「テクノロジー思考」と「現代の教養」。

ご本人はご記憶に無いかもしれないが、僕が初めてリブライトパートナーズの蛯原さんにお会いしたのは2013年6月、Echelon というシンガポールでのカンファレンス会場だった。後で知ったことだが、当時の蛯原さんは、ご家族を東京に残したまま、単身、シンガポールに移住された頃だった。

彼は今、東南アジアに限らず、間違いなく、今後のテクノロジー産業をリードしていくであろう「インド」の「スタートアップ」エコシステムに関する日本の第一人者である。

「先見の明」があったと言うのは簡単だが、その頃は運営されているファンドの規模が今ほど大きかったわけではないだろうから、二重生活をされるのは、経済的にも決して簡単なことではなかったと思う。

当時は、日本のベンチャーキャピタルが挙ってシンガポールに拠点を設け、成長市場の東南アジアでの投資を始めた頃だったが、独立してVCファンドを営む蛯原さんが、何の後ろ盾もなく、ご自身の判断とリスクで、そのような決断をし、実際に行動に移されたというのは、誰にでもできることではない。

ご存じの方も多いと思うが、彼は、米中の覇権争いが今後の世界情勢にどのような影響をもたらすか?について、地政学リスクの分析とそれに基づくコンサルティングの世界的権威と言ってもいい、ユーラシア・グループ社長の「イアン・ブレマー氏」と対談ができるほどの「洞察力」を持っている人だ。

その彼が満を持して著したのが「テクノロジー思考」という本である。まだ手に取られていない方には、一読をお勧めする。

詳細は彼の著書をお読みいただくとして、僕にとって、なるほど・・・と思ったことをいくつかご紹介したい。

1点目。「イノベーションの取り組みにおいて、極めて多く見られる間違いがある。むしろ、殆どの人が間違えていると言ってよい。その過ちとは、あなたがいま買っているものはイノベーションであって、事業を買っているのでも、ましてや将来の収益を買っているのでもない、ということである。それを取り違えるという過ちを、買う本人が一番やってしまう。故に2年後の取締役会で『あの投資は我社の収益にまったく役に立っていないじゃないか』という不毛な議論が始まるのである」。

2点目。「イノベーションを実現するのに最も適した組織体はスタートアップである。逆に最も適さないのが大きく古い組織体である。なぜならば、新規の革新に取り組むということは、すなわち、既存の持ち物を捨てる、ないしは大きく変えることを意味するからであり、それには有形無形に大きなコストがかかるからである」。<中略>

「スタートアップ、ユニコーンブームが生じている第一の理由はイノベーション至上主義、第二の理由は過剰流動性と論じたが、ブームには当たり前だが必ず需要者がいる。上記の理由でイノベーションの最大需要者は大企業である」。

「オープンイノベーション」と称し、世界中で大企業がスタートアップとの連携を模索しているのは、そういうことだ。

上記に関する興味深いエピソードがある。

ある大企業において、経営戦略を立案する立場にいらっしゃる方が仰っていたのだが、その方が勤務されている会社の「事業構造」は、なんと「50年」に渡り、変更されていないそうだ。僕は「20年」だと記憶しており、その次にお会いした際に確認したところ、「いえ、50年です」と仰っていた。

50年に渡り「収益」を生み出す「事業構造」というのは、とてつもなく素晴らしい経営資源であるが、と同時に、それは「変化」に対する「強烈な抵抗(Friction)」となるのは言うまでもない。しかし、さすがに、イノベーション至上主義の時代にあり、その企業もオープンイノベーションを模索している。

問題は「カルチャー」である。特に「時間軸」が、スタートアップと大企業では、大きく異なる。スタートアップにとっては「時間が経つ=資金が燃える」ことを意味する。安定した収益基盤があり、財務的にも安定している大企業とは噛み合わない。

既存事業とのカニバリゼーション(抵抗力)が生じることは勿論、大きな障害だが、カルチャー(クロックスピード)が異なっては、事業(アプリケーション)は機能しない。

故に、大企業がスタートアップとオープンイノベーションを志向し、実現しようとするのであれば、僕がわざわざブログに書くまでもなく、社長直轄等の「別組織」が必要不可欠である。権限を移譲し、意思決定を速くする必要があるからだ。

