Berlin as a New Startup Hub in Europe.

2018年も早2月。Global Startup Review をお読みいただいている皆さんはいかがお過ごしだろうか?

直近2回はシリコンバレーでの「AIの熱狂」について、弊社ベンチャーパートナー Ron Drabkin にレポートしてもらったが、今年初めてとなるGSR vol.5 は、ヨーロッパに戻り、ベルリンのスタートアップ・ムーブメントを紹介したい。

ヨーロッパにおける代表的な「Startup Hub」はロンドンであるのは間違いないが、ベルリンはその独特なカルチャーと位置により、ロンドンを追い上げる「New Startup Hub」と言っていいだろう。

例えば、2015年8月、NOKIA が同社の地図情報事業(NOKIA HERE)をドイツの自動車メーカーのコンソーシアム(Audi, BMW Group, Daimler)にEUR2.5bn(約3,800億円)で売却したことは記憶に新しい。この出来事は、スタートアップシーンにおけるベルリンの重要性を物語るシグナルになったようだ。また、NOKIA HERE チームに在籍していたメンバーは、それまでの経験を次の事業に活かし、得られた資金をスタートアップに投資したり、アドバイスしたりするようになった。

ベルリンのスタートアップシーンを語る上で欠かせない存在がある。敢えて申し上げるまでもなく、世界中のProven Success Model の「クローン」を量産している「Rocket Internet」だ。フランクフルト証券取引所に上場しており、2018年2月2日現在、時価総額は「EUR38.62(約5,200億円)」をつけている。

今までにRokect Internet が生産したクローンは、「Alando(eBay が4300万ユーロ/約51億円で買収)」「Wimdu(Airbnbのクローン)」「Lazada(amazonのクローン)」「CityDeal(Grouponのクローン)」等。最大の成功は「Zalando(Zapposのクローン)」で、2018年2月2日現在、フランクフルト証券取引所で「EUR114.74(約1兆5,500億円)」の時価総額を誇っている。

スタートアップの資金調達額にも、ベルリンの活況が見て取れる。

少々古いデータだが、2015年にベルリンのスタートアップに投じられた資金は「EUR1.97bn(約2,660億円) Source: Dow Jones Venture Source」に上り、その額は2014年にロンドンのスタートアップに投じられたEUR1.35bnを凌駕する。

2015年9月末現在、未公開スタートアップの「累計資金調達額(IPO or M&AでEXITしたスタートアップを除く)」を見ると、ベルリンは「USD3,272M(約3,600億円)」と、他のドイツの都市を圧倒している!

※ソース:Liquidity meets perspective. Venture Capital and Start-ups in Germany 2015, by Ernst & Young GmbH

事実、ドイツの時価総額上位スタートアップ(未公開)TOP30の内、20社はベルリンのスタートアップである。

※ソース:Liquidity meets perspective. Venture Capital and Start-ups in Germany 2015, by Ernst & Young GmbH

また、ベルリンのスタートアップには、ロンドンやシリコンバレー等、海外のVCも投資しており、ドイツ国内のみならず、広く海外の投資家から資金を調達している。その背景には、ベルリンはドイツでありながら、行政手続き以外は「英語」で問題なく仕事ができることや、旧ソ連圏に近く、東欧の優秀なエンジニアが低賃金で採用できること、不動産の賃料が安いこと等がある。行政が主導して生まれたスタートアップエコシステムではなく、自然に勃興したという点も強みと言えるだろう。

一方、ベルリン州政府もこのムーブメントを後押ししており、毎年4月 or 5月に、Asia Pacific Week Berlin という大規模なカンファレンスを主催している。私は2017年5月開催のAPW Berlin に招聘いただき、ベルリンで注目のスタートアップインキュベーター HitFox Group, Founder & CEO, Jan Beckers と対談する機会を頂いた。

彼らは、FinTech, Healthcare, AdTech & Big Data の3つのセクターにフォーカスしており、ポートフォリオの一社、solarisBank のシリーズAラウンド(EUR26.3M, 2017年5月)に、日本のSBI が参加している。

FitFox Group もベルリンのエコシステムを反映して、運営スタッフやポートフォリオにはヨーロッパの人材はもとより、米国人も在籍しており、非常にコスモポリタンな組織となっている。それもベルリンの特徴であり、強みだということを実感する。

ベルリンには、ドリームビジョンの投資先もある。INFARMという「AgriTechスタートアップ」だ。ファウンダーは3人。全員がイスラエル出身である。

※写真(筆者撮影, 2017年9月 in Berlin)は、Co-founder, Erez Galonska(右) and Guy Galonska(左)。

彼らは「建物の中」で野菜を栽培するハードウェア&ソフトウェアを開発しており、ビジネスモデルは「Farming as a Service」だ。詳しくは、TechCrunch の記事を参照されたい。

INFARMによると、収穫された野菜の約30%は、我々の口に入る前に「廃棄ロス」されている。廃棄ロスされた野菜にも「エネルギー」が消費されており、究極の「地産地消」は、都会で野菜を栽培し、都会で消費することだ。INFARMのシステムはベルリンの中堅スパーマーケットやカフェに導入されており、今後の参入マーケットとして、世界の15都市をリストしている。

次回は、投資先としてINFARMを発掘した舞台裏や、その他のスタートアップ、そして、Factory というCo-Working Space を紹介する。

平石郁生 シリアルアントレプレナー&スタートアップアクセラレーター(株式会社ドリームビジョン 代表取締役社長)