あれから20年。

今朝(5/23)の日経新聞の一面に「円の独歩安」に関する記事が掲載されていた。ご覧になられた方も多いと思う。

記事中にドルベースでの日米中そしてEUの「名目GDP」の比較が掲載されていた。GDPの成長はドルベースということでGDPの数字は「為替」の影響を受けるわけだが、物価を加味した実質での円の貿易加重平均は、1985年のプラザ合意前の水準だそうである。

僕は、その翌年の1986年に初めてアメリカ(ニューヨーク)を訪れたが、アメリカ人の友人の「初任給(年俸)」が、当時の為替レートで計算すると「約1,000万円」だったことに驚いたことを覚えている。要するに、円がまだまだ弱かったということである。

日経の記事に話しを戻すと、「円の実力(価値)」が、僕が始めてニューヨークに行った頃の水準以前に戻ったということだ。

では、最近の円安基調の原因は何か? 為替やマクロ経済の専門家でもない僕が言うことではないが、日本の低金利に辟易とした「個人マネー」が日本から脱出していることが大きいのは、僕のブログを読んで下さっている方々もご存知のとおりである。

問題は、その原因である。単純に言えば、「預金金利が低過ぎる」からである。銀行が低金利の恩恵に預かり、預金者が「搾取」されてきた結果である。ヘッジファンドの「円キャリー取引」も、日本の超低金利の産物である。

ところで、銀行と言えば、住友信託銀行が何年かぶりで「法人税」を支払うという。

ここ何年かの間、多くの銀行が不良債権処理のために最終利益がマイナスだったのが、ようやくプラスに転じたということだが、僕には、どうも腑に落ちないものがある。

僕らの血税による「公的資金」を注入し、銀行の構造改革を「支援」してきたわけだが、その結果が「超円安」を招き、国際基軸通貨としての「円」の存在感が薄らいで来ているのは何とも皮肉な話しである。

確かに、円安は「輸出関連」企業の業績を押し上げるが、はたして、このままでいいのだろうか?

記事中にドルベースでの日米中そしてEUの「名目GDP」の比較が掲載されていたと書いたが、過去10年間のGDPが殆ど成長していないのは日本だけである。

今年3月に上海を訪れた時、インフォプラントの大谷さんが「東京は止っているように見える」と言っていたことが、GDPという数字にも顕著に表れているということだ。

ここ数年は一部上場企業の業績が好調で株価も堅調であるが、失われた10年を経て、日本の構造改革が進み産業構造が変化した結果ではなく、BRICsを代表とする「新興国」の成長により「輸出産業」が潤った結果である。要するに「外需」に依存した体質がより助長されたということだ。

GDPは殆ど成長せず、国際通貨としての「円」の陰はどんどん薄くなり、いったいこの国はどうなってしまうのか? 

確かに、経済成長がすべてではないが、これらの現象に日本人として危機感を感じているのは、僕だけではないはずである。