ところで、日本人あるいは日本のビジネスマンの英語力の問題に関して、ライフネット生命保険の創業者で、現在は立命館大学アジア太平洋大学(APU)の学長を務められている出口治明さんが、何かのインタビュー記事で、一言一句は別として、こういう趣旨のことを仰っていた。

日本のビジネスマンの英語力を向上させることは難しくありません。経団連所属の企業が、管理職になるには、TOEICで「800点以上」の成績を持って来なさい。そうでなければ、管理職にはなれませんよ、と言えば、彼らの英語力はすぐに上達します。

問題は、経団連所属企業の経営トップの何割が、ビジネスで通じる英語が話せるかだろう。

僕の知り合いで、元楽天の幹部だった方がいる。三木谷さんが「英語公用語化」を表明し、実際に導入されてから2-3年後のある日、我々の投資先のスタッフが New York から東京に来ていた時、彼と一緒に、東京は二子玉川にある楽天本社に彼を訪ねたことがある。

彼は一言もと言っていいほど、英語は話せなかったはずだが、なんと、New York のスタッフと僕と3人で、何の支障もなく、英語で会話をした。

確かに、文部科学省の萩生田大臣の「身の丈」発言はいかがなものかとは思うが、中学、高校で「6年間」、大学の一般教養まで含めれば「8年間」も英語を勉強して、それでも「英語が話せない」というのは、「英語教育のカリキュラム」と「日本の社会構造」の問題以外の何物でもない。とんでもない時間の無駄である。

最後にもうひとつ。ドリームビジョンの投資先に、創業メンバーが全員「インド人」のスタートアップがある。シリコンバレーのスタートアップだ。そこのCEOが昨年10月に初来日した時の会話を紹介したい。

彼は僕に「東京でカントリーマネジャー(日本事業の責任者)を採用したら、年収はいくらぐらいと思えばいい?」と質問した。それに対して、僕が「1,200万円から1,500万円ぐらいかな」と答えると、「えっ?事業開発経験で10年選手。年齢は30代半ばぐらいの人材だよ?」と聞き返してきたので、「そうだ」と答えると、「なんでそんなに(年収が)安いんだ?」と聞き返された。

もうローカルルールでやっていける時代は終わっている。「テクノロジー思考」。日本再生のための必読書である。

「野菜工場」と「シリコンバレー」。

先日、とあることで、千葉県柏の葉キャンパスにある「千葉大学」を訪ねた。「水耕栽培」や「LED」による「野菜作り」に関するレクチャーを受け、キャンパス内に広がる「野菜工場(研究施設)」を見学するためだ。

レクチャーをして下さったのは、野菜工場に関する日本の第一人者の丸尾教授。丸尾教授の話は非常に分かりやすく、予備知識の乏しい僕にも、日本そして農業先進国オランダの野菜工場の現状がとてもよく理解できた。

日本におけるLEDと水耕栽培による野菜作りは、露地物に対してまだまだコスト競争力がなく、すべての野菜生産量に占めるシェアは、まだ数%と記憶している。

それでも、今から10年後には、野菜の種類によっては30%程度にはなるだろうということだ。

現状はどうか?例えば「朝取りレタス」は「朝10時に店頭に並ぶ(その必要があるかは疑問)」が、そのためには「午前0時」から「投光器」を使って収穫しているという。そんな激務の後継者は見つからないし、親も継がせたくない。

一方、レタスを含めて、野菜の5~6割が「業務用(カットレタス:スーパー、レストラン向け)」になって来ているらしく、となると、味は勿論、食感(歯応え)、色味等は大切だが、見てくれが悪くても問題はない。LEDと水耕栽培によるレタス(に限らない)栽培では、そのような需要を反映した品種開発をすれば良い。

また、ご存じの方も多いと思うが、日本の農業人口の約半分(46.8%)は「70歳以上」。 日本の就農人口は、10年後には確実に「半分」になる!

