謹賀新年!Happy New Year 2024!

明けましておめでとうございます。今年も宜しくお願い申し上げます。

ここ10年は毎年元旦は実家に帰省し、裏磐梯のグランデコスノーリゾートでスキーをするのが恒例になっていたが、今年は子どもたちの「ダブル受験」があり、東京の自宅で過ごしている。

Facebookへの初投稿もゲレンデの写真を載せることができず、ChatGPT4 (DALLE-E) にpromptを出し、イラストを描いてもらった。英語でprompt を書いたせいか? 僕だけ西洋人っぽい顔になっているw。

他のイラストでもそうなのだが、どうもChatGPTは「算数」が苦手らしい。僕は「二人の子供たち」とスキーに行った絵とリクエストしたのだが、僕以外に「3人」の子供たちが描かれている。実は、最初に頼んだイラストは、リクエスト通り、僕と2人の子供たちが描かれていたのだが、2024 という数字を入れることを伝えるのを忘れており、もう一度、イラストを描いてもらったところ、子供が3人になっていた・・・。

でも、彼らの従兄弟(大学2年生)も一緒に行ったと思えば、悪くない。イラスト自体は、3人バージョンの方がイイ感じなので。

ところで、今年の抱負を書く前に、2023年を振り返っておくことにする。

With the three founders. Guy at left, Erez at my right side, Osnat at right at the old office in 2017.

僕にとって2023年は、兎にも角にも「The year of Infarm」だった。

2023年1月12日 (木)、日本時間18:00、Infarm 創業者の一人、CEOのErez との臨時のMTGがあった。

その翌週の火曜日に、彼との月イチの定例MTGが予定されていたにも関わらず、彼の秘書からメールがあり、1/12 (木) にMTGがセットされた。あと数日待てば話ができるにも関わらず、急遽、MTGがセットされたということは、つまり、悪いニュースだろうことは容易に想像がついた。

Zoom 越しに彼の顔が映し出され、新年の挨拶をした後、僕は「It must be bad news, right?(きっと悪い知らせなんだよね?)」と訊いたところ、「Yes. Unfortunately, the board decided to shutdown the Japan operation.(そうだ。取締役会が日本市場からの撤退を意思決定した。)」という返事だった。

When should we close our business?(いつまでに閉めればいい?)」と訊くと、「Yesterday.(昨日までに)」という単語が返って来た・・・。

その後のことはブログにも書いたので、ここで改めて書くことはしないが、Infarmに投資し、日本法人を設立、そして、約3年に渡って経営してきたことは、僕にとっては得難い経験になった。

野菜を生産しているとはいえ、収益構造的には「完全な製造業」であり、多額の「設備投資」が求められる事業で、累計「US$604.5 million(USD/¥142で計算すると約860億円!)」を資金調達をするような事業は初めてだった。もちろん、すべての資金調達は本国側で行っており、日本法人としてファイナンスしたわけではないが、そのダイナミズムは株主としても、日本法人の経営者としてもヒシヒシと感じていた。

Infarm はベルリン発祥で、日本を含めて「11ヵ国」で事業をしており、一時期、1,200人ほどの従業員がいた。ドイツ企業にも関わらず、ドイツ人比率は、おそらく2割程度しかいなかっただろうし、英語がネイティブなスタッフも同じく2割程度だったと思う。そして、国籍はなんと「50ヵ国」以上あった。当然、社内公用語は「英語」だった。

また、日本法人の経営者だった僕は、約20人ぐらいが参加する、四半期に1度の幹部会議に呼ばれていたが、彼らの国籍も10ヵ国ぐらいで構成されていた。

そのような「多様性と国際性」に富むスタートアップの経営陣の一角としての経験を踏まえると、日本のスタートアップは「モノクローム」に見える。創業者は全員、日本人、従業員もほぼ全員、日本人。株主も日本のVCや日本企業、顧客も日本企業 and/or 日本人という構造では、グローバルな事業を創るのは極めて困難だろう。

今のところ、世界第3位のGDP(市場)があるが故に、ガラパゴス化して成長していけるが、出生率や移民政策が大きく変わらない限り、わざわざブログに書くまでもなく、確実に市場は縮小していく。

ところで、昨年12月21日(木)、僕が株主の一人でもある「Musashino Valley」というStartup Studio 兼 Co-working spaceで、サンブリッジ時代から行ってきた「シリコンバレーツアー」の「拡大同窓会」なるイベントを行った。

新卒でアップルジャパンに就職し、10数年を経て「チカク」というスタートアップ(アップルでの経験を活かし、IoT端末を開発!)の創業者のカジケン(梶原健司さん)と、FinT というスタートアップの創業者で、ツアー参加当時は大学1年生だった大槻祐依さん、そして、Musashino Valley の運営企業の創業者で武蔵野大学アントレプレナーシップ学部の学部長の伊藤羊一さんを交えて、我々日本人にとってのシリコンバレーという存在の意味や影響力、そして、事業を立ち上げて成功させるために必要なことに関して、ざっくばらんにパネルトークを行った。

僕が最も印象に残っているのは、カジケンが説明してくれたアップルの「TOP100」と呼ばれていた(そう言っていたと思う)経営幹部を対象とした会議のことだ。

その会議に招集される経営幹部は、Steve Jobs がファーストネームを憶えている「100人」で、パソコンもiPhoneも取り上げられて、3日間、缶詰になり、会社(事業)の将来を議論していたという。

