何に資金を投下するべきか?

紀ノ国屋、サミット、コクヨの各店舗からファーミングユニットを撤去してから、そろそろ3ヶ月。Infarm 日本法人を解散し、代表取締役社長を退任してから今月末で1ヶ月になる。法的には「弁済禁止期間中」という期間にあり、まだ「清算会社」としての存在は残っている。

とは言え、実務的には終了しており、次の展開について、毎日、あれこれ思考を巡らせている。

以前に書いたブログでも紹介したが、Precursor Ventures の創業者 Charles Hudson のNews Letter は、これからの人生でやりたいことを考える上で、示唆に富んでいる。

Charles は、Pre-Seed ステージを資金調達額「$1M(¥130/$=1.3億円)」以下と定義しており、Seedステージ、つまり、over $1Mのファイナンスができた投資先と出来なかった投資先では、1ヶ月の「バーンレート(資金燃焼額)」がどう異なるか?を分析している。以下はそのグラフである。

2017年から2022年を比較し、その年にSeedファイナンスをしたスタートアップと、できなかったしたスタートアップを比較したところ、Seedファイナンスが出来た投資先の方が、1ヶ月のバーンレートが高かった。つまり、より資金を使っていたということだ。

ここで注意したいのは、資金をより多く使えば、Seed ファイナンスにたどり着けるという単純な話ではない、ということだ。

データが示していることは、彼が日頃の観察から得ていた感触と合致しているそうだが、Seed ファイナンスに成功した投資先は、Product-Market-Fit(PMF)に至ることができており、自信を持って顧客獲得のための先行投資(先行投資)ができているのだろうと分析している。結果として、Seedファイナンスができなかった投資先よりもバーンレートが増えているということだ。

Pre-Seed スタートアップ創業者の仕事は、投資から調達した資金を使って、PMFを実現するための「Insight(示唆)」を獲得することだ (by Charles)。

当たり前だが、いくら使ったか?ではなく、「何にお金を使ったか?」が重要ということだ。

彼のニュースレターを読んで僕が学んだことは、シード&アーリーステージという、極めて属人的な判断や嗅覚が求められる領域においても「分析(データ化)」と「科学的アプローチ」が必要ということだ。

DreamVision portfolio performance as of 2019

少々振るいデータ(2019年現在)だが、サンブリッジ時代に組成し、ドリームビジョンで引き継いで運営している2つの投資ビークルとドリームビジョンからの直接投資の計28社に関しては、「約8割」が次の資金調達を実現できている。また、生存確率は93%と、自画自賛だが投資パフォーマンスはかなり良い。

問題は、次のラウンドに行けなかった6社は、次のラウンドに進めたスタートアップと何が異なるのか? ということだ。今から当時のデータを確認できるか? は分からないが、出来る範囲で分析してみよう。

僕は約20年以上もの間、インターネット関連業界で仕事をしてきたが、ソースコードは書けないし、エクセルもまったくダメ。でも、嗅覚には自信があることもあり、自分の直観と運の良さに甘えて来たが、これからの人生で僕がやりたいことを実現するには、上述のとおり、「分析」と「科学的アプローチ」が必要だ。

つまり、数値化が得意で、エクセル操作スキルが高く、ちょっとしたコードなら書ける人が必要だ。そして、そこそこ英語ができる必要がある。

そういう人を募集できるように、まずは、ピッチデックを作らないと!

ユニコーンになったInfarm から学んだこと。

FIVE lessons learned from the Infarm Launch in Japan.

The Infarm founders. July 7th, 2016, at the Infarm HQ office. Photo by myself.

