第10回 江原 理恵氏 vol.1 (3)

第10回 江原 理恵氏 vol.1 (3)

プロセスを評価してくれる国。

江原さんがホームステイをした町は400人ぐらいの本当に小さなところで、コンビニも歩いていける距離にはなく、学校と家の往復という生活を送っていた。

最初は英語も殆ど話せず、日本のように、留学生だからといって周囲が優しくしてくれたり、ちやほやされることもなく、「辛いことが9割だった」らしいが、「プロセスを評価してくれる」ところや、「得意な分野を見つけて、伸ばそうとしてくれる」ところがあり、「勉強も楽しんでやれた」そうである。

また、「プロセスを評価する」ことに関する印象的なエピソードとして、こんな話をしてくれた。

「向こうはシーズン制で、いろいろなスポーツをプレイできます。冬はバスケットボール部に入っていたのですが、私は殆ど試合に出させてもらえずいつもベンチにいて、試合に出たのは勝っている試合の後半、それも2~3分という感じでした。シーズンが終わったあと、活躍したプレーヤーを表彰するという機会があったのですが、その時に『モウスト・インプルーブド・プレーヤー(最も進歩した選手)』というのに選んでもらったのですね。

写真:江原 理恵 氏

「アメリカに留学して、学校がこんなに楽しいところだと知り、
カルチャーショックを受けました」。

私としては、絶対に自分が当てはまるとは思っていなかったので、ボーッと座っていたのですが、コーチがおっしゃっていたことがすごく感動的でした。

『今回の賞は誰にあげるか悩みました。彼女は、シーズンの始めには、レイアップシュート(ドリブルシュート)すらできませんでしたし、チームで一番下手で、試合で活躍したわけでもありませんでした。しかし、シーズンを通しての成長度合いという点では、彼女に勝る人はいませんでした』

ということで、結果だけでなく、プロセスを評価してくれました」。

また、スポーツに限らず美術においても、生徒それぞれの「個性」や「多様性」を尊重する風土があり、そのお陰で、「それまでは、自分自身で何かを作るとか、賞を取れるような人間ではなかったのですけど、こういう、自分に合ったコツコツやるやり方もあるんだということを、人生の体験として学んだような気がします」。