第01回 岩瀬 大輔氏 vol.2 (1)

第01回 岩瀬 大輔氏 vol.2 (1)

自分にしかできないこと。

ネットライフ企画(準備会社)を始める際のことについて、こんなエピソードを語ってくれた。

「谷家さんはベンチャー投資をいっぱいやっていて、留学中の僕のブログを読んでくれていたんですね。また、共通の知り合いが何人もいて、(谷家さんに)僕のことを紹介してくれたダニエル藤井(ICGの時の上司)とも仕事をされていました。谷家さんと会うと、『君がベンチャーをやるならすぐにでも投資するから、会社を創りなさい』と言われました。『ネタが無いなら、僕が考えているプロジェクトがいくつかあるから、それを一緒にやろう』と誘われました。そうやって、熱心に誘ってもらったんですけど、うじうじしていて、まだ大手ファンドの面接が残っているんですけど・・・と言っていたら、『大手ファンドだなんて、岩瀬君も、やっぱりまだブランドに未練があるようだね・・・。どこどこのVP(バイス・プレジデント)なんて、大したことないよ』って。彼は、30歳でソロモンブラザーズのマネージングディレクターを経験していたんですよね。友達には、投資銀行のトップを務める人間が何人もいるけど、必ずしもみんながハッピーなわけではない。一番大事なことは、誰にでもできることじゃなく、『自分にしかないユニークな個性とエッジを活かした生き方』をすることじゃないかと。それが一番、良いことじゃないかって言われて、なんか吹っ切れたんですよ」。

また、当時の彼にとって、もうひとつ、吹っ切れたことがあった。HBSで優秀な成績を収めたことが、とても大きな自信になり、ある意味、後ろ盾がなくても、自分ひとりでやっていけると思ったそうだ。HBSに行く前は、卒業後もアメリカに残って、イチローや松井じゃないがメジャーリーグに挑戦したいという想いがあったそうだが、「アメリカでも、十分通用するじゃないか」と思い、それも「気が済んだ」という。

写真:岩瀬 大輔 氏

やっぱりやる以上は、ソーシャルな意味合いっていうのを大切にしたいと思っています。

では、色々な「未練」から吹っ切れた彼は、どのようにして、何に「自分にしかできないこと」を見出したのだろう?

HBSは大企業の幹部を育成するところと思われがちだが、実は、アントレプレナーこそが最高という教育方針を採っている。従って、いつかは自分でやりたい(起業したい)という人が大半である。

そんな学友たちと話しをする中で、みんなから「今、アジアって超ホットじゃないか。そんなアジア、俺だって行きたいよ。お前、ローカルで強みがあるのに、どうしてアジアに帰らないんだ?」と言われたことで、無意識のうちに、米国が優れていて日本は劣っていると考えていたのは間違っていることに気づく。野球にしても、ゴルフにしても、スポーツの世界ではそうかもしれないが、ビジネスの世界では、SONY、ホンダ、トヨタと、世界ブランドになっている企業がたくさんある。その事実に改めて気づいたという。

また、自分が一番活躍できるところ、つまり、「希少価値」のあるところに行くべきだと考えるようになった。

「例えば、ベイカー・スカラーと言っても、アメリカには何千人もいるわけですよ。でも、日本には殆どいない。であれば、変な見栄とかではなく、日本が好きだし、自分が最も活躍できて、心地よいところにいよう」と、HBS留学を通じて考えるようになったと語っている。