2021年12月、投資先のInfarmはヨーロッパは「ユニコーン」になった。

物語の始まりは、2015年11月18日。初めて訪問したベルリンで、無謀にも初めてのInnovation Weekend Berlin を開催した。

SunBridge Global Venturesという、シード&アーリーステージのスタートアップへの投資会社を経営していた頃、口を開けば「Go Global」と言っていたこともあり、まずは、自分たちが Go Global を実践しよう!ということで始めたのが、Innovation Weekend というピッチイベントの Small World Tourだった。

2014年5月にシンガポールでKick-offし、2016年までの3年間、ロンドン、ボストン、ニューヨーク、サンフランシスコ、そしてベルリンで開催した。イベントこそ主催しなかったが、パリにも足を伸ばし、現地のスタートアップエコシステムを研究した。

シンガポールでは、TECHINASIAのメンバーが協力してくれたこともあり、順調に ピッチ登壇スタートアップが集まったが、ボストンでは、イベント当日3日前の時点で、わずか「3社」しか登壇スタートアップが集まらず、スポンサーの皆さんに何と言ってお詫びをすれば良いのか?と途方に暮れていたことを思い出す。

その後、堰を切ったようにたくさんのスタートアップからの応募があり、結果的には大盛況に終わったが、今にして思うと、奇跡としか言いようがない。

ベルリンでは計2回、開催した。Infarm は初回の優勝スタートアップで、2015年の年間チャンピオンにもなった。

実は、初めてのベルリンでの開催にも関わらず、そこそこ順調にピッチ登壇スタートアップが集まり、既にアプリケーションを締め切っていたのだが、Storymaker というPR会社の創業者 Bjorn Eichstadt から紹介されたのがInfarmだった。

2013年にベルリンで創業したInfarm が我々のピッチイベントに登壇した時は、パイロットファームが1台あっただけで、ビジネスモデルも固まっていなかった。

InStore Farm designed by Infarm (old model) at the Infarm office in 2016. Photo by myself
The Infarm HQ office in 2016. Photo by myself.

Innovation Weekend Berlin で優勝した翌日、Infarm のオフィスを訪ね、創業者たちと話をしながら、彼らなら、この奇想天外な構想を実現するのではないか?と思い、その一年後、投資することを決めた。

暫くはホームグラウンドのヨーロッパで地歩を固めるため、日本に来ることはなかったが、2018年の秋、いよいよ日本市場参入を本格的に検討したいので相談に乗って欲しいと、久しぶりに連絡があった。

それから入れ代わり立ち代わり、四半期に1度のペースで、ファウンダーたちが東京に来るようになり、その度に僕は、投資家候補やクライアントになってくれそうな流通関連企業の幹部とのアポイントを取り、彼らを連連れ回していた。

JR東日本の皆さんとは、SunBridge Global Ventures を経営していた頃に知り合った。鉄道会社ではあるものの、非鉄道部門の事業を伸ばすことにコミットされていることを思い出し、興味を持っていただけるのではないか?と思い、たしか、3年ぶりに連絡をした。

僕の読みどおり?とても興味を持っていただき、一緒にベルリンやパリに出張し、当時のInfarm 本社オフィスや生産施設、Infarm のユニットを導入してくれているスーパーマーケットを視察した。そして、子会社の紀ノ国屋の皆さんをご紹介いただいた。

サミットとのご縁は、住友商事の知り合いを介してだった。初めて西永福のサミット本社を訪問し、当時、住友商事から執行役員としてサミットに出向されていた方とお会いした時、この人とは是非、一緒に仕事をしてみたいと思った。その年の暮れ、創業者の一人でCEOのErezが来日した時、3人で食事をした。

コクヨの東京本社に併設されているTHE CAMPUSに導入いただいたのは、日経ビジネスの記者の方(酒井大輔氏)が書いて下さった記事を社員の方がご覧になられたことがキッカケだった。社長の黒田さんとは10数年前、とある会合で知り合っていた。

こうして振り返ってみると、Steve Jobs が言っていた connecting the dots そのものである。きっと、これからの人生もそうありたい。

最後に、Infarm 日本法人の経営者として、また、Infarm 全体のリーダーシップチームの一員として、幹部会議に出席し、Global スタートアップの経営に参画してきたことで学んだことを整理したい。

1つ目:CAPEX。野菜を生産しているという意味では「農業」であり、AgriTech スタートアップだが、その収益構造は、完全に「製造業」だということ。

もちろん、設備投資の額は何を生産するかで大きく異なるが、テスラを生産するのか? iPhone を生産するのか? 野菜を生産するのかの違いであり、需要予測に基づき、生産拠点という「設備投資」を行う必要がある意味では、基本的な構造は同じである。