そこで、その100人は、Steve Jobs から、自分にとって「重要な10個のテーマ」を書き出すように言われ、それを発表した後、その内の「7個」は「捨てろ!」と指示されたという。

「選択と集中」。言うのは簡単だが、人間は「可能性があるものを捨てる」ことに躊躇するし、それには「勇気」が必要だ。ドラッカーのいう「劣後順位」というやつだ。

昨年、特に後半3ヶ月の僕は「欲張りすぎていた」と思う。次のビジネスやステージに進まなければいけないのは重々理解していながら、Infam日本法人の清算業務が終わっていなかったり、自分の年齢(昨年3月で還暦になった!)のことが気になったり、ある意味、ありがたい話だが、欧州のFoodTech系スタートアップから日本市場参入に関する相談があったり、投資先の資金調達を手伝ったりと、何だかんだと慌しくしており、焦っていたのだろう。

そんな時、カジケンの話は「胸に突き刺さった」。あのパネルトークはマジで勉強になった。

それからもうひとつ。昨日の紅白で久しぶりに「ルビーの指環 (音が出ます!)」を熱唱した「寺尾聰」は、なんと76歳!という事実を知り(今朝、とある知り合いのFB投稿で知った)、勇気をもらった。僕もあんな76歳になりたい!と思った。

そして、60代は、まだまだフルスロットルで行ける気がして来た!!

「獺祭(だっさい)」で知られる旭酒造(山口県岩国市)の桜井博志会長は、70代で米国に拠点を移し、さらなる挑戦をされるそうだし!

2024年は、予てから温めていた日本のスタートアップエコシステムに「多様性と国際性」をもたらすことを目的とした、あることを立ち上げようと思っている。

近いうちに、このブログで詳細を説明したい!

ユニコーン狂想曲の終焉。Massive write-off or bonfire of Unicorns?

未だにおカネの値段が「タダ」の日本と、政策金利が5%前後で、銀行に預けておけば、複利で回ると12年で1.7倍、14年で2倍になるアメリカや欧州では、世の中の景色が大きく異なる。

幸か不幸か日本のスタートアップエコシステムは、世界のそれと「デカップリング(decoupling)」されており、幸いにして、今のところ、そのような兆候は見られないが、シリコンバレーでは「不良債権」と化した「多数のユニコーン」が、事業の閉鎖に追い込まれている。ユニコーンとはいえ、黒字化には程遠いスタートアップが大半であり、2024年には、その数はさらに増えると予想されている。

PitchBook が New York Times のためにまとめたデータによると、2023年、約3,200社の未公開スタートアップが倒産した。そして、それらの未公開スタートアップに投下されたベンチャーキャピタル(VC)の資金は「272億ドル(現在の為替レートで約3兆8,624億円!以下、同様に計算)」に上る。

未公開企業は、倒産や不名誉な売却の際にその事実を公表する義務が無いため、全体像を把握するのは難しく、実際にはそれ以上の数のスタートアップが倒産もしくは不本意な事業売却を余儀なくされている可能性がある。

尚且つ、WeWorkのように上場している会社やHopinのようにスポンサー(新たな投資家)を見つけた企業の多くは統計データに含まれていない。

直近で言えば、マイクロソフトからの買収オファーを拒否したこともあり、a16zやKhosla Ventures という錚々たるVCの投資先でもある「D2iQ」は2023年12月8日、事業を閉鎖。累計US$247.3M(約352億円)を調達し、大型ユニコーンとして君臨していたが、現地時間で12/7(木)、同社を清算し、債権者に資産を分配するという通知を株主に送ったと報じられている

また、ボストンを拠点とする著名ベンチャーキャピタル「OpenView」は12月5日、従業員の半数を解雇し、新規投資を中止すると発表した。事実上の事業廃止である。

同社は7つのファンドで「US$2.4B」を運営しており、第7号ファンドだけで「US$570M」を調達し、高成長のソフトウェア新興企業に投資していた。例えば、日本でも多くのユーザーに利用されているCalendly も同社の投資先である。僕も時々、使っている。

Forbes, The Information, Venture Capital Journal, TechStartups等、米国の主要メディアが、その突然の発表を報じているが、2人のGP(General Partner)が退任したこと、2020年に組成した6号ファンドの投資成績(内部収益率)がマイナスになっていること等以外、何が今回の決断の核心なのかは明らかにされていない。約5%という金利水準の米国にあって、それを凌駕するパフォーマンスを実現することのプレッシャーが大きいことも、今回の決断の要因ではないかという見方もあるようだ。

ベンチャーキャピタルという事業は、Limited Partnerと呼ばれるファンドへの投資家から預かった資金を大きな成長が見込めるスタートアップに投資し、約10年に渡り、その資金を運用するというビジネスモデルである。一般的にファンド総額の2-3%を「管理報酬(投資活動経費)」として受け取りながら投資活動を行うため、経営が成り立たなくのは稀である。ましてや、米国でも有数のVCであるOpenViewが事実上の事業廃止に至ったことは、VC業界はもとより、投資を受ける側のスタートアップにも大きな衝撃だったことは想像に難くない。

From 2012 to 2022, investment in private U.S. start-ups ballooned eightfold to $344 billion. The flood of money was driven by low interest rates and successes in social media and mobile apps, propelling venture capital from a cottage financial industry that operated largely on one road in a Silicon Valley town to a formidable global asset class akin to hedge funds or private equity.

