第02回 出口治明氏 vol.2 (2)

第02回 出口治明氏 vol.2 (2)

エリートとは、時間と空間を超えて「公」を考えられる人。

さて、ここから先は「番外編」として、出口さんから伺ったことで、とても印象に残った話を書いてみたい。

とあることから「エリート」の定義が話題に上ったところ、中国の故事を例に出して、こんな話をしてくださった。

アヘン戦争の時代、清政府が「林則徐」という有名な高官を大臣にして広州に送り、英国からのアヘンの密輸の取締りを命じた際、彼は英国のことを知るために、お金に糸目をつけず、中国で入手可能な西洋に関する文献を集めたそうである。

しかし、英国艦隊は広州へは赴かず、いきなり、北京に近い天津にその姿を現したことにより、清政府は驚き、林則徐を解任し、彼は左遷されてしまう。彼は、左遷されたことにより、大金を叩いて集めたにも係わらず不要になってしまった英国に関する文献を、「これを漢文に訳してくれ。きっといつかは役に立つ」と自分が最も信頼できる学者に預けたそうである。尚且つ、有り金もすべてその学者に渡したという。何故なら、翻訳している間は仕事ができず、収入がない(飯が食えない)からである。

そして、その結果、書かれた本が、吉田松陰たち幕末の志士が明治維新の際に必死になって勉強をした「海国図志」である。因みに、「命担保」という言葉で、わが国に、生命保険を初めて紹介したのも、海国図誌であった。

「林則徐」のように「時間と空間を超えて公のことを考えられる人」をエリートと呼ぶ。出口さんのエリートの定義である。

人生は「出会い」だと思う。こんな出口さんと一緒に仕事ができる岩瀬氏が羨ましい。

写真:出口治明 氏

取材当日:左から岩瀬氏、平石、出口氏

※次回予告:来週から3人連続で、シリコンバレーで活躍する日本人の方々をご紹介します。

文章・写真: 株式会社ドリームビジョン 平石郁生