また、Vertical Farming(LED/水耕栽培)というカテゴリーは、研究開発投資(R&D)が求められる点でも、テスラやアップルのような大企業と類似している。ひと言で言えば、財務的体力が求められる事業ということだ。

2つ目:Diversity。Infarm は一時期、11カ国で事業展開しており、1,000人を超える従業員が在籍し、その国籍は「50カ国」を越えていた。ベルリン(ドイツ)発祥にも関わらず、僕が思うに、ドイツ人はせいぜい3割もいなかったし、英語が母国語の人も2割もいなかったと思う。でも、もちろん、社内公用語は「英語」である。

グローバルな事業を生み出すには、グローバルな問題意識、環境、そして、多様性が極めて重要ということだ。

一方、日本のスタートアップを見ると、殆どのケースで、創業者は全員「日本人」、投資家も日本人 or 日本企業 or 日系VC、社員も殆ど日本人、顧客も日本企業(日本人)だろう。尚且つ、現時点では、世界第3位のGDP(日本市場)があり、それでは、ガラパゴス化は必然であり、むしろ合理的である。

理想を言えば10年、できれば20年前に、Infarmのようなグローバルスタートアップの経営に参画する機会があったなら・・・と思うが、Infarm で得た貴重な経験を、これからの人生に活かしていきたいと思う。というか、活かすことのできる仕事をしたい。

3つ目:Expansion v.s. Focus。個人的な感想だが、市場にしても、品種にしても、手を広げ過ぎたように思う。一般論で言えば、少ない市場、少ない品種の方が経営資源の投資効率が良いのは間違いない。ソフトウエアのビジネスと違って、生産施設を前提としたビジネスであり、アゲインストの風が吹いた時の撤退コストも大きい。

4つ目:Product Market Fit。定量的に検証したわけではないが、お菓子やスイーツ等、デザートに分類されるものは、それなりに「冒険(試しに買ってみる)」する人が多い気がするが、日常の「食事」に使う食品に関しては、基本的に「冒険しない(知らないものは買わない)」人が多いように思う。

Infarm の主力商品は「ハーブ類」であり、顧客の立場で考えれば、購入する前に「試食」をしたいだろう。でも、Infarm が日本市場に参入するまさにそのタイミングで、新型コロナウイルス(COVID-19)が猛威を振るい、紀ノ国屋やサミットに限らず、すべてのスーパーマーケットで「試食」は出来なくなったことは極めて痛かった

PMF:Product Market Fit に至る前に撤退を余儀なくされたことは、経営者として悔しかったが、そのようなリスクも含めた上で経営するのがビジネスだ。

5つ目:Office & Factory。僕は今まで、インターネット関連のビジネスにしか携わったことがなく、「本社部門(オフィスワーク)」と「生産施設(現場)」とに分かれている事業(組織)は初めての経験だった。

また、Infarm はヨーロッパに親会社があり、本国では事業基盤が整っているが、日本法人はスクラッチから立ち上げる必要があり、純粋なスタートアップとは言えず、かといって、出来上がっている組織でもなく、社内のカルチャー、緊張感、スタッフのモチベーションをどうマネージすれば良いか?が難しかった。

Infarm Japan の経営を通じて、僕はたくさんのことを学んだ。

今後は、株主の一人として、Infarm がこの世界的な逆境を乗り越え、力強く成長して行くことを見守りたい。

ひとつ、付け加えることがあるとすれば、残念ながら撤退することにはなったが、Infarm に投資し、日本市場への参入を実現できたことで、欧州の「AgriTech/FoodTech」系スタートアップで、日本市場への参入に興味のあるところから相談されるようになった。

その中の一社で、とあるノルウェーのスタートアップと交流ができ、6月に、人生で初めて、オスロに行くことになった。

本当に最後に、このような機会を提供してくれた、Erez, Guy, Osnat の3人の創業者、また、リーダーシップチームのメンバー、日本法人のメンバー、上記で紹介したJR東日本、紀ノ国屋、住友商事、サミット、コクヨの皆さんには、改めてお礼を申し上げたい。

ありがとうございました!!