During that period, venture capital investing became trendyeven 7-Eleven and “Sesame Street” launched venture funds — and the number of private “unicorn” companies worth $1 billion or more exploded from a few dozen to more than 1,000. (Dec 7th, 2023. quate from The New York Times)

ニューヨーク・タイムズによると、2012年から2022年に掛けて、米国における未公開スタートアップへの投資額は、低金利を背景に、ソーシャルメディアやモバイルアプリの隆盛と共に「約8倍」に膨れ上がり、その額は「US$344B(約50兆円)」になった。

以前は、シリコンバレーのある通り(Sand Hill Roadで「家内手工業(職人芸)」的に営まれていたビジネスが、ヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファンドも参入する強大な世界的資産クラス(Asset Class)への押し上げられた。

一時期は「セブン-イレブン」や「セサミストリート」までもがVCファンドを立ち上げ、数10社しか存在しなかった「ユニコーン」は「1,000社」を数えるまでに増大した。統計データは持ち合わせていないが、その8割は赤字だったと思われる。僕がシードステージで投資し、日本法人を経営していたInfarm」も、まさしく、その一社だった。

何事にも終わりがあるように、「我が世の春」を謳歌していたスタートアップもVCファンドも、日本の外では、極寒の冬を迎えている。そして、それは恐らく「長い冬」になるだろう。

新たな春を迎えるには、不良債権と化した大量のユニコーンを「償却」する必要がある。言うまでもなく、大きな傷みを伴うことは避けられない。

そのよな極寒の冬において、繁栄している分野のひとつは「失敗」をビジネスにする企業らしい。

SimpleClosure というスタートアップは、法的書類の準備や、投資家、ベンダー、顧客、従業員に対する債務の清算などのサービスを提供しており、需要に応えるのが精一杯だという。

翻って、日本はどうだろうか?

岸田政権は「スタートアップ5か年計画」で、ユニコーンを100社に増やすという方針を掲げているが、はたして、ユニコーンを100社に増やすというのは目指すべき目標なのだろうか?

もちろん、事業を大きく成長させた結果、大きな時価総額として評価されること自体は良いことだが、そのためには、法整備や株式市場のあり方等を含めて、環境整備が必要不可欠である。

日経新聞の記事中で冨山氏が言及されているように「日本がグローバルVC投資市場に組み込まれていない大きな要因が、会社組織や株主間契約などの慣行が日本独自になっている一種のガラパゴス化にある」。

もうひとつ、創業者はほぼ全員日本人で、投資家も日本のVC、日本企業、日本人のエンジェル投資家従業員もほぼ全員が日本人顧客も日本企業あるいは日本人という状態では、日本のスタートアップのグローバル化はあり得ないだろう。

そこに一石を投じる仕組みを創りたいと思っている。

YCは賞味期限切れのビジネスモデルか?

僕がドリームビジョンという会社を始めたのは2006年3月。当時はアメブロでブログを書いていたが、今のウェブサイトにリニュアルした時、それまでアメブロで書いていたブログを全部、ドリームビジョンのサイトに引っ越した。

当時のブログのタイトルは「3度目の起業と初めての子育て」というものだったが、その理由は長男が生まれた翌年だったから。

お気づきの方もおられるかもしれないが、つい先日、ブログのタイトルを変更した。

「起業家はコトラーを読まない」。その心は、近日中にこのブログで説明する予定だ。

今日は、このエントリーのタイトルについて話をしたい。

シリコンバレーに住んだこともない僕が、シリコンバレーのVC(ベンチャーキャピタル)のことを論じるのは少々気が引けたりもするが、英語の文章を読むのが苦にならない人ばかりではないし、むしろ、苦になる人の方が多いだろう。

その推測を踏まえて、サンブリッジ時代に知り合い、その後も親しくしている、TechCrunch共同創業者で、現在は「SignalRank」というA.I.+FinTechスタートアップを経営しているKeith Teare のNewsLetter から得た知識をもとに、僕なりの考察を加えて、シリコンバレーにおけるベンチャーキャピタルの今をお伝えしたい。

そもそも、ベンチャーキャピタルというのは、儲かるビジネスなのか?

San Francisco, San Diego, New York City にオフィスのある「Correlation Ventures」のGeneral Partner, David Corts氏 が、米国のベンチャーキャピタルに関するとても興味深いデータを紹介している(下のグラフ参照)。

上のグラフの「Financings」は「投資ラウンド(投資案件)」、「Dollars」は「投資回収した金額」を指していると思われる。

過去10年間(2013-2022)に「EXIT」したスタートアップの投資案件のうち、「10倍以上」のリターンを生み出したのは「4%未満」であり、「48%」は「1倍未満のリターン(損失)」要するに「案件の半分」は「儲からない」ということだ。

「1-3倍」の明細が書かれていないので、その分布は分からないが、仮に、平均倍率が「2倍」だとしよう。

米国のVCファンドの運用期間は「10年」が一般的であり、LPの合意が得られれば、2年間の延長ができる。つまり、最大12年間の運用が可能ということだ。

現在の米国の金利は「約5%」。1,000万円12年間銀行に預けたとしよう。複利で5%で回ると、約1,700万円になる。因みに、14年で2倍になる。

銀行に「5%」の定期預金で預ければ、確実に1,700万円になって戻ってくる 。しかし、米国でVCに「1,000万円」を投資すると、50%の確率で損をする、ということだ。

