第04回 吉川 欣也氏 vol.2 (3)

第04回 吉川 欣也氏 vol.2 (3)

これからの時代のアントレプレナーに必要なこと。

そして、こうも続けていた。

「でも、それを支えるのには、見えていた人達、つまり、大企業で経験した人達が絶対に必要なわけです。僕よりも優秀で、いわゆるハーバードでもスタンフォードでも出て、MBAを取って、グーグルのVPになって、その後でうちに来てくれればいいと僕は言うわけです。You TubeやフェイスブックのVPくらいのポジションに名前がないとダメだと思います。

アスキーの西さんやソフトバンクの孫さんはもちろん、メーカーや大手・専門商社の人達はかなりアグレッシブに、そういうところに入り込んでいました。起業するのは僕の仕事ですが、心配なのは、そういう伸びそうなところのエグゼクティブに、僕が知る限り、日本人が全然入り込んでいないことなんです。僕に、30代の入り込みが悪いですね。

オポチュニティーがいっぱいあるのに、もったいない。でもそれは、日本のマーケットが縮小して来ているからでもあるんです。中国、インド、ベトナム、ロシアなどは確かに伸びているし、世界の注目度が高いことは否定しませんが、日本のプレゼンスは相当低い。これまた、悲しい限りです。

シリコンバレーで注目されているスタートアップベンチャーが日本に行くんだけど、滞在するのは1日、2日。

日本食を食べて帰っちゃう、もしくは、中国が台湾にすぐ移動という感じになって来ている。だからそういう意味では、ここに根を張って行かないといけない。今まで僕達の先輩が作ったネットワーク以上のことをやらないと、日本のアテンションは減っているわけです。中国とかインドに行ったほうがいいと、僕も含めてそう思っている。

もう日本のマーケットは狙っていなくて、日本に帰るのは、友達の結婚式があるとかで 1年に1回ぐらいになっちゃうわけです。

仕事で帰ることなんか、なくなっている。『パラダイス鎖国』じゃないけど、本当にそうなっているのに気づいていないことが怖いと思います。

日本は、そこそこマーケットがあるように見えるけど、どんどんシュリンクしている。というより、中国とかが大きくなってきているから、もう10%もいかないわけです。iPhoneの売上とか見ると、まだ日本は2位で、次がドイツとかになるんだけど、そういうのは特別で、全体から見るとすごく小さい。

日本がイニシアチブを取っていた、椎名さんがIBMジャパンの社長だったり、三井さんがIBM本社の副社長だった時代と今とは違うわけですよね。ヘッドクォーターでボードミーティングの時に『日本、頑張ってね』と。『はい、次の課題に移ろうよ』という感じ。日本人が日本のことでプレゼンテーションをするのに5分もいらないわけです。「ま、だいたいこんな感じだろう。

知ってる人間もいるし、それなりに頑張っているし。よろしく」みたいな感じで、チャレンジもないし。そういうことに気づいてないというか、ちゃんと伝えてないし、そのポジションの人達は、自分達もリタイアするわけだし、何も言わないんですよ。

そういうような話が結構、ここにいると年々あるわけです。背筋が寒くなるような話のほうが実は多いので、ニコニコしてる場合じゃないという感じですね」。

写真:吉川 欣也 氏

今までに僕達の先輩が作ったネットワーク以上のことをやらないと・・・。日本のアテンションは減っているわけです。

ところで、この原稿を書いている時に、コンサルティングファーム出身で上場企業の社長を経験された方と食事をご一緒する機会があった。

彼が言ってたことは、次に、ベンチャー企業のムーブメントが来るとしたら、その時は、世界中とは言わないまでも、少なくとも最初からアジア全体を見据えた事業展開をする人たちが増えてきた時ではないか?ということ。

吉川さんに続く人達がたくさん輩出されることを期待したい。

文章・写真: 株式会社ドリームビジョン 平石郁生

※次回予告: 来週は、シリコンバレーの著名ベンチャーキャピタルのパートナーを務める伊佐山さんをご紹介します。