中川とポルシェ。

ブログに書くほどではないかとも思ったが、前回の投稿からだいぶ時間が経っていることもあり、文字にしておくことにした。気になって読んだコラムに衝撃を受けたので。

大学生の頃、一冊1,000円もするカーグラフィックという月刊誌を毎月買っていた。大学進学で上京後、2年目から一緒に住むようになった弟もクルマが好きで、2人で知識だけは増えていった。当然、クルマを買えるお金があるわけもなく、カーグラで学んだ知識をもとに、2人でクルマ談義をするだけだったが、それも楽しかった。

大学2年生の頃だったと思うが、マツダのファミリアという2ボックス、色は「赤」が大人気になり、僕はレンタカーで赤のファミリアを借りてドライブに出かけたりした。こうして文字にしてみて改めて思い出したが、当時は、クルマを運転すること自体を目的にして出掛けることをドライブと言っていた。そして、ドライブの最中に聴くためにお気に入りの音楽を録音した「カセットテープ」と一緒に、楽しい娯楽として機能していた。1980年代のことである。

気になって読んだコラムは「松任谷正隆さん」が毎月、JAF Mate に寄稿されているものだが、その結末に、僕は思わず「えっ!」と声をあげてしまった。

僕と同年代以上の方には説明するまでもないと思うが、彼は無類のクルマ好きで知られている。本業の音楽活動に加えて、クルマ関係のコラムを書いたり、今は無いと思うが、以前はカーグラフィックTVというテレビ番組があり、そのパーソナリティをしていたりした。

今月号のコラムには、彼の本業の音楽活動に関することが書いてあり、奥さんでもあるユーミンのツアーバンドのギタリストして活躍されていた中川さんという方のことが紹介されていた。

彼もクルマが好きだったらしく、松任谷さんの影響で、ポルシェに乗っていたそうだが、ある年の苗場でのユーミンのライブを最後に病気が見つかり、あっけなく他界されてしまったそうだ。

そして亡くなられる直前に、ご自分でポルシェを処分されたという。

そのことを後で伝え聞いた松任谷さんは、「その時の彼の気持ちを思うと、今でも胸が張り裂けそうになる」と綴っていた。

昭和の高度経済成長期に生まれ育った人間に共通する価値観なのか、クルマは経済的成功のシンボルのひとつだ。カーグラフィックを読んでいた大学生の頃から20年後、創業に関わったウェブクルーというスタートアップのIPOで得たキャピタルゲインで、BMW Z4 3.0i を買った。人生で初めて買ったクルマだった。そんな僕も人生で一度は、ポルシェのオーナーになりたいと思っている。

大学生の頃ほどクルマに対する関心は無くなったが、それでもクルマが好きなのと、松任谷正隆さんのファンでもある僕は、とても楽しく、そのコラムを読み進めていたのだが、最後の最後で、中川さんという寡黙なギタリストの最後を知り、想定外の結末に、心が動揺した。

自分でも何を伝えたいのか? 何を文字に残しておきたいのか? 整理できていないが、会ったこともない中川さんというギタリストの人生から、何かを訴えられている気がした・・・。

※出典:写真はポルシェ・ジャパンのウェブサイトよりスクリーンショット。

あの日。

人生は短いよ。人生100年時代とか言うけど。若い日々は、あっと言う間に通り過ぎる。

子供の頃にお世話になった叔父さんや叔母さんたちが旅立ってしまう年齢になったせいか、子供の頃や自分が若かった頃のことを思い出す。

父は珍しく、急いでいた。制限速度を超えているのは、小学生の僕にも分かった。長い坂道を父のクルマで病院に向かっていた。小学校4年生か5年生の頃だったと思う。あれが人生で初めての入院だった。

地元の総合病院で働いていた父は、とても仕事が忙しかったようで、一緒に遊んでもらった記憶は無い。時々、どこどこに連れて行くという約束をしては、いつも前日になって、仕事が入ってしまい、連れていけなくなった・・・と言っていた。母は、子どもたちを遊びに連れて行ってあげたいという気持ちは分かるけと、行けなくなるとガッカリさせるだけなので、本当に行けることが確実になるまで、何も約束しない方がいいでしょう、と父に言ってた。

