第5回 藤田 晋氏 – 法政大学MBAとの共同講座 2006/10/16 (1)
2016-05-14代表取締役社長
藤田 晋 氏
1973年 5月16日 福井県生まれ。
株式会社サイバーエージェントは1998年の設立後、インターネット広告会社として躍進し2000年3月に東京証券取引所新興企業市場マザーズに上場。現在はブログメディア、ECサイトなどのインターネットメディア事業及びインターネット広告代理事業、投資育成事業を軸に事業展開をするインターネット総合サービス企業。「21世紀を代表する会社を創る」を会社のビジョンとして、サイバーエージェントグループCEOとして事業拡大を図る。
尊敬する経営者
- 平石:
- 尊敬する経営者はどなたかいらっしゃいますか。
- 藤田:
-
特にいませんね。
やはり影響受けたのは、USENの宇野社長が非常に大きかったと思います。目の前で社長というのを見ましたし、スタンスもかっこいいなと思います。自然体な社長でした。就職活動したときに当時有名なベンチャー経営者の方で「カリスマのかたまり」という感じの社長も見たんです。 でもその人の下で働きたいと思わなかったんですよね。自分が自由に発想し、能力を発揮できるような気がしなくて。
それよりも社長がみんなでがんばろうよと、お前の能力が必要なんだ、というような、自然体な経営者に優秀な人材が魅力を感じるんじゃないかと。
若者ながらに思っていたので、そういうスタイルには結構影響を受けましたね。
ご自身のブログについて
- 平石:
- わかりました。次の質問は今の話に関連しそうですね。 藤田さんブログを書かれていらっしゃいますよね。 そこで、藤田さんにとってブログは日々、 社員とのコミュニケーションの一つでもあると思うんですが、 ブログを始めて変わったことはどんなことですか。
また、ここまでプライベートなことを綴っている社長は、 なかなかいないと思いますが、 藤田さんの考える社員とのコミュニケーション、 そして代表としてのあるべき姿とはどんなことですか。 こんなような質問があるんですけども、どうですか。
- 藤田:
- 渋谷ではたらく社長のブログというのを書いていますが、 お読みになったことがある方は・・・。あ、ほとんどですね。
良かった点というのは計り知れないですよ。 特に僕は営業出身なのにあまりしゃべるのが得意じゃないので、どちらかというと書いて伝えるほうが得意なんですよね。 なので、それをこうやる上でものすごい武器を手にしたというか、会社始まって1年目からベンチャー企業の日記というのを、 ホームページに書いてたんですが、 そのときから自分が書くほうが得意というか、みんな社員がみるので、うちの会社こういう考え方なんだ、 ここに向かってるんだ、というように社内の意思統一が出来ます。また、これから採用したい人に向けて、こういうことを考えていて、 こういう人材が欲しいというようなことも言うことが出来ます。 更に、今もそうですけども、新商品の告知も出来ると。
ただし、これをやっていく上で、 一番なのは視聴率を取ることなんですよ。 要は伝えたいところばかり書いていても人が集まらないので、目的が社内の意思統一と株主とのIR活動だけじゃなくて、 「我々のブログサービスのPR」 という結構重要な役割を私のブログが担っているので、
一般の方にも読んでもらわないといけないと。 こういうこともあって一般目線を意識した上で、難しいことは書かないようにしているんです。 でも、書かないから頭が悪そうだって言われても不愉快ですし。不愉快な思いも結構するんです。だから難しいんですよ。本当に。 利害関係者が多い。たくさんの株主、たくさんの社員とお客様、 社会的には色んな意見がある中でおもしろくし続けるというのは、 自分で言うのもなんですけど芸術みたいなものです。
おもしろいし、メリットも大きいんですけども、大変です。
採用の際にどこを見るか
- 平石:
-
ブログは皆さんやめてしまいますよね。 今の話の中に、ブログで書いてることは採用に関しても、色々な効果があるというお話がありましたけど、人を採用するときにはどこを見ますか、 それは新卒を採用する場合と中途で採用する場合と、 で違いますか、という質問を頂いたんですけども、これはいかがですか。
- 藤田:
- インターネットの事業は基本的に歴史が浅いので、 中途の人を採用するのは非常に困難なんです。 とくに我々が大量に採用する場合、それだけの数がいないんですね。 ほとんどポテンシャル採用なので、 新卒の考え方とほとんど同じなんです。あと、採用する上で一番大事にしていることがあります。 その前提として我々のそもそものベースになっているのが、
「買収をほとんどしないで自分で作って伸ばしていく」
ということです。 つまり、中にいる社員がすごく頑張って、 事業を拡大しているんですけど、 その前提があるので、非常に文化やチーム意識を大事にしています。 そこで、性格を結構重視するというか、 ものすごく優秀で嫌なやつよりも、そうじゃないけど性格よさそうな人を採用していくと。
