日本のスタートアップ関係者が抱く「ベルリン」のイメージ。

Global Startup Review vol.7 では、今年4月に実施した「世界の主要スタートアップ・エコシステム」に関する日本人ビジネスマンの「認知・理解度調査」結果をご報告する。また、スピーカーとして招聘いただき、その調査結果を発表した「Asia Pacific Week Berlin 2018(ベルリン州政府主催)」の模様についても、GSR vol.8として、レポートする。

今回の調査においては、筆者が調査設計をし、実査はインターネット調査会社のマクロミルに委託した。

ごく一部の人たちを除き、ベルリンのスタートアップ・エコシステムは日本では認知されていない現実を踏まえ、同一の質問内容にて、マクロミルのモニターを対象とした調査(首都圏在住の男女ビジネスマン)と、facebook, Twitter 等での告知および弊社のコンタクトリストからランダムに抽出した「約1,800人」へのメールでの調査協力依頼による調査(スタートアップ関連の知見を有する方々を対象。以下、オープン調査)とを行い、両者のスコアを比較した。

この場を借りて、オープン調査への回答協力を頂いた方々へのお礼を申し上げたい。また、ベルリン在住のMakoto Takeda氏が経営する bistream社には、調査費用の半分をご負担いただいた。併せて、お礼を申し上げたい。

以下は、本調査の調査概要、回答者属性である。

 

回答者の属性(上のグラフ)について、補足説明したい。

マクロミルのモニターに関しては、同社モニターの職業区分に則った属性となっている。

オープン調査では、本調査の目的を踏まえて、「大企業・中小企業・ベンチャー企業(公開・未公開を問わず)・VC/エンジェル投資家等・大学教員/弁護士/会計士等・大学生/大学院生・個人事業主・その他」という内容とした。また、「大企業・中小企業・ベンチャー企業(公開・未公開を問わず)」に関しては、具体的な仕事の内容を訊いているが、結果として「約54%」が「経営者・役員」と回答している。次に多いのが「新規事業開発等(16.1%)」となっており、運良く、我々が調査したい属性の方々にリーチできている。

では、皆さんは、ベルリンと聞いて、どのようなイメージを思い浮かべるだろうか?

今回の調査で対象としたスタートアップ・エコシステム都市(地域)は、New York, Boston, Silicon Valley, Singapore, London, Berlin, Paris, Tel Aviv(Israel), Dubai(以下、カタカナ表記), 上海, 北京計11都市である。

「ベルリン」のスタートアップ・エコシステムに関して、どのようなイメージがあるか?という質問に対するマクロミル・モニター(n=517s)の回答(自由記述)を見ると、殆どの回答が「よく分からない。特に無い。ベルリンの壁」等となっている。

一方、オープン調査(n=146s)を見ると、「ヨーロッパのイノベーションの拠点。スタートアップが盛んだと聞くが具体的にはわからない。コワーキングスペースが多い。ヨーロッパのシリコンバレー。文化、デザイン、テクノロジーが色々ありそう。現時点で最も尖ったクリエイターがヨーロッパでは集積している印象。ドイツのインダストリー4.0を支える、IoT系 スタートアップが多いイメージ。ブロックチェーンが、仮想通貨以外でも、応用されている」等が挙げられており、「どうやら盛り上がっているらしい」という理解は持っていると判断できる。しかし、まだ「想像の域を脱していない」ということが伺える。

ここからは、主に「オープン調査」の結果をもとに、ベルリンおよび他のスタートアップ・エコシステム都市・地域に関して、日本のスタートアップ関係者(あくまでも今回の調査結果)が、どのような「訪問経験・理解・興味関心」等を有しているかを紹介したい。

下のグラフは、今回の調査対象11都市・地域の訪問経験を尋ねたものである。

ご覧のとおり、オープン調査の回答者の半数以上が、ニューヨーク、シンガポール、シリコンバレー等の訪問経験があるものの、ベルリンに関しては、3割に満たない結果となっている。

しかし、「スタートアップ活動が活発である」と思っている都市・地域を見ると、やや異なる結果となっている。

予想に違わず、シリコンバレーが圧倒的なスコアとなっているが、ニューヨーク、ロンドン、ボストンと並び約4割の回答者が、「ベルリン」には「活発なスタートアップ・エコシステム」があると考えていることが分かる。

では、「行ってみたい」と思っている都市・地域はどうだろう?

イスラエル、シリコンバレーに次ぎ、シンガポールと並んで、ベルリンは2位グループにつけている。

次は、ロンドン、ベルリン、パリといったヨーロッパを代表する3つの都市について、スタートアップ・エコシステムという観点について、どのようなイメージを持っているか? を確認した。

上のグラフは「オープン調査」の結果である。

呈示したイメージ項目は計11個。グラフのイメージ項目は、ベルリンに関して持たれているイメージの高い順にソートしている。

ここから分かることは、ベルリンには「多くのテクノロジー人材がいる」「国際的」と認知されているが、「国際的」「VC等の投資家が多い」という観点では、ロンドンに大きく離されている。つまり、ベルリンは「優秀なエンジニアがたくさんいて、スタートアップが多く、ドイツ国内の人材だけでなく、国外からも多くの人材を惹き付けている」一方、ロンドンの方が「より国際的」で「資金調達が容易(VC等がたくさん存在する)」という理解が成り立つ。これは、各種統計データの結果とも一致している。

また、スコア自体は20-30%台に留まるものの、ベルリンは「テクノロジーに関する受容性」「オープンなネットワーク」「若い人が多い」「生活コストが安い」という項目で、ロンドンやパリよりも高いスコアを獲得しており、スタートアップにとっては、住みやすい都市だと理解されている。

事実として、ベルリンには「194ヶ国(国籍)」の人々が住んでおり、とても「多様性(Diversified)」に富む都市である。また、統計データは確認できていないが、ベルリンのスタートアップ「創業者」の「半数」は「外国人」だという。

一方、スタートアップにとっての「資金調達」という観点では、シード・アーリーステージには充分な投資資金が存在するものの、「€10M以上」になると、ロンドンやシリコンバレーのVCの資金を調達する必要があるという声を、現地のVCやスタートアップ自身から聞いており、これも実態と合致している。

最後に、ベルリンは「英語」が通じる都市だということに対する「認知」を質問した。

ご覧のとおり、オープン調査の回答者の53%が「ベルリンは英語が通じる」ことを認知しており、また、認知していなかった人の約7割が、そのことで「ベルリンへの興味が増した」と回答している。

※個人的には、東京が、ベルリンやシンガポールのように、普通に「英語」が通じる都市だったら・・・と思う。海外のスタートアップ・エコシステムを知り、現地のスタートアップ、VC等と交流が深まれば深まるほど、英語「後進国」の日本は、極めて大きな機会損失をしていることを痛感させられる。

以上が、ベルリンを含む世界の主要スタートアップ都市・地域に関する調査結果である。多少なりとも参考になったようであれば幸いである。

尚、筆者がスピーカーとしてお招きいただき、本調査結果を発表した「Asia Pacific Week Berlin 2018」というカンファレンスの模様については、GSR Vol.8 にて紹介する。こちらも是非、併せてお読みいただきたい。

平石郁生 シリアルアントレプレナー&スタートアップアクセラレーター(株式会社ドリームビジョン 代表取締役社長)