但し、LPとしてVCに投資した場合、「4%」の確率で「10-20倍」になり、「3%」の確率で「20倍以上」になる。これがVCに投資する意味である。

そのVCは「ユニコーン」を引き当てられるのか? それにすべてが懸かっている。

因みに、2016年に、crunchbaseのデータをもとにKeithが分析した結果、1社でもユニコーンを引き当てられたことがある米国のファンドは、約6%だった。

ベンチャーキャピタルというのは、典型的な「Power Law(べき乗)」のビジネスということだ。

David は他にも非常に示唆に富むデータを紹介してくれている。

上のグラフは、EXITした年ごとに、投資した金額が「1倍未満(損失)」の結果にしかならなかった割合と、「10倍以上のリターン(勝者)」を実現した割合をプロットしたものである。

興味深いのは、2020年、2021年、つまり、パンデミックの時期にEXITした投資案件は「損失となった割合」が「18%」しかなく、2021年に関しては、10倍以上になった割合が「6%」と、過去20年で最も高くなっている点である。

では、2020年、2021年に「IPO and/or M&A」でEXITしたスタートアップには、どんな会社があるのか? crunchbaseのデータを見てみた。

https://news.crunchbase.com/company-ipo-exits-list/

上のグラフが示すとおり、2020年、2021年、特に2021年はIPO等のEXITラッシュだったことが分かる。by Nameで見てみると、我々にとっての馴染みのある社名が並んでいる。

例えば、Coinbase (正確にはIPOではなく、Direct Listing = 時価総額 $86B, 2021), Rivian (同$66.5B, 2021), Robinhood (同$32B, 2021), Airbnb (同$47B, 2020), Doordash (同$39B, 2020) などがある。Airbnbは2020年のIPOで、$3.5Bを調達している。

もう少し遡り、2019年のIPOを見ると、Uber, Lyft, Cloudflare, Zoom, Slack, Beyond Meet等がある。

但し、注意する必要があるのは、2020-2021年のIPOラッシュ組の「現在の時価総額」だ。その殆どが、IPO時点のMarket Cap(時価総額)を大きく割り込んでいる。下記はcrunchbaseの記事をもとに作成した。

ご覧のとおり、過去10年間でIPOした上位17社(過去15年間に設立され、IPOしたスタートアップ)の内、IPO価格を上回って取り引きされているのは「3社」しかない。尚且つ、その3社(Airbnb、Pinterest、Snowflake)でさえ、初日の終値よりかなり低い水準にある。

このような現実を踏まえると、次に紹介する2人の指摘には、合点が行く。

まず、Slow Ventures というVCのGP (General Partner) の Sam Lessin 氏のNews Letter の内容を紹介したい。

“About 15 months ago I wrote a post on how seed investing was pretty clearly going to be in an 18 month timeout … that the capital ‘factory’ line would be shutdown until the inventory of dramatically over-marked late-stage private deals got worked through / washed out / expired on the line.”

彼は15か月前、シード投資案件は「18ヶ月」の「タイムアウト」に入る、つまり、その間は次のファイナンスができなくなる(という意味だと理解した)、というブログを書いている。但し、それはもっと長期化するだろうと、見解を改めたようだ。

“But will clubby seed investing on a capital pipeline through series A to Z firms to public exist in the future — I actually think no… will the YC playbook of how to start a company and finance it work any more? IMHO certainly notI think the whole factory is going to need to be shut-down and reconstituted.

簡単に言うと、とんでもない時価総額をつけられたいわゆるユニコーンという「在庫」の大半がIPOできず、あるいはIPOしても期待外れに終わるのであればY-Combinator (2005年設立) や500 startups (2010年設立)等、大量生産型のシード投資モデルが「Asset Class(資産クラス)」としての魅力がなくなり、次のステージの投資家がつかなくなる、ということだ。

IMHO (In My Humble Opinion) と断りを入れた上で、YC的な大量生産型の工場モデルは機能しなくなる、と言い切っている。次の資金調達ができず、タイムアウト(Time out)ならぬ、Cash out(清算)せざるを得ないスタートアップが大量に生まれると言いたいのだろう。

では、今後のシード投資はどうなるのか? 彼は、ハイリスク型のスタートアップを長期間に渡り所有するような「シード投資家」が現れるだろうとしている。

僕の理解では、投資して、Demo Dayでデビューさせた後は観客席で見守るのではなく、中長期の「オーナー(株主)」として、一緒に事業を育てていくような「シード投資家」が求められてくるということだと思う。

問題は、シェアをどう保つか?だ。その点においては、Hunter Walk というベンチャーキャピタリストが、”What I tell all new VCs about their first funds.“という、とても示唆に富んだブログを書いている。DeepL等を使って読んでみて欲しい。

次に、ベンチャーキャピタルとLP(VCファンドに資金を提供する投資家)との関係に関して、とても分かり易い解説をしている「fintechjunkie」という人物を紹介したい。