しかも、ベクトルが同じようになるように、 ビジョンに共感しているか、 共感できる素養がある人を採用して、同じ目的を向いて、 みんなが納得したほうがいい、と考えています。
雰囲気がすごくいい組織って業績いいですよね。 逆に言うと、雰囲気をすごく良くすることに成功すれば、 業績は良くなるわけです。
ギスギスした雰囲気で優秀な人がそれぞれやっているよりも、 チームとして組織として結果を出してやっているほうが重要だ、 とも考えています。
人生の目標について
- 平石:
- はい、わかりました。あとはですね、 ちょっと毛色が変わりますけども、
「藤田さんにとっての人生の目標および、 目標を目指すうえでの心の支えは何かを聞きたいです」
という若干抽象的な質問があります。 21世紀を代表する会社を作ると言うのは、 多分藤田さんにとっては公私もなく目標だと思うんですけども、 何かそれに補足や、 それ以外に人生の目標とか目指しているものとかありますか。
- 藤田:
- もう、公私共にこれ一本で、他は考えないようにしています。
考え直したくないんですよ。その目標の意義とか。 なんでなんだとか。
そういう意味で言うとその目標に向かって、 奴隷のように頑張っているだけで。
よく「すごい野心があるんですね」と言われるんですけど、 実はないんですよ。だけども一回決めているので、 集中してそれをやっているというだけです。 - 平石:
- 藤田さんにとって21世紀を代表する企業に、 何か定義はあるんですか。
- 藤田:
- 明確な従業員数で何人とか売上何兆円というのもありますが、 例えば私は、ソニーは20世紀を代表する会社と考えています。
20世紀の半ばに生まれて、 あっという間にそういう会社になりました。 我々も規模や社会的な影響力などで、 そういう会社だと言えるようになればと思っています。
だから今の600憶という売上では全然話にならないんですね。
10年後の日本社会について
- 平石:
-
はい、わかりました。 今の質問にも通じるところがあると思うんですけども、
「藤田さんの考える10年後の日本企業の姿、 社会とはどのようなものでしょうか」
という質問がありますけども、10年後の日本社会なり、 会社ってどんなふうになっているとお考えでしょうか。 - 藤田:
- 10年ですか。今の流れとしては、 戦後急速に日本的経営によって伸びてきたのが、 成熟してきて伸びが駄目になってきた、バブルが崩壊して、実力主義だとか、成果主義だって言われていたのが、 またゆり戻している傾向がありますよね。 しばらくはそういう状況が続くと思ういます。またこれで経済成長がなければ、 またはまっていくっていう流れになると思うんですけども。 今東証一部企業とか復活していますし、これからも上がっていくし業績も良くなっていくでしょうけど、いったん生まれ変わらないと難しいんじゃないかな、 と言う気はしますね。
- 平石:
- じゃあ産業構造がかなりこの10年で変わるだろうという・・・。
- 藤田:
- 僕が目指すべきと言うか、あってほしい社会で言うと、 我々のような若い世代が日本の経済の成長とか、雇用の創出というのを担っていく社会がいいですね。 政治の世界みたいに、年配の人ばかりが牛耳っていて、 若者は活躍できないのが当たり前、という状況じゃない社会にしないと、 活性化しないと思うんですよね。
そう意味でもアントレプレナーはもっと出てくると思います。
ビジョナリーカンパニーについて
- 平石:
- わかりました、それでは最後にもうひとつだけ伺いたいんですが、 同じ方がいくつか質問されてるんですけど、そのうちの一つで、
「藤田さんが考える、日本で、または世界で、 ビジョナリーカンパニーはありますか」
とのことです。 いかがでしょう。サイバーエージェントですか。 - 藤田:
- いえいえ、我々なんか本当にとんでもないですよ。 今は調子悪いですけどソニーとかは、 やはり素晴らしいと思いますから今は状況悪いですけど、 多分復活すると思いますし。そうですね・・・。
ありきたりな社名しか出てこないんですが。ただ、色んな会社を見ていますけど、それを参考にするべきところはするべきだと思いますね。それでもやはり新しい時代ですし、我々新しい組織、会社なので、基本的にはやはりサイバーエージェントのオリジナルで 作って行きたいと思っています。 つまり、ビジョナリーカンパニーという本を、鵜呑みにしているわけではありません。 それでもビジョナリーカンパニーはたまに読み直します。
新たな発見もあるんですけれども、 あくまで影響を受けているという状態です。 そういう会社にしてもその、本にしてもですが。 基本的にはやはり新しい時代にマッチした経営で、 と考えているので。
- 平石:
- 特にどこかを意識しているというのはない、ということですね。
- 藤田:
- ありませんね。強いていうならばリクルート、 がやはり影響受けているところは大きいと思います。 意識しているというよりは、 やはり前の会社もその前の会社もリクルート出身で、 かなり真似させてもらったところあるので、影響を受けていますね。