ひょっとすると、一年中、好きな野菜をリーズナブルな値段で食べられる今の時代は、ある意味、特殊とも言えるかもしれないし、今後は就農人口が減り、国産野菜は値段が高くなり、その野菜の旬な季節しか食べられなくなるかもしれない(丸尾教授)。TPPによる廉価な野菜の輸入は増えるだろうけど、日本人は「国産」が好きだからね・・・。

では、農業先進国のオランダではどうか? DENSO等の「日本の技術(農業ロボット)」が使われているが、それを「オランダの企業」が「システム化」しているらしい。どこかで聞いたような話である。

因みに、日本の技術は、定植日に、開花日、収穫日が予測できるらしい。つまり、光量や温度をコントロールすることで、出荷日を調整することが可能ということだ。凄いことである。

また、オランダには「Glass City」なる「10km x 10km」の広さの「野菜工場の集積地」があるらしい。然るに、ロジスティクスを含めて「労働効率・生産性」を高くできる。

この「集積地」であるが、I.T.の世界で言えば「シリコンバレー」である。

リスクマネー、リーガル(法律)、アカウンティング(会計)、起業成功者によるエンジェル投資、EXIT候補企業(スタートアップを買収する大企業)、起業家を歓迎するカルチャー、グローバルな銀行等が、50マイル内に存在している。

それが、ユニコーンと呼ばれる時価総額「10億ドル」以上のスタートアップ(株式未公開)を多数産む理由である。

日本における「I.T.系スタートアップ」の「集積地」は間違いなく「東京」である。

では、日本に「農業」における「集積地」はあるのだろうか? 現時点では恐らく無いだろう。

シリコンバレーは政策で出来たエリアではないが、オランダの農業の成功には政策が働いているように思う。

政府は事業には介入せず、民間に任せれば良い、という話はよく聞くし、僕も基本的にはそう考えているが、ある程度のモーメンタム(勢い)が着いた後は、New York や London が成功しているように、政府が後押しすることは有効なように思う。

たった半日の「野菜工場ツアー」ではあったが、想像していた以上に「農業」は「サイエンス」であり、「テクノロジー」だということが理解できた。

僕が20歳若かったら、農業ベンチャーをやろうと思ったかもしれない・・・。そのぐらい「可能性」を感じた。

日本には素晴らしい技術がたくさんある。問題は、どうやってそれらを事業化するか?である。

甚だ微力ながら、貢献したい。

イノベーションと現実の狭間。

「岸和田南」。関西国際空港に向かう高速バスから見えた標識に、そう書いてあった。

大学時代に一年ほど住んでいた下宿(今では死語だ)で一緒だった友人が、岸和田の出身と言っていたのを思い出した。

関西国際空港までは、東京でいえばアクアラインのような橋を渡って行くが、途中で目にした風景は、昭和の高度経済成長期のまま、時間が止まっているかのようだった。

これは大阪に限った話ではなく、東京でも羽田空港に向かう途中に、同じような光景が広がっている。

僕はかれこれ15年ぐらい、インターネットの世界で仕事をして来ているが、facebook もTwitter も関係ない世界に生きている人達がたくさんいる。

まだまだ、そういう人達の方がマジョリティだろう。

イノベーションは産業の新陳代謝を促し、人類は豊かになってきたが、「創造的破壊」には「痛み」が伴う。

我々ベンチャーは、その先導役であり、波頭に立つことが仕事だが、政治や行政としては、様々な立場の人達を考える必要がある。

昨年の秋から大阪市の仕事をしており、明日は Global Innovation Conference なる国際会議があり、その運営のために大阪に来ているが、色々と考えさせられる。

しかし、Global Innovation は不可逆的である。

「強い者が生き残るのではなく、変化するものが生き残る」。

iPhoneからの投稿

「ローカル・ルール」という「鎖国」が好きな「日本人」。

新政権と共に始まった2013年。今年はどんな一年になるのだろう?

