第07回 江田 健二氏 vol.1 (2)

第07回 江田 健二氏 vol.1 (2)

高校受験に失敗。

江田さんは、高校受験に失敗し、そこから考え方を変える。

「富山では、公立と私立をそれぞれ1校ずつ受けるんです。田舎なので、皆、公立に行くことが当たり前なのですが、公立は1校しか受けられない。僕が受けたところは進学校でした。模擬試験では全然問題ないという感じだったのですが、当日上がっちゃってダメだった。私立は受けていましたが、まさかそこに行くとは思っていなかったのです。そこで初めて、『物事というものはちゃんと準備をしなくてはいけない』と思いました。(結果によって)こんなに人生が変わるのかと・・・」。

15才の少年にとって、それは物凄くショックだったと思うが、その時に、江田さんのお父さんは、自分の子供に、こう話したという。

「健二は、本当に良い経験をしたよ」。

当然のことながら、その時の江田さんには「その意味がまったく分からなかった」そうだが、受験に失敗したことに対して何も言わず、むしろ、「良い経験をした」と言ってくれた父親の意味することを社会人になって初めて理解し、自分の父親をすごく尊敬するようになったそうだ。

写真:江田 健二 氏

社会人になって初めて「良い経験をした」という意味が分かって、すごく父親を尊敬するようになりました。

ところで、江田さんは、高校を卒業するまで、厳密に言うと、大学進学のための「浪人生活」が終るまで、出身地である富山県で過ごした。つまり、大学受験でも「失敗」したということである。

「僕が卒業した高校は、慶応に合格したのは40年間で初めてというぐらいの学校でした。ですから、高校で勉強していても、大学には行けそうもない感じだったのです。でも、途中で大学に行きたいと思うようになり、授業を受けていてもダメだから、自分でなんとかしなくちゃと思うようになりました。浪人生活の1 年間で物凄く偏差値を伸ばさなければいけなかったので、自分なりのスケジュールを組んでやったのです。予備校には行かずに・・・。それが、自分でやることに対する恐怖心がなくなって、自信につながりました」。

高校受験に失敗し、進学校へ行けず、大学受験に失敗して浪人。予備校には通わず、独学で慶応大学に合格。そんな経験、つまり、人に頼らず「自分でやる」ということが「起業」の下地になったのだろう。