AI(Artificial Intelligence)は何に使えるか?

AI は要注目!しかし・・・。

AI は現在、注目の的であり、時代を牽引するテクノロジーなのは間違いない。事実として、AI と Machine Learning は、Crunchbase で最も検索される単語である。2017年12月5日現在、自社を「AIスタートアップ」と称している会社は、Crunchbase上に「2,491社」存在する。

従って、AI関連のスタートアップとビジネスをしたい大企業が、自社の目的に合致するAIスタートアップを探すのは容易ではない。さらに言えば、それらのスタートアップが、AIを使って何をしようとしているのか?を理解するのは至難の技だ。

AI の定義。

AI の定義は何だろう? 筆者は「コンピューターに人間の動作を真似させる」と定義する。AIはとても速いペースで進化しているが、現時点でAIが模倣できる人間の動作には限界がある。前稿でも紹介したとおり、現時点でAIができることは、3歳の子供に教えられるレベルに留まる。例えば、ドライバーレスカー(自動運転技術)はいずれ実現するだろうが、現時点でAI(および関連技術)は、それを実現できるレベルには至っていない。

 

著名なベンチャーキャピタリストの Ben Evans(Andreessen Horowitz)は、こう言っている。「AIによる最も大きなインパクトは、今までのコンピューターは『数字と文字』しか理解できなかったのを、『イメージ(画像)とビデオ(映像)』を理解できるようにしたことだ」。

 

簡単ではないAI のユースケース(活用方法)。

あなたは、こう思うかもしれない。「コンピューターに3歳の子供ができることを教える? ビデオの内容を理解できる?」では、実際にどのような場面でAIを活用することができるのだろう?

いくつかAIを導入しようとする会社が直面するジレンマを紹介したい。

例えば、NHK。彼らは膨大な数の「ビデオ(映像)」を所有している。彼らはAIを使ってそれらのビデオをより良く整理することができるだろう。たしかにそれは効果的ではあるが、革命的というほどではない。革命的とまでは言えなくても、より実践的なユースケースはないだろうか? 例えば、ティーンエージャーがソーシャルメディアに投稿したビデオクリップ(User Generated Midea)に関連するビデオコンテンツを、NHKのアーカイブから見つけられるとか?

銀行ではどうだろう?彼らの支店に設置されている防犯ビデオで録画されている「映像」をより有効に活用するためにAIを使えないか?と考えるとする。それはとても良いAIの活用方法だ(銀行に限らず、例えば、大きな駅には何千台という防犯カメラが設置されているが、それを「人間の目」で監視(分析)するのは不可能だ)。しかし、実際には、殆どの銀行がAIに期待しているのは、いかにして「融資の審査」を効率的で且つ正確に実施できるか?現在は人間が行っていることを代替することだろう。

しかし、これらの活用方法は、すぐには期待するレベルには達しないだろう。

いくつかの有効なAI活用事例

次に、大企業かスタートアップかに限らず、AI を有効に活用している事例を紹介したい。

スクエア(Square):ご存じのとおり、中小零細な事業者に対して、スマートフォンを使ったクレジットカード決済サービスを提供者である。また、スクエアは、クレジットカード決済サービスに加えて、中小零細事業者の資金需要に対応した「小規模ローン」の提供を行っている。

詳しくは、スクエアで Data & Research を担当している Sara Vera 氏がポストした記事を参照いただきたいが、同社では、AI & Machine Learning を有効に活用することで、一般的な銀行がそのリスクや詐欺の可能性を判別し難い「中小零細」企業を対象とした「少額ローン」を提供している。そのような「FinTechサービス」は、スクエアに限ったことではなく、小売の雄、Amazon や、日本ではマネーフォワード、STORE.jp等の「コマース系」プレイヤーも提供してるが、ここで注目すべきことは、日々の事業の効率化のためにAIを使うのではなく、新しい事業を生み出すために、AIを使うことが肝要ということである。スクエアやAmazonでは、コマースを通じての与信分析により、中小零細事業者が資金需要が発生したタイミングで、すぐにローンを提供できる。

つまり、従来の銀行と競合しない(提供が困難な)「全く新しいマーケット」を開発することに成功している。

Alpaca.ai:Fintech領域に関心のある日本のスタートアップ関係者はご存知かと思うが、同社はアルゴリズム技術を活用し、今まではプロのトレーダーしか享受できなかった高度な投資手法を、個人投資家が技術的な知識を習得することなく使えるサービスを開発している。ユーザーは、彼らのサービスのバックエンドでAIが稼働していることを意識することもない。米国コロラド州にあるAIや生体認証、ウエアラブル等、人間とテクノロジーの相互作用にフォーカスした調査会社「Tractica」は、次の10年で、株式市場は、AI にとって2番目に大きい市場になるだろうと予想している。

ThirdLove:個人差はあるのだろうが、女性はブラジャーを買いに行くのはあまり好きではないらしい。試着の手間等、何かと面倒なのだろう。また、自分にフィットするものを見つけることも簡単ではないようだ。その問題を「AI」で解決しているのが、ThirdLoveという米国のスタートアップだ。彼らは何人もの女性を実際に採寸することで、胸の形だけでなく、スリムな人もふっくらした人も想定し、顧客が自分の形やサイズにフィットするブラジャーをウェブ上で選ぶことを可能にしている。そして、商品を自宅に配送する。彼女たちは、お店に出向き試着することなく、自分にフィットするブラジャーを購入できる。

AI を導入する際に気をつけたいこと。

米国での事例を踏まえて、AI 導入の際に留意すべき点を4つほど提示したい。

1. AI というテクノロジーの導入自体は、実はそれほど難易度が高いわけではない。とは言っても、スクラッチからAIを開発することは勿論、極めて難易度が高い。しかし、スタートアップも大企業も、AIを導入している企業は、スクラッチで自社独自のAI テクノロジーを開発しているのではなく、TensorFlow等、既成(オープンソース)のテクノロジーを利用しているケースが多い。

2. 完璧はない。マシンラーニングは、自ら学習するAIである。しかし、完璧ではない。facebook は先日、AIを使って、自殺を考えている可能性がある友達に関するアラートを出す仕組みを導入することを発表した。但し、その正確性において、失敗する可能性がある。facebook は、それらの問題に対処し、何とか乗り越えていくことができるだろう。しかし、すべての会社にそれができるか?というと、そうではないと思う。

3. 社内横断的な施策が求められる。AI を導入することで、ある顧客の購入履歴等から得た知見を他の顧客へ応用することができる可能性がある。しかし、特に大企業の場合、他部署の了解を得る必要があったり、個人情報の保護という観点が障害になる可能性がある。

4. いかにして自社にフィットするAI を見つけるか?自社の事業や解決したい課題にフィットするAIテクノロジーを見つけるのは、容易いことではない。また、前述のとおり、何千と存在するAIスタートアップの中から、パートナーを探すのは、至難の業である。従って、AIを導入する、AI で解決したい(できる)ターゲットを正確に「定義」することが重要である。

多少なりとも参考になれば幸いである。

※原文はこちら。

原文:Ron Drabkin, 当社Venture Partner(シリコンバレー在住のシリアルアントレプレナー&エンジェル投資家)

翻訳:平石郁生 シリアルアントレプレナー&スタートアップアクセラレーター(当社創業者 代表取締役社長)