自分自身の頭の整理と年初の挨拶を兼ねて、僕の問題意識と、その解決に向けた提案を披瀝したい。

昨年12月30日の日経新聞朝刊一面に、ソフトバンク孫さんのインタビュー記事が掲載されていた。

その中で孫さんは「過去の携帯電話は『日本独自の規格』でガラパゴスと呼ばれ、海外勢を排除してきた。その結果、日本企業が海外進出に出遅れてしまった。もう一度、世界で戦う気概を取り戻さなければならない」と答えている。

そして、「経営者の最も重要な仕事はドメイン(事業領域)を『再定義』すること。日本企業は『本業』という言葉が好きだが、市場が縮小するのに既存事業にしがみつく理由は何か。企業理念を軸に、次の戦略を描くのが経営者の役割だ」と言っている。

誰も異論はないハズである。

しかし、どうやら、そこに「異論」を唱える人がいるらしい。

孫さんのインタビュー記事の翌日、同じく日経新聞朝刊一面に、信じられない見出しが踊っていた。

「政府」が「電機メーカーなどの競争力を強化するために、1兆円もの資金を投じ、メーカーの『工場・設備』を買い取る」という。

その理由は「韓国や台湾などの海外勢」と競うためで、過去に投資した資産の減価償却負担が重いと新たな投資を抑える一因となり、競争力の低下を招いた」としているが、その「投資」を決めたのは「誰」だろう?

「経営者」である。

ということは、経営責任は問われない、ということだ。

仮に、ベンチャー企業がベンチャーキャピタル等から資金を調達し、何らかの技術や設備に投資をし、それが失敗した場合、それらを「帳消し」にしてくれないと新しい勝負はできない、と言ったとしたら、どうなるだろう?

そんな会社はさっさと清算し、残余財産を株主に分配してくれとなるだろう。あるいは、経営者は即刻、クビになる。

政府がやろうとしていることは、我々の税金、それも、財政赤字の日本においては、今まだ税金を納めていない僕たちの子供達が、大人になってから稼ぎだすだろう富の先食いである。

僕は小学校1年生の長男に「税金」という仕組みとそれを何に使うかを決める「政治家」という職業を教えているが、彼がこの話を聞いたら、何というだろうか?

この3連休に訊いてみよう。

次に、安倍首相が頻りに主張している「インフレ目標」について。

もう過去何年、いや10年以上にも渡って異常なまでの低金利にしていても経済が反応しないのに、なぜ、これ以上、資金を供給しようというのだろう?

そりゃ、おカネをどんどん刷れば、おカネの「価値」は「目減り」するわけで「円安」になるだろうし、輸出企業にとっては有利である。

でも、それで「実体経済」が良くなる(構造が変わる)わけではない。

いくら資金を供給しても、いくら金利を下げても、経済が活性化しないのは「潜在成長率」が「実質的にマイナス」だからである。

少子高齢化で人口が減り、市場が縮小していくということは、「労働生産性」が劇的に向上しない限り、デフレから脱却することはできない。

そのような状況にも関わらず、今や「衰退産業」と化した「家電産業」を守るために、未来から借金してまで税金を投入する意味はどこにあるのだろう?

むしろ、衰退産業に従事する人々の「成長産業」への移動を促進するような政策を打った方が、どう考えても有効なはずである。

「変化」は必ず「痛み」を伴うわけであり、「目の前の痛み」を恐れて手術をしなければ、時間の問題で死んでいくしかない。

ところで、昨年末、ある新聞の取材を受けた。

「ベンチャー活性化のためには、どのような政策が有効か?」というものだった。

僕は、こう答えた。

設立3年未等、何らかの「条件」は必要だと思うが、仮に、ベンチャー企業に「1億円」を投資したら、同じ「1億円」を「税控除」の対象にする。

2億円の「経常利益」が出た場合、何もしなければ、約1億円を税金として収めることになるが、僕の提案は、1億円をベンチャー企業に投資することによって、1億円の税金を免除する、というもの。

つまり、手元に残る現金は、どちらも「1億円」ということだ。

税金は払ったら戻ってこないが、投資なら「リターン」がある可能性がある。

事実として、シンガポール等では、研究開発に投じた資金の「250%(だったと思うし、国によって数字は異なる)」を税控除する等の政策を実行している。

税金として吸い上げた場合の問題のひとつは、吸い上げた金額をそのまま公共サービスに使うことができない点である。税金を吸い上げるためにも、配分するためにも「コスト」がかかるということだ。