コロナ禍の中、息を引き取った叔父は、僕が高校生の時、大雪が降った日、バンドの練習で楽器を運ぶためにクルマを出してくれた。僕の父親(彼にとっては義理の兄)に対する手前もあっただろうけど、本当に他人に優しい、素晴らしい人だった。残念ながら、告別式には参列できなかった。

思い出せば、長男は幼少の頃から気難しく、神経質だった。数学が得意で、Garage Band で作曲を始めた彼の姿を見て、一昨年のクリスマスに、僕は彼にMacBook を買ってあげた。妻に似て、金銭感覚がシビアで、最初は「どうして、そんな高額なものを買ってきてしまったんだ・・・」と涙を流しそうにしていたが、音楽ユニットを結成し、今ではFinal Cut Pro等を使いこなし、昨年の夏には、FMラジオにも出演した。

この両親からどうしてこういう天真爛漫な人間が生まれて来たのか?と思うほど、次男は底抜けに明るく、社交性に優れており、誰とでもすぐに友達になれる。アフタースクールのキャンプでバスに乗る時も、隣が知らない子だろうがまったく気にせず、帰って来る頃には仲良しになっている。長男のような理系の脳ではないと思うが、兄の様子を見様見真似で、Garage Band で作曲をしたりしている。週末は、友達の家に行ったり、彼らを我が家に呼んだりと、学年の違う子どもたちとも楽しく遊んでいる。

彼らがいなかったら、去年の紅白をみるまで、きっとヨアソビは知らなかったし、ヨルシカもね。

田坂広志さんがご自身のブログか何かで若さの貴重さに気づくのは、残念ながら、若さを失った時だということを仰っていた。その時は、理屈としては理解していたが、今になって、哀しいほど、その意味を実感する。

そりゃいろいろあるけど、生きていることは、それだけで素晴らしい。そう思える人生を送れていることに、感謝しかない。

人生は短いね。

短くなった夏休み。

僕には日系人の叔父がいた。ロサンゼルスで生まれた人で、自分で会社を興して成功し、裕福な生活をしていた。妻と結婚したことで、僕は彼の義理の甥になり、事あるごとに、色々なことを教わった。残念なことに、数年前、事故で亡くなった。

「子供には瑞々しい感性があり、どの子も天才だ。我々大人に謙虚な姿勢があれば、子供たちから多くのことを学ぶことができる」。その叔父が生前に言っていたことだ。

安倍首相の一声で小中高校が一斉休校になり、我が家の子供たちも暫くの間、自宅での勉強を余儀なくされていたが、その間、小3の次男は少々太ってしまった。そのことを妻はとても気にしていたが、学校が再開し、毎日、重たいランドセルを背負って、片道700メートルの道を往復するようになると、だいぶスッキリとしてきた。

緊急事態宣言が発令される前からノマド&テレワーク生活だった僕には、あまり大きな変化は無かったが、それでも、自宅にいることが増え、運動不足の次男を連れ出し、駒沢公園や林試の森公園まで、片道3キロ弱の道を自転車で出掛けるようになった。

学校が再開し、梅雨が始まると、自転車での散歩はできなくなったが、毎週日曜日、家族全員でプールに行くようになった。

泳ぎが苦手だった僕は、50メートルも泳ぐとゼイゼイ言っていたのだが、久しぶりに泳いでみると、以前よりはマシになり、200-250メートルぐらいは泳いで帰れるになった。

僕と同じような年齢の友人たちは、もう子育ては終わりつつあり、人生100年時代に向けて、この先のことに想いを巡らせているようだが、僕は、まだまだ先が長い。次男が成人(18歳@66歳、20歳@68歳)すると、70歳の声が聞こえている。

話は変わるが、昨日、ふとしたことから、Amazon Prime で、アル・パチーノ主演の「Stand Up Guys(邦題:ミッドナイト・ガイズ)」という映画を観た。70歳を超えたオジイサンたちが、かっこよく、余生を生きる、クライム・コメディ映画だ。

あくまでも映画の世界(フィクション)ではあるが、マフィアであっても、愛と友情に生き、弱い者を守り、強いが理不尽な奴にはリスクを取ってでも立ち向かう。本来の意味ではない使われ方の「忖度」とは無縁な生き方だ。

カッコいい70歳を目指そう。そのためにも、身体を鍛えておかないと!

