花王アジエンス V.S. 資生堂TSUBAKI

僕の拙い知識が正しければ、10%以上のシェアを取れればシャンプー市場ではトップクラスのブランドとなる。つまり、非常に細分化されたマーケットである。

1年以上前のことになるが、花王の「アジエンス」の開発責任者の方のお話を伺ったことがある。

シャンプー市場は「清潔」というベネフィットと「美しさ(華やかさ)」というベネフィットのふたつのカテゴリーに大別することができ、花王は「清潔」マーケットにおいては「メリット」というトップブランドを持つリーディングプレイヤーであるが、「美しさ(華やかさ)」マーケットにおいては外資系ブランドの独壇場となっており、今までにそのマーケットで勝ったことがなかったらしい。

その市場において、「これでダメだったら、もう諦める」というぐらいの覚悟で臨んだ(開発した)のが「アジエンス」だったという。そして、見事に成功を収めた。

そこに化粧品関連のトップブランドのプライドを賭けて真っ向勝負をかけてきたのが、資生堂「TSUBAKI」である。

この戦いの本質は、海外ブランドが支持されている「美しさ(華やかさ)」マーケットにおいても、欧米コンプレックスではなく、アジア人としての「誇りや美しさ」に自信を持とうというメッセージにあると思うが、欧米v.s.アジアという構図でマーケティングをしている「花王」に対して、ストレートに「日本人」ということを打ち出している「資生堂」という点が興味深い。

更に言えば、他のメーカーをも巻き込んだ「アジア&日本」という訴求競争を巻き起こしており、ある種の「ナショナリズム・マーケティング」とも言える。

花王の戦略は、「欧米v.s.アジア」という訴求が、資生堂の「日本(人)」という訴求に対して説得力を維持できるか?という課題を抱えており、資生堂の戦略は、メンツをかけて「旬の日本人女優」をこれでもか?というほどに投入しているインパクトを維持できるのか?(かなりのマーケティングコストであるのは間違いない)という課題を抱えており、それぞれの今後に注目したい。

マーケティング戦略という意味で、久々に興味を持った事例である。