だったら、経済活動をして生まれた「富(余剰資金)」は、政府ではなく、民間で回した方が効率が良い。

もうひとつ、僕が提案したことは、「整理解雇の4要件」の「完全撤廃」か「大幅緩和」である。

電機メーカー(に限らない)が衰退した事業を思い切って捨てて、新しい事業に舵を切れない理由のひとつに、競争力が無くなった「事業を清算(撤退)」するために、そこに従事していた従業員を解雇するには「整理解雇の4要件」を満たす必要がある、ということがある。

これがトンデモないシロモノで、事実上、解雇はできない仕組みになっているのが今の日本である。

僕はお恥ずかしい話、「整理解雇」をしたことがあるので、それがいかに大変なことか、痛いほどよく分かる。

何も「家電」に限った話ではなく、「繊維産業」等、競争力が無くなり、事実上、日本から消滅していった産業はいくらでもある。

何事も「栄枯盛衰」である。

次いでに、ドラッカーの言葉を紹介しよう。彼は「1995年」に出した論文で、こう書いている。

「先進国の中で食糧を大量に輸入しているのは、日本だけである。その日本さえ、食料生産が弱体化したのは必然ではなく、時代遅れの『米作補助』という農業政策が、近代農業の発展を阻んだからだった」。

「日本以外のあらゆる先進国が、都市人口の増加にも関わらず、過剰農産物の生産者となった。それらすべての国で、農業『生産性』は、80年前の数倍になった。アメリカの場合は、8倍から10倍になった。しかも、先進国のすべてで、今や農民は労働人口のせいぜい「5%」に過ぎない。80年前の10分の1である」。

小沢一郎氏が主張した農業の戸別「所得保証」は、どう考えても支持できない。

また、昨日だったか一昨日だったかの日経新聞25面で、ユニクロの柳井さんが「日本の大学」を酷評していたが、僕は全く同感である。

「競争」がない社会・組織・産業は必ず「腐敗」する。

結論として、日本に必要なことは「延命」ではなく「改革」であり、「自助の精神」である。

「スマイルズの自助論」とミルトン・フリードマンの「資本主義と自由」を、ひとりでも多くの人に読んで欲しい。

これだけ「情報技術(I.T.)」と「金融技術」が発達し、グローバル化した世の中で、「ローカル・ルール」という「鎖国」は通用しない。

以上が、僕の問題意識とその解決に向けた提案と主張である。

ところで、今朝、今年最初の大阪出張でホームに降り立ち、エスカレーターに向かおうとしたところ、目の前の売店で「カズ」の顔が僕の目に飛び込んできた。

僕と付き合いの長い方はよくご存知のとおり、僕は「カズ」「伊達公子」そして「アイルトン・セナ」が大好きだ。

「一番大事なのは、試合に出て活躍したいという気持ち。お金のためじゃない。もちろん、お金は大事だけど、試合に出て活躍すれば、お金というのはついてくる。若い選手を頑張らせるために僕はやっているんじゃない。僕の背中を見せるためにやっているわけでもない。僕がいるだけでチームの雰囲気が引き締まるとか言われても、僕自身は、試合に出て活躍したいからやっているに過ぎないわけです」。

でも、その「カズ」が頑張っている姿を見て、彼の「生き方」を見て、僕は「気持ち」を「鼓舞」され、「よし、頑張ろう!」という気にさせられる。

一昨日、インターネットリサーチ時代の「盟友」である大谷さんから頼まれて、彼が今、学長を務める「八戸大学」主催の「日本一受けたい集中講義」で講義をしてきたが、超多忙な合間を縫って、とんぼ返りで僕が八戸まで行く理由は、大谷さんの生き方が、社会に「勇気と自信」と「希望」をもたらすからである。

サンブリッジ創業者のアレン・マイナーに頼まれ、2011年3月からサンブリッジの仕事を手伝うようになり、2012年1月5日にサンブリッジ グローバルベンチャーズを設立したのは、アレンの夢と僕の夢が似かよっており、僕がドリームビジョンでは成し得なかったことを実現できると思ったからである。

「失意の日本代表落選」が「カズ」をここまで頑張らせているのだとしたら、インタースコープで「悲願のIPO」を断念し、ドリームビジョンで大失敗をしでかし、晴耕雨読ならぬ「晴『読』雨読」生活をしていた失意のどん底の時代があったことが、今の僕の原動力とも言える。

「人生万事塞翁が馬」。

久しぶに、大好きな「カズ」の記事を読んで気持ちが高揚しているが、今年一年の「マスタープラン」を作成し、地道にコツコツと、頑張ってやっていこう!