VCは新しくファンドを組成した場合、通常、最初の3年間程度で新規の投資をする。そして、ファンドの30-50%程度をフォローオン(追加投資)のために取っておく。

仮に、あるLPが3つのファンドにそれぞれ「$20M」ずつ投資する場合、合計$60Mの資金が必要になる。但し、最初から$60Mが必要なわけではない。何故なら通常、Capital Call方式といい、投資案件が発生した時点で、必要な資金をVCに払い込むからだ。最初から$60Mを払い込むわけではない。

https://twitter.com/fintechjunkie/status/1682737298708807680

Beginner’s Luck もあるのだろうが、新しいVCファンドが既存のファンドよりも高いパフォーマンスを出すことは珍しくないらしく、歴史を見ると、ファンドサイズの「5倍, 10倍, さらには20倍」になることもあったらしい。

ここで重要なのは「お金の出入り」である。

どのステージに投資しているか、また、その時の市況にも左右されるが、4年目ぐらいから、戦略的な売却 (資本業務提携)、セカンダリーマーケットへの売却IPO等の「EXIT」が発生する。

問題は、2017-2021年に掛けて、米国のVCはそれまでよりも速いペースで投資をしているが、株式市場やスタートアップの資金調達環境が悪化したことにより、投資した資金の回収が遅くなっていることだ。となると、LPに対する「分配金」が発生せず、LPはファンドに投資した資金を回収できず、Capital Call に対応するために、想定していた以上の資金を用意する必要が出てくる

“Making matters worse, valuations were much higher during this period which brings into question how many 3X+ funds there will be in the 2017-2021 vintages. And we’re already seeing markdowns and write-offs that highlight the issue.”

さらに厄介なことに、この時期(2017-2021)投資案件は「バリエーション」が高くなっている一方、市況の変化により、レイターステージで売却する場合もIPOやM&Aで売却する際も、それほど高いバリエーションがつかないだろう。

となると、3倍以上のパフォーマンスを出せるファンドがどれだけあるか? という疑問符がつく。そして、この問題を証明するように、既にダウンラウンドや償却が発生している。

そして、パフォーマンスが悪いVCは、次のファンドを組成することはできないだろう。

でも、彼は、この問題は恒久的な問題ではないという。明確な投資戦略や優れたトラックレコードを持つファンドは生き残るということだ。

また、スタートアップは、妥当なバリエーションで資金を調達し、少ない資金を前提として経営をし、資本効率を最優先したスケールを設計することになる。

その結果、これから組成するファンドは、2017-2021年に組成されたファンドよりも、高いパフォーマンスを実現することになるだろう。

以上が、Keith のNews Letter で読んだ3人のブログやTweet から、シリコンバレーのSeed-Early stage のVCファンドに関して学んだことだ。

少しでも参考になれば幸いである。

次回は、シリーズB以降のベンチャーキャピタルにどのような変化が訪れる可能性があるか? について書いてみたいと思っている。

Has Berlin changed?

今回のベルリンは2泊3日の短い滞在だったが、良く知っている友人たちに加えて、新たな出会いもあり、有意義だった。

僕が初めてベルリンを訪れたのは2015年11月。無謀にも初めてのベルリンで、Innovation Weekend というピッチイベント(予選)を開催した時だった。

あれから約8年。その頃のベルリンは、だいぶ物価が高くなってきたとは聞いていたが、それでも当時の為替レートで計算すると、レストランは東京の60-70%、場所にも拠るが、家賃は約半分くらいと言っていたと思う。

日本でもニュースになったりもしているので、ご存じの方もいると思うが、今では、1つの物件に、なんと申し込みが300件!もあるそうだ。

ベルリン州政府の住宅政策の問題や規制が影響しているのだろうが、移住者の増加に対して、新しい物件の供給が追いつかないらしい。日本では東京や大阪のような大都会でも考えられないことだ。

それでも、ロンドン、パリ、アムステルダム等と較べれば、ベルリンの生活コストは、1/2-1/3だという。今の為替レートで計算すると、ひょっとしたら東京よりも生活コストが高いかもしれない。

ベルリン市内を走るトラム写真は夜10時過ぎ。まだ明るい。2023年6月12日(筆者撮影)

昨年9月に引き続き、ベルリンを訪問したのは、ベルリン州政府が主催するAsiaBerlin Summitなるイベントに、今年も登壇者の一人として招かれたからだ。そこで、予期せぬ面白い出会いがあった。

集客協力の一環として、イベント運営者が用意した各登壇者の顔写真入りのバナーがあり、それぞれがLinkedInへ投稿する。すると、何人かから会場で会いたいという連絡を頂いた。

その中の一人に、アジア人の女性がいた。彼女はスペインのMBAで、ケーススタディの対象として、なんとInfarmを取り上げていたという!それで、シードステージの投資家であり、日本法人を経営していた僕に話を聞きたかったらしい。

さすがに話せることと話せないことがあるが、日本法人の経営者として、また幹部会議への参加を通じて、そして、投資家の一人として、パイロットファームしかなかったアーリーステージからユニコーンになるまでの過程を見てきたことを、可能な範囲で共有した。ユニコーンにもなると、そういうこともあるんだな…。

今日はいつものホテルをチェックアウトした後、日本企業が資金を出しているスタートアップスタジオ的な組織の責任者とお会いした。彼とは先日、Zoom で話をしたが、実際に会ったのは初めてだった。

MTGを通じて改めて感じたことは、日本は、日本語という言語とHigh Context なカルチャーによるInvisible Barrier があり、参入し難い市場ということだ。

その後は、両親のどちらかが日本人の友人を訪ねた。彼は非常にユニークなファンドを運営しており、ベルリンのとある場所にアパート(日本でいうマンション)を3部屋、購入している。写真を撮るのを忘れてしまったが、まだリノベーション中のアパートを案内してもらった。

