その選択は「最短距離」か?

昨日のエントリーにも書いたとおり、昨夜は、法政大学ビジネススクールで客員教授としての初めての授業を行った。

計10回シリーズの授業で毎回、I.T.系ベンチャー企業の創業経営者をゲストにお迎えし、創業の背景や差別化戦略・拡大戦略、資金調達、人材採用・組織デザインに対する考え方等についてお話いただき、それをもとに質疑応答を行う。そして、学生の皆さんは、興味のある会社について分析し、自分が経営者だった場合の今後の戦略についてレポートを書く、というものだ。

初回は、ネットベンチャーの老舗である「カレン」の創業者であり、2年前に「Q Life」を創業した山内善行さんをゲストにお迎えし、2社の創業の背景や戦略、そして、生々しい事実を含めて、今日至る奇跡を語っていただいた。

当ビジネススクールの学生諸氏の約2/3が「自費」ということもあり、山内さんの講義の後の質疑応答は、かなり盛り上がった。真剣味が違うというのは、こういうことを言うのだろう。

ところで、山内さんの話しを聴いて、これは「凄いこと」だと思ったことは、カレンとQ Life では事業内容が大きく異なることから、自ずと「カルチャー」が異なることになり、山内さんは、それを見越して、QLife においては、カレンとは全く異なる「経営方針」を取った(ている)ということ。

ご存知の方も多いと思うが、カレンという会社は「ナレッジマネジメント」や「PDC」が得意な会社で、自社のノウハウをメソッドとして構築し、それを出版やセミナーという形で世に出すことにより、自社の知名度と評価を獲得してきたという経緯がある。

一方、Q Life においては、とにかく「スピード重視」で、常に、この選択は目的に対して「最短距離か?」を自問自答し、「PDC」は一切、行わず、管理コストを徹底的に省いているという。そして、それがリスクマネーを提供してくれた株主に対する「責任」だと、山内さんは言っていた。

因みに、Q Life は設立後2年にして、既に「医療情報の口コミ」サイトとして圧倒的「NO.1」の地位を獲得している。

ひとりの創業経営者が、これだけ異なる経営スタイルを取れるということに、僕は、山内さんの経営者としての高い能力を感じた。

それは、山内さんが持って生まれた「才能」の成せる技だと思うが、では、どうすれば、そのような才能が「開花」するのか?そのためには、どのような「環境」が必要なのか? また、ビジネススクールの客員教授という立場で考えた場合、どのような「教育メソッド」が有効なのか? ということを考えさせられた。

と同時に、元SONYの出井さんが言っていた、「何の試合をしているのか?」という一言を思い出した。

そのことについては、別のエントリーで書きたいと思う。