これからの日本。

自民党の圧勝で終わった総選挙。

僕のブログを読んで下さっている方々は、この結果をどう受け止められたのだろうか?

政治の話を書くつもりはないが、社会の仕組みについて、僕の立場から感じていることを、久しぶりのエントリーとして書くことにする。

年が明けて3月末になると、僕は「天命を知る歳」になる。

初めて50歳を意識した時(35歳になった時)のことを今も鮮明に憶えているが、あっと言う間の15年間だった。

そんな僕は、年甲斐もなく、今年2月に、2人目の子供が生まれた。

客員教授を仰せつかっている法政大学の修士論文の時期と妻の出産が重なり、担当していた学生の人達に病院のカフェまで来てもらって指導をしていたのが、もう2~3年前前のことのように感じる。

そんなことで無事、次男が生まれてきたわけだが、子育てをするには高齢の我々夫婦には、夜中に何度も起こされる生活は、想像以上にキツかった。

それに加えて、新しい会社を始めて、ヘロヘロになりながらやってきたが、ようやく、夜中に起きるのも1~2回程度になり、だいぶ楽になってきた。

と思っていると、先週は、次男から「ノロウイルス」に感染し、あっという間に家族全員に感染した。

それがようやく治ったと思ったら、今度は昨夜遅くに発熱・・・。

子育ての大変さは、子供を育てたことのある人でないと分からない。

乳幼児の頃は、急に具合が悪くなる。また、子供には子供の人格があり、小学生にもなると、子供なりのロジックと主張を持っている。

自分(親)の都合の良いようにはいかない。

ところで、この10月から妻が仕事に復帰した。

長男の時は、5カ月から保育園に預けることができたが、日本経済を反映して、仕事に復帰するお母さんが多いのか?今回は、無認可の保育園まで「空き待ち」には驚いた。

そんなことで、一時保育に頼らざるを得ず、1980年代のユーミンのチケットさながらに、予約解禁の朝は、妻は1~2時間もの間、電話が繋がるまで格闘となる。

しかし、その結果、予約が取れるとは限らない…。

少子化が問題だと真剣に思うなら、場所が無いなどという言い訳はしないはずだ。

事実として、石原さんが都知事だった時、東京都の「認証保育園」という制度ができた。

石原さんは、唯でさえ土地の高い東京で、「庭」がついてないと「認可」しないという、何とも現実離れした制度に呆れたと言って、東京都独自の制度をつくり、区政(東京の場合、認可保育園は区の制度)に風穴を開けた。

すると、「渋谷区」も、庭が無くても「認可(助成額は異なるのかもしれない)」するようになった。

話は変わるが、12/4(火)、僕たちが主催者として開催した「Innovation Weekend Grand Finale 2012」で、日本を代表する「VC & シードアクセラレーター」によるパネルセッションを行った。

パネリストの一人の「おざーん」こと小澤隆生氏が「大企業の新卒採用」を例にあげ、なるほど・・・と思わせる核心をつく素晴らしい発言をしてくれた。

彼曰く、日本の大企業は、新卒採用ひとり当たり、約150~200万円のコストをかけ、年収に400万円(勿論、会社により異なる)を払い、尚且つ、新入社員研修に、150~200万円を費やしているという。

どれだけ戦力になるかも分からない(少なくとも初年度は期待できないだろう)にも関わらず、である。

だったら、才能があり、大きなビジョンを描き、社会をより良い方向に変える可能性がある「起業家」に、もっともっと投資した方がよい!というのが彼の主張である。

おざーんも僕も、1998年頃、ネットビジネスを始めた。

その頃は、そう簡単にベンチャーをキャピタルから資金調達はできなかったし、そもそも、僕らもその一社である「シード・アクセラレーター(創業期・シード期の最もリスクのあるベンチャーに少額を投資し、様々なサポートをする)」なる業態はなかった。