彼がやろうとしていることは、その一部をCo-working spaceにすることと、市場価格よりも安く日本企業の駐在員に賃貸したり、僕のような出張者が泊まれるようにすることだ。

と同時に、日本人(に限らないと言っていたかもしれない)の起業家で、ベルリンでスタートアップをしようとしている人たちに代わり、とても複雑なドイツの行政手続き等を代行することで、事業やプロダクト開発に専念できるようにしたいと言っていた。

その理由は、日本にルーツを持つ人間として、不動産が高騰し、物件が逼迫しているベルリンにおいて、少しでも、日本人がビジネスをし易い環境を提供したいということだ。日本に対する思いはとても強いものを感じる。

彼と話をしながら思ったことは、僕の知り合いに限ったことかもしれないが、彼も含めて、両親のどちらかが日本人の友人の殆どは、日本ではなく、もう一人の親の出身国に住んでいるということ。つまり、彼らにとって、日本は好きな国だが、と同時に、住み難い国だということだ。それは、日本にとって、大きな損失である。

ラグビーの日本代表は、主将がニュージーランド人であり、外国人選手がたくさん含まれていたが、そのことに文句を言う人は誰もいなかっただろう。

少子高齢化が避けられない日本を再び活力ある社会にしていくためには、日本が好きな外国人が住み易い国にしていく必要がある。

少なくとも、僕はそう思っている。

さて、ノルウェーはどんな国なのだろうか? 初めてのオスロが楽しみだ。

スットクホルム経由でオスロに向かう機中にて(投稿は帰国後の自宅)

ユニコーンになったInfarm から学んだこと。

FIVE lessons learned from the Infarm Launch in Japan.

The Infarm founders. July 7th, 2016, at the Infarm HQ office. Photo by myself.

2021年12月、投資先のInfarmはヨーロッパは「ユニコーン」になった。

物語の始まりは、2015年11月18日。初めて訪問したベルリンで、無謀にも初めてのInnovation Weekend Berlin を開催した。

SunBridge Global Venturesという、シード&アーリーステージのスタートアップへの投資会社を経営していた頃、口を開けば「Go Global」と言っていたこともあり、まずは、自分たちが Go Global を実践しよう!ということで始めたのが、Innovation Weekend というピッチイベントの Small World Tourだった。

2014年5月にシンガポールでKick-offし、2016年までの3年間、ロンドン、ボストン、ニューヨーク、サンフランシスコ、そしてベルリンで開催した。イベントこそ主催しなかったが、パリにも足を伸ばし、現地のスタートアップエコシステムを研究した。

シンガポールでは、TECHINASIAのメンバーが協力してくれたこともあり、順調に ピッチ登壇スタートアップが集まったが、ボストンでは、イベント当日3日前の時点で、わずか「3社」しか登壇スタートアップが集まらず、スポンサーの皆さんに何と言ってお詫びをすれば良いのか?と途方に暮れていたことを思い出す。

その後、堰を切ったようにたくさんのスタートアップからの応募があり、結果的には大盛況に終わったが、今にして思うと、奇跡としか言いようがない。

ベルリンでは計2回、開催した。Infarm は初回の優勝スタートアップで、2015年の年間チャンピオンにもなった。

実は、初めてのベルリンでの開催にも関わらず、そこそこ順調にピッチ登壇スタートアップが集まり、既にアプリケーションを締め切っていたのだが、Storymaker というPR会社の創業者 Bjorn Eichstadt から紹介されたのがInfarmだった。

2013年にベルリンで創業したInfarm が我々のピッチイベントに登壇した時は、パイロットファームが1台あっただけで、ビジネスモデルも固まっていなかった。

InStore Farm designed by Infarm (old model) at the Infarm office in 2016. Photo by myself
The Infarm HQ office in 2016. Photo by myself.

Innovation Weekend Berlin で優勝した翌日、Infarm のオフィスを訪ね、創業者たちと話をしながら、彼らなら、この奇想天外な構想を実現するのではないか?と思い、その一年後、投資することを決めた。

暫くはホームグラウンドのヨーロッパで地歩を固めるため、日本に来ることはなかったが、2018年の秋、いよいよ日本市場参入を本格的に検討したいので相談に乗って欲しいと、久しぶりに連絡があった。

それから入れ代わり立ち代わり、四半期に1度のペースで、ファウンダーたちが東京に来るようになり、その度に僕は、投資家候補やクライアントになってくれそうな流通関連企業の幹部とのアポイントを取り、彼らを連連れ回していた。

JR東日本の皆さんとは、SunBridge Global Ventures を経営していた頃に知り合った。鉄道会社ではあるものの、非鉄道部門の事業を伸ばすことにコミットされていることを思い出し、興味を持っていただけるのではないか?と思い、たしか、3年ぶりに連絡をした。

僕の読みどおり?とても興味を持っていただき、一緒にベルリンやパリに出張し、当時のInfarm 本社オフィスや生産施設、Infarm のユニットを導入してくれているスーパーマーケットを視察した。そして、子会社の紀ノ国屋の皆さんをご紹介いただいた。

サミットとのご縁は、住友商事の知り合いを介してだった。初めて西永福のサミット本社を訪問し、当時、住友商事から執行役員としてサミットに出向されていた方とお会いした時、この人とは是非、一緒に仕事をしてみたいと思った。その年の暮れ、創業者の一人でCEOのErezが来日した時、3人で食事をした。