Infarm 日本法人の経営。

2015年11月。当時の僕は、サンブリッジ グローバルベンチャーズ(SBGV)という、シード&アーリーステージに特化した投資業務およびシード・アクセラレーション等を行う会社を経営していた。

そのSBGVで、Innovation Weekend という、ピッチコンテストを中心としたスタートアップイベントを運営しており、その Innovation Weekend を初めて、Berlin で開催した時だった。

2014年5月、シンガポールからスタートした「Innovation Weekend World Tour」は、ボストン、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シリコンバレー等を周り、2015年11月、僕にとって初めての訪問となるベルリンで、Innovation Weekend Berlin 2015 を開催した。

World Tour 開始当初は、ピッチするスタートアップの募集も観客も覚束ず、めちゃくちゃ苦労をしたが、2015年からは順調にピッチスタートアップの応募があるようになり、実は、ベルリンでも面白いスタートアップが25-30社ほど集まっており、募集は締め切っていた。

ところが、Innovation Weekend をベルリンで開催すること知った、ミュンヘンで Story Maker というPR会社を経営するBjoern Eichstaedt という知り合いから、とても面白いスタートアップがあるから是非、ピッチに誘った方がいい!と言って紹介されたのがInfarmだった。

Infarm は、Innovation Weekend Berlin 2015 で優勝し、尚且つ、毎年12月に東京で開催していた Innovation Weekend Grand Finale という、年間チャンピオンを決めるイベントでも優勝した!

当時のInfarm は、パイロット(試作機)を1台、METROという業務用のスーパーで稼働しているだけだったが、2020年7月21日現在、世界中で稼働している InStore Farm は「950台」にまでなった。

僕(ドリームビジョン)は、2016年からInfarmドイツ法人に出資しており、彼等の日本市場参入をサポートしてきたが、2020年2月、遂に日本方を設立し、代表取締役社長に就任した。そして、JR東日本からInfarm ドイツ法人にご出資いただき、子会社の紀ノ国屋Infarmを導入いただくことになった。5年前、ベルリンで初めてファウンダーたちに会った時には、想像さえしていなかった。

さて、そんなInfarm の日本法人を経営することになり、日本市場へのローンチの準備を進めている中で、感じたこと、学んだことを共有したいと思う。

1, 電気自動車やスマートフォンの企画開発・製造・販売と似たような事業構造。

Infarm の事業は「LEDと水耕栽培」により、屋内で野菜を育てて収穫し、販売することである。その野菜を栽培するには「InStore Farm」というハードウェアが必要だが、心臓部は「独自開発のソフトウェア」だ。Apple や Tesla のような事業構造に似ている。

Infarm の事業は、R&D, Crop Science, Supply Chain Management, Marketing/PR, Business Development, Corporate Sales, Finance & Accounting, HR, Academy, Installation Engineering, Software Development, Operation, New Market Expansion, etc.と様々な機能とタスクにより成り立っている。従って、何かひとつ、変更を加えようとすれば、それはすべての部署や機能に影響することになり、入念な業務設計と運用が求められる。Synchronized Swimming の如く、一糸乱れぬ演技が必要不可欠である!

2, Cosmopolitan culture(コスモポリタンなカルチャー)

Infarm では現在、日本を含めて計10ヵ国に進出しており、約600名近いスタッフが働いている。国籍は30ヵ国を超えており、社内公用語は「英語」である。但し、英語を母国語とする人は、20%程度だろう。

従って、お互いに「異なる」ことが前提であり、相手がどのような判断基準に基づいて発言しているのかを理解しようとする姿勢が求められる。一方、日本のような同調圧力はない。極めてオープンで風通しの良いカルチャーだ。

翻って、日本の多くのスタートアップのように、経営者も従業員も株主も顧客も、その殆どが日本人という環境では、ユニバーサル(グローバル)に通用する事業やプロダクトを開発することは難しいということを実感する。

3, Attracts global talents!(世界中から優秀な人を惹き付ける!)