今は、資金調達においても、Cloud, Social Media, Smartphone(App Store, Google Play), Crowd Sourcing等のインフラ面でも、格段に恵まれた環境だと言える。

安倍さんは日銀に更なる「金融緩和」を求めると言っているが、「潜在成長率」がゼロに近い状態では、その効果は疑問である。

将来の税金を払ってくれる「子供たち」や「起業家」にこそ資金が回る(投資する)社会に変えていきたい。

大阪出張の新幹線の車中にて。

存在感の無い「日本の大企業」。一方、ますます人気の「日本食」。

僕がサンフランシスコ&シリコンバレーに出張に来ている間に、衆議院は解散。はたして、結果はどうなるのだろうか?

ところで、今回の出張は、とあるプロジェクトの仕事だったのだが、VC、シードアクセラレーター(インキュベーターと言ってもよい)、ベンチャー経営者、メディア、大企業、アカデミアの方々等、様々な職業の方々とお会いした。

今回の出張で感じたことを、自分自身の備忘録を兼ねて、ブログに記しておくことにする。

ところで、随分と昔(10年以上も前)のことだが、旦那さんの仕事の都合で2年間、ボストンに住んでいた人から「アメリカに住んで分かったことは、(アメリカにとって)日本はどうでもいい国だということ…」という話を聞いたことがある。

東海岸と西海岸とでは、経済の構造が異なり、日本との関係も異なると思うので、サンフランシスコやロサンゼルスに住んでいたとしても同じ感想だったかは分からないが、現在のアメリカにおいて「日本の存在感」は「無い」に等しいのは、間違いないだろう。

日系のホテルに泊まっても、テレビは「韓国ブランド」である。

その一方、「日本食」の人気は、以前に増して高まっているようだ。

僕は20代の頃、New York フリークで、年に2回のペースで行っていたが、あの頃の New York はすでに、美味しい寿司や日本食レストランがあった。でも、当時のサンフランシスコは、今ほど「本格的 and/or 美味しい日本食レストラン」は無かったと記憶している。

金曜日の夜、サンフランシスコで行ったレストランは、元寿司職人の方がシェフをしているとのことで、日本食に使われている素材を使い、それを上手に「西洋風」にアレンジした、とてもオシャレで美味しい料理ばかりだった。

そして、客席は満員だった。それだけ、アメリカ人の味覚が発達してきたということだ。「日本酒」も人気である。

サブプライム以降、米国の経済は悪化したままで、失業率も高止まりしているというが、ここ「ベイエリア」は、とても景気が良いという。

facebook 上場当日、映画の舞台にもなったサンフランシスコで一番の高級住宅街である「Pacific Heights」の不動産は、facebook IPO長者達の「需要」を見越して、一日で「約5%」ほど価格が上昇したという。

また、サンフランシスコ市街に限らず、Palo Alto や Menlo Park といった高級住宅街も、For Sale となった住宅は、モノの2週間ぐらいで売れていくそうである。

因みに、新しい住人(購入者)は、中国人やインド人が多いという。

住宅以外でも、例えば、テレビドラマに出てくる中国人のキャラクターは、成績優秀であるケース多く、中国人や韓国人の存在感が増しており、実際、こちらの高校や大学でも、中国人や韓国人はとても優秀だという。

ここ「ベイエリア」は、まさしく、世界の縮図と言っても過言ではないのかもしれない。

もうひとつ、これは今回の出張に限ったことではないが、僕は「大きな問題」だと感じたことは、アメリアはとにかく、高等教育の「授業料」がバカ高い!!!ということである。

例えば、僕の知り合いのお嬢さんが通っている私立高校の授業料は、なんと「48,000ドル!」。仮に、1ドル100円で計算すると「480万円(年間)」である!!!