コクヨの東京本社に併設されているTHE CAMPUSに導入いただいたのは、日経ビジネスの記者の方(酒井大輔氏)が書いて下さった記事を社員の方がご覧になられたことがキッカケだった。社長の黒田さんとは10数年前、とある会合で知り合っていた。

こうして振り返ってみると、Steve Jobs が言っていた connecting the dots そのものである。きっと、これからの人生もそうありたい。

最後に、Infarm 日本法人の経営者として、また、Infarm 全体のリーダーシップチームの一員として、幹部会議に出席し、Global スタートアップの経営に参画してきたことで学んだことを整理したい。

1つ目:CAPEX。野菜を生産しているという意味では「農業」であり、AgriTech スタートアップだが、その収益構造は、完全に「製造業」だということ。

もちろん、設備投資の額は何を生産するかで大きく異なるが、テスラを生産するのか? iPhone を生産するのか? 野菜を生産するのかの違いであり、需要予測に基づき、生産拠点という「設備投資」を行う必要がある意味では、基本的な構造は同じである。

また、Vertical Farming(LED/水耕栽培)というカテゴリーは、研究開発投資(R&D)が求められる点でも、テスラやアップルのような大企業と類似している。ひと言で言えば、財務的体力が求められる事業ということだ。

2つ目:Diversity。Infarm は一時期、11カ国で事業展開しており、1,000人を超える従業員が在籍し、その国籍は「50カ国」を越えていた。ベルリン(ドイツ)発祥にも関わらず、僕が思うに、ドイツ人はせいぜい3割もいなかったし、英語が母国語の人も2割もいなかったと思う。でも、もちろん、社内公用語は「英語」である。

グローバルな事業を生み出すには、グローバルな問題意識、環境、そして、多様性が極めて重要ということだ。

一方、日本のスタートアップを見ると、殆どのケースで、創業者は全員「日本人」、投資家も日本人 or 日本企業 or 日系VC、社員も殆ど日本人、顧客も日本企業(日本人)だろう。尚且つ、現時点では、世界第3位のGDP(日本市場)があり、それでは、ガラパゴス化は必然であり、むしろ合理的である。

理想を言えば10年、できれば20年前に、Infarmのようなグローバルスタートアップの経営に参画する機会があったなら・・・と思うが、Infarm で得た貴重な経験を、これからの人生に活かしていきたいと思う。というか、活かすことのできる仕事をしたい。

3つ目:Expansion v.s. Focus。個人的な感想だが、市場にしても、品種にしても、手を広げ過ぎたように思う。一般論で言えば、少ない市場、少ない品種の方が経営資源の投資効率が良いのは間違いない。ソフトウエアのビジネスと違って、生産施設を前提としたビジネスであり、アゲインストの風が吹いた時の撤退コストも大きい。

4つ目:Product Market Fit。定量的に検証したわけではないが、お菓子やスイーツ等、デザートに分類されるものは、それなりに「冒険(試しに買ってみる)」する人が多い気がするが、日常の「食事」に使う食品に関しては、基本的に「冒険しない(知らないものは買わない)」人が多いように思う。

Infarm の主力商品は「ハーブ類」であり、顧客の立場で考えれば、購入する前に「試食」をしたいだろう。でも、Infarm が日本市場に参入するまさにそのタイミングで、新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るい、紀ノ国屋やサミットに限らず、すべてのスーパーマーケットで「試食」は出来なくなったことは極めて痛かった

PMF:Product Market Fit に至る前に撤退を余儀なくされたことは、経営者として悔しかったが、そのようなリスクも含めた上で経営するのがビジネスだ。

5つ目:Office & Factory。僕は今まで、インターネット関連のビジネスにしか携わったことがなく、「本社部門(オフィスワーク)」と「生産施設(現場)」とに分かれている事業(組織)は初めての経験だった。

また、Infarm はヨーロッパに親会社があり、本国では事業基盤が整っているが、日本法人はスクラッチから立ち上げる必要があり、純粋なスタートアップとは言えず、かといって、出来上がっている組織でもなく、社内のカルチャー、緊張感、スタッフのモチベーションをどうマネージすれば良いか?が難しかった。

Infarm Japan の経営を通じて、僕はたくさんのことを学んだ。

今後は、株主の一人として、Infarm がこの世界的な逆境を乗り越え、力強く成長して行くことを見守りたい。

ひとつ、付け加えることがあるとすれば、残念ながら撤退することにはなったが、Infarm に投資し、日本市場への参入を実現できたことで、欧州の「AgriTech/FoodTech」系スタートアップで、日本市場への参入に興味のあるところから相談されるようになった。

その中の一社で、とあるノルウェーのスタートアップと交流ができ、6月に、人生で初めて、オスロに行くことになった。

本当に最後に、このような機会を提供してくれた、Erez, Guy, Osnat の3人の創業者、また、リーダーシップチームのメンバー、日本法人のメンバー、上記で紹介したJR東日本、紀ノ国屋、住友商事、サミット、コクヨの皆さんには、改めてお礼を申し上げたい。

ありがとうございました!!