とても嬉しいことに、Infarm には世界中から才能豊かな、そして、人間味溢れる素晴らしい方々が応募してきてくれるし、様々な会社がInfarmを導入したり、一緒に仕事をしようと言ってくれる。申し上げるまでもなく、とても光栄なことだ。

その理由は偏に、Infarm の哲学、理念、ビジョン、実現したい未来にある。

食品の30%以上が、生産後、我々の食卓に並ぶまでの間に「廃棄ロス」になってしまうという現実がある。その廃棄ロスにも「エネルギー」が消費され、CO2(温室効果ガス)が排出されている。それを放置しておいていいはずがない。

国連によると、2050年には、この地球上に「100億人」が暮らし、その「70%」が「都市」で生活することになる。究極の「地産地消」を実現するためには、「都会で野菜(農産物)を栽培し、都会で消費する」のが最も良い。

Infarm は、そのドン・キホーテ的とも言える遠大なビジョンの実現に向けて、既に世界10ヵ国に進出し、前述のとおり、1,000台近い InStore Farm を稼働させている。

崇高な哲学、理念、ビジョン、そして、JR東日本、紀ノ国屋という素晴らしいパートナーのご支援を頂戴し、Infarm 日本法人の経営を仰せつかっていることは、物凄い責任とプレッシャーではあるが、これほどやり甲斐のある仕事はない。

Infarm 日本法人は、僕を含めて、まだたった3人(3人目は、この春、大学を卒業したばかりの Insane Carzy に優秀な女性)だが、地球規模のビジョンを実現するための「仲間」を絶賛募集中である。

ご関心を持っていただけた方は、是非、ご応募いただきたい。

心より、お待ちしています!!

Another Monday morning in the social distance, not Paradise.

2020年4月27日。偏頭痛の定期検診のため神谷町のクリニックに向かう。最寄駅のホームは閑散としている。当然だが、電車の中も空いている。混雑した月曜日の朝の風景は、もう過去の出来事になるのだろうか?

28歳の時、徒手空拳で起業してから29年。一時期は、100名を超える会社の経営をしていたこともあるが、ここ数年は数人の組織で、海外出張が多く、時差も手伝い、リモートワーク且つノマドな生活を送ってきた人間には、テレワークは新しくも何でもない。そして、ご多分に漏れず、新型コロナウイルス関連の記事や報道をチェックし、この先の社会の在り方を思案する毎日だ。

新型コロナウイルスの発生原因は諸説あり、素人の僕が講釈を垂れるにはあまりに複雑で未知の災難だが、前回のエントリーでも書いたが、地球環境の変化、ストレートに言えば、人類による地球環境破壊が無縁ではないと思う。

前回のエントリーで紹介したとおり、地球上に住む「人間」と「家畜」と「野生動物(陸上に棲む脊椎動物)」の「重さ」は、人間30%、家畜65%、野生動物5%である。この「不都合な真実」は、我々地球の主?にとって、どのような意味を持つのだろうか? その意味を僕は、法政大学経営大学院でお世話になっている小川教授から教わった。

この先の内容に関しては、小川教授のレポート(ブログにも掲載されている)とご本人から伺った話を僕なりに咀嚼したものだ。詳しくは、小川教授のブログを参照されたいが、学術的な内容で少々難解なところがあるため、より多くの方々に簡単に読んでいただければと思い、このエントリーを書くことにした。

小川教授との出会いは、インタースコープ時代に遡る。インタースコープでは、超優秀な学生インターンを採用していたため、法政大学で単位認定のインターン制度を導入する際、竹内淑子教授から相談があったのだが、その竹内教授から「きっと馬が合うと思います」と言って紹介されたのが小川教授だった。失意のドン底だった2009年の夏、法政大学経営大学院の小川教授から掛かってきた一本の電話で拾っていただき、今も経営大学院で、イノベーションと起業家精神について教えている。