サンフランシスコ郊外にある「UC Berkeley」は以前、優秀な学生が行くリーズナブルな学費の「州立」大学として有名だったが、今では、その学費は「30,000ドル(年間)」ぐらいはするらしい。

たしかに、成績が優秀であれば奨学金が出たりはするらしいが、その場合、卒業時には、1,000万円ぐらいの借金を背負って社会に出てくることになる。

日本では考えられない話だろう。

とあるベンチャーのVPをしているアメリカ人の友人に聞いたところ(彼は、UC Berkeley で修士を取っている)、彼が出たころと今とでは、その学費が「6倍」だったか「12倍」だったか、とにかく、メチャクチャ高くなっているという。

その理由は色々とあるようだが、いずれにしても、そうなると、いわゆる「中流層(以下)の親は、子供の教育費を出せなくなる」ということだ。

ある中国系アメリカ人の話によると、カリフォルニアは税率が低いらしく、社会インフラや教育等に充分な資金を投入できておらず、それが問題のひとつだという。

そして、いつからだったか忘れたが、日本でいう固定資産税や所得税が上がると言っていた。

因みに、高給取りのボスの所得税が「15%」で、彼の秘書のそれは「30%」という話を聞いたら、どう思うだろうか?

アメリカ社会は、そういう構造になっており、オバマはそれを是正しようとしたわけである。

そして、東海岸は別として、全米一の「リベラル」な州と言ってもよいカリフォルニアでは、圧倒的にオバマの支持率が高いそうである。

仕事上でもたくさんの成果があった出張だったが、アメリカ社会を理解するという意味でも、とても有意義な出張だった。

さて、そろそろ空港に向かおう!

TPPと尖閣諸島。ジャーナリズムの本質。

体育の日に絡む連休を利用し、4泊5日で、家族でグアムに行ってきた。前回のグアムは長男が2歳になる直前だったので、5年ぶりだった。

そのグアムで、米軍と自衛隊が上陸訓練を行ったらしい。それに関する記事がニューズウィーク日本版に載っていた。

何人かの軍事ジャーナリスト(すべて外国人)が寄稿しているが、そこに書いてあることを要約すると、一触即発の事態にあるにも関わらず、日本政府は自衛隊を尖閣諸島付近に移動させることをしない(緊迫感がない)という批判。

僕は「一体なぜ?」と思いながら読んでいたのだが、今朝、プレジデントに掲載されていた尖閣諸島に関する記事を読むと、まったく、違う内容が書いてあった。

それによると、2010年11月に来日したオバマ大統領は、日米同盟のもと、尖閣諸島を守る代わりに、TPPに加盟して(米国に対して)市場を開放することを勧めた(求めた)、という政治的取引があったらしい。

実際、同年9月の「中国漁船衝突」事件の際、クリントン米国務長官は「尖閣諸島は日米安保の対象」と明言している。

しかし、今年8月にTPP参加表明をする予定だった野田首相は、国内の反対派に配慮して、参加表明を見送った。

日本がTPP参加表明を見送ったことは、つまり、米国が尖閣諸島(日本)を守る(日米同盟を発動する)理由がないと理解した中国は、ここぞとばかりに攻勢をかけてきた・・・というのが、プレジデントに掲載されてた記事の内容だった。

好戦的だったブッシュ前大統領とは違い、オバマ大統領は、武力行使には保守的。「出来ることなら、中国と揉め事を起こさないでくれ・・・」と思うのは当然だ。

ニューズウィーク(の記事)が批判していた「自衛隊が動かない」理由は、プレジデントの記事によると「米軍の同意が得られない」からだという。

米国のパネッタ国防長官は9月16日に訪日し、自衛隊出動がないことを確認後、19日に訪中。習近平次期国家主席と会談し、「中国が軍事行動を直ちに取らない」という約束の代わりに、中国の「領有権主張」に理解を示したとされている。

米国が理解を示したのであれば・・・ということで、中国は、国連総会をはじめ、各国のメディアに広告まで掲載するというキャンペーンに出たという。

個人的には、いったいどういうことだ?と思うが、「米国債の世界最大の保有国」である「中国」と揉めたくないのは本音だろう。

僕はプレジデントの記事の主張には妥当性があるように思うが、いずれにしても、ジャーナリズムを鵜呑みにすることは危険だということだ。

中国だけでなく、民主化されている「日本」においても。

ところで、TPP参加を反対している人達の主張は、日本の農業を守るということらしいが、具体的にどういう人達で、何のためなのか?

次回は、そのことを書こうと思う。