、救いでもある。

何故なら、自分がビジネスとして付き合い始めたロシアが全体主義一色の国だとしたら、自分のやっていることに疑問を禁じ得ないからである。

一方、僕が知り合ったり付き合っている人々は、とても「知的」で「社交性」に富み、自分達の国をニュートラルに捉えており、ビジネスを抜きにしても、交流を続けたいと思う人たちである。

先日の訪露で訪れたサンクトペテルブルグの街中では、横浜市から小学生がサンクトペテルブルグを訪問し、現地の小学生との交流を深めるというイベントのポスターを見掛けたりもした。

罪も無い人達が尊い命を落としたグルジア紛争の早期解決と、ますます複雑化する世界情勢の平和を祈りたい。