ところで、皆さんは日頃、牛肉や豚肉、そして鶏肉をどのような頻度でどの程度、食べているだろうか?(僕は鶏肉は嫌いなので食べないw。)

環境科学者として世界的に有名なオランダ自由大学のハリー・エイキング博士によると、タンパク質の生産効率という観点で、豚肉エンドウ豆(pea)を比較すると、必要とされる土地面積には約10倍(エンドウ豆:1.3ha v.s. 豚肉:12.4ha)、必要な水量約60倍(エンドウ豆:177㎥ v.s. 豚肉:11,345㎥)の格差があるという。

尚且つ、エンドウ豆(pea)豚肉では、農業生産が生み出す環境負荷(排出物の指標)が大きく異る。

例えば、環境負荷の格差が大きいのは、1. 海洋と土壌の酸性化(Accification)は61倍2. 地球温暖化(Global warming:Co2の排出量)は6.4倍3.富栄養化(Eutrophication)は6.0倍である。「農薬や肥料」「水や土地利用」でも、格差は1.6倍から3.4倍に広がっている。

では、その原因は何なのだろうか?

「豚肉(タンパク質)」の生産のためには、穀物(大豆とでんぷん)を「飼料」として投入する必要がある。つまり、豚肉の生産では、投入される飼料やエネルギーの「タンパク質(豚肉)への変換効率」が良くない、ということだ。前述のエイキング博士によると、「牛肉」は豚肉と比較して、さらにタンパク質への変換効率が悪いことが知られている。

さらなるメリットとして、植物由来のタンパク質への転換を図ることで、オランダや欧州において農業に利用されている土地や資源(水や肥料など)を、現在の「5倍から6倍」程度、解放できるそうだ!つまり、その分を、放牧に利用したり自然に戻したりできるという。これは、環境負荷の低減という意味で極めて説得力がある。但し、エンドウ豆の栽培の途中では、タンパク質の副産物として、でんぷんが大量に産出されること、大豆の場合は、サラダ油が副産物として生み出されることを考慮する必要がある。

では、それにも関わらず、人類は何故、未だに大量の「家畜」を飼い、大量の「肉」を消費しているのだろうか?

米国発の「インポッシブル・バーガー」や「ビヨンド・ミート」が支持を得つつあることは周知のとおりだが、それでも、ヴィーガン食(完全菜食主義者)やオーガニック食品は、まだまだ極一部の人たちにしか浸透していない。

何事も「変化は痛みを伴う」が、人間は「食」に関してかなり保守的ということだ。生まれ育った食習慣を変えることは、そう簡単ではない。

マーケティング的には、新しい食品として売り出すよりも、「インポッシブル・バーガー」や「ビヨンド・ミート」の名前のとおり、従来の「肉」に関連付けて売り出した方が人々の心に響くし、「味」に関しても、いかにして「本物の牛肉」に近づけるか? が成功要因になる。

僕は今から2年前、シリコンバレーのレストランで初めてインポッシブル・バーガーを食べたが、牛肉とほぼ同じ食感で、牛肉よりもシツコクなく、個人的には「こっちの方がいいな(健康にも良いし)」と思った。

ここでは詳細なデータを紹介することは省略するが、温室効果ガス(CO2)の排出量に関しては、クルマの排気ガスがもたらすものよりも、畜産によりもたらされる量の方が圧倒的に多い。

特にアメリカでは、畜産業界は大きな「票田」になっていることもあり、政治的問題と密接に関係しており、一筋縄ではいかない問題であるのは間違いないが、「人類の未来」は「植物の時代」にしかないと断言できるだろう。

因みに、カバー写真は、妻が作った「ローストポーク(ローズマリー風味)」である。手前味噌だが、かなり美味しい。

肉食を完全に止めることは難しいかもしれないが、前述のとおり、自然に放牧されて作られた牛肉や豚肉なら、環境破壊を最小限に留めることができるし、それほど頻繁に牛肉や豚肉や鶏肉を食べる必要もない

僕の拙い知識に基づく考察ではあるが、皆さんは、どう思われただろうか?

May 2nd(Sun), 2020. Just another day on our rooftop in the Social Distance Days.