Infarm 日本法人の経営。

2015年11月。当時の僕は、サンブリッジ グローバルベンチャーズ(SBGV)という、シード&アーリーステージに特化した投資業務およびシード・アクセラレーション等を行う会社を経営していた。

そのSBGVで、Innovation Weekend という、ピッチコンテストを中心としたスタートアップイベントを運営しており、その Innovation Weekend を初めて、Berlin で開催した時だった。

2014年5月、シンガポールからスタートした「Innovation Weekend World Tour」は、ボストン、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シリコンバレー等を周り、2015年11月、僕にとって初めての訪問となるベルリンで、Innovation Weekend Berlin 2015 を開催した。

World Tour 開始当初は、ピッチするスタートアップの募集も観客も覚束ず、めちゃくちゃ苦労をしたが、2015年からは順調にピッチスタートアップの応募があるようになり、実は、ベルリンでも面白いスタートアップが25-30社ほど集まっており、募集は締め切っていた。

ところが、Innovation Weekend をベルリンで開催すること知った、ミュンヘンで Story Maker というPR会社を経営するBjoern Eichstaedt という知り合いから、とても面白いスタートアップがあるから是非、ピッチに誘った方がいい!と言って紹介されたのがInfarmだった。

Infarm は、Innovation Weekend Berlin 2015 で優勝し、尚且つ、毎年12月に東京で開催していた Innovation Weekend Grand Finale という、年間チャンピオンを決めるイベントでも優勝した!

当時のInfarm は、パイロット(試作機)を1台、METROという業務用のスーパーで稼働しているだけだったが、2020年7月21日現在、世界中で稼働している InStore Farm は「950台」にまでなった。

僕(ドリームビジョン)は、2016年からInfarmドイツ法人に出資しており、彼等の日本市場参入をサポートしてきたが、2020年2月、遂に日本方を設立し、代表取締役社長に就任した。そして、JR東日本からInfarm ドイツ法人にご出資いただき、子会社の紀ノ国屋Infarmを導入いただくことになった。5年前、ベルリンで初めてファウンダーたちに会った時には、想像さえしていなかった。

さて、そんなInfarm の日本法人を経営することになり、日本市場へのローンチの準備を進めている中で、感じたこと、学んだことを共有したいと思う。

1, 電気自動車やスマートフォンの企画開発・製造・販売と似たような事業構造。

Infarm の事業は「LEDと水耕栽培」により、屋内で野菜を育てて収穫し、販売することである。その野菜を栽培するには「InStore Farm」というハードウェアが必要だが、心臓部は「独自開発のソフトウェア」だ。Apple や Tesla のような事業構造に似ている。

Infarm の事業は、R&D, Crop Science, Supply Chain Management, Marketing/PR, Business Development, Corporate Sales, Finance & Accounting, HR, Academy, Installation Engineering, Software Development, Operation, New Market Expansion, etc.と様々な機能とタスクにより成り立っている。従って、何かひとつ、変更を加えようとすれば、それはすべての部署や機能に影響することになり、入念な業務設計と運用が求められる。Synchronized Swimming の如く、一糸乱れぬ演技が必要不可欠である!

2, Cosmopolitan culture(コスモポリタンなカルチャー)

Infarm では現在、日本を含めて計10ヵ国に進出しており、約600名近いスタッフが働いている。国籍は30ヵ国を超えており、社内公用語は「英語」である。但し、英語を母国語とする人は、20%程度だろう。

従って、お互いに「異なる」ことが前提であり、相手がどのような判断基準に基づいて発言しているのかを理解しようとする姿勢が求められる。一方、日本のような同調圧力はない。極めてオープンで風通しの良いカルチャーだ。

翻って、日本の多くのスタートアップのように、経営者も従業員も株主も顧客も、その殆どが日本人という環境では、ユニバーサル(グローバル)に通用する事業やプロダクトを開発することは難しいということを実感する。

3, Attracts global talents!(世界中から優秀な人を惹き付ける!)

とても嬉しいことに、Infarm には世界中から才能豊かな、そして、人間味溢れる素晴らしい方々が応募してきてくれるし、様々な会社がInfarmを導入したり、一緒に仕事をしようと言ってくれる。申し上げるまでもなく、とても光栄なことだ。

その理由は偏に、Infarm の哲学、理念、ビジョン、実現したい未来にある。

食品の30%以上が、生産後、我々の食卓に並ぶまでの間に「廃棄ロス」になってしまうという現実がある。その廃棄ロスにも「エネルギー」が消費され、CO2(温室効果ガス)が排出されている。それを放置しておいていいはずがない。

国連によると、2050年には、この地球上に「100億人」が暮らし、その「70%」が「都市」で生活することになる。究極の「地産地消」を実現するためには、「都会で野菜(農産物)を栽培し、都会で消費する」のが最も良い。

Infarm は、そのドン・キホーテ的とも言える遠大なビジョンの実現に向けて、既に世界10ヵ国に進出し、前述のとおり、1,000台近い InStore Farm を稼働させている。

崇高な哲学、理念、ビジョン、そして、JR東日本、紀ノ国屋という素晴らしいパートナーのご支援を頂戴し、Infarm 日本法人の経営を仰せつかっていることは、物凄い責任とプレッシャーではあるが、これほどやり甲斐のある仕事はない。

Infarm 日本法人は、僕を含めて、まだたった3人(3人目は、この春、大学を卒業したばかりの Insane Carzy に優秀な女性)だが、地球規模のビジョンを実現するための「仲間」を絶賛募集中である。

ご関心を持っていただけた方は、是非、ご応募いただきたい。

心より、お待ちしています!!