第05回 伊佐山 元氏 vol.1 (3)

第05回 伊佐山 元氏 vol.1 (3)

ロジックよりも、「人との相性」。そして、スタンフォードの洗礼。

「東大」で尚かつ優秀だった彼は、就職に際しては、公務員になるという王道から銀行や商社を含めて様々なオプションがあったが、「自分が学べる場所であれば、正直、何でもいい」と思っていたそうだ。

高校時代からテニス部の主将をやっていた彼は、色々な人間と接触して一緒にやっていくという、「ロジックよりも、人との相性であるとか、ケミストリー(体質)ということを大切」にしてきており、「会社の名前よりも、そこにいる人との相性だけで就職先を決めたんです」と言う。

そのようにして、日本興業銀行に就職した伊佐山さんであるが、学生時代にスタンフォードの学生と一緒にベンチャーをやっていたことの影響もあってか、将来は「スタンフォード」に行こうと決めていた。

運良く、行内留学でスタンフォード行きの切符を手にした伊佐山さんであるが、その切符は、実は「片道切符」だった。

そこから彼の人生は、大きく変わっていく。

余談だが、スタンフォードには、彼の妹さんの名前のついた講座がある。

写真:伊佐山 元 氏

ビジネススクールで頭のいい人というのは、大企業とか組織に属することに興味がない。自分で事業を興して社会にインパクトを与えることしか考えていないんです。

自分で会社を興すことしか考えていない。

さて、念願叶ってスタンフォード(シリコンバレー)に来た彼は、「こんなに頭のいい且つ志の大きい連中が世界中にいるんだ」と、大きなショックを受ける。

「ビジネススクールで頭のいい人というのは、大企業とか組織に属することに興味がない。自分で事業を興して社会にインパクトを与えることしか考えていないし、自分のリーダーシップの力で成功することしか考えていないのです。組織の誰かがやるのを待つのではなく、すべて自分の実力と行動力で成功することを考えているのですよね。これは結構なカルチャーショックでした」。

それまでは、どちらかというと、組織として成長するプロセスに慣れていた彼は、『ああ、やっぱり、個人として強くないと、この社会では行きていけないんだ』ということを学ぶ。

そして、そのためには、人に言われてやるタイプではなく、自分から、これをやるためには何をしなくてはならないか?を導き出し、何でも実験してトライするだけの行動力と度胸、そして、最も重要な忍耐力がないと何もできないことを知る。

「起業する、独立するというのも、教科書でいくらでも『体験談』としては読めますが、一度、自分で起業してみないと、どれだけ大変なのかは分からないでしょう」。