Infarm 日本法人の経営。

Infarm 日本法人の経営。

2015年11月。当時の僕は、サンブリッジ グローバルベンチャーズ(SBGV)という、シード&アーリーステージに特化した投資業務およびシード・アクセラレーション等を行う会社を経営していた。

そのSBGVで、Innovation Weekend という、ピッチコンテストを中心としたスタートアップイベントを運営しており、その Innovation Weekend を初めて、Berlin で開催した時だった。

2014年5月、シンガポールからスタートした「Innovation Weekend World Tour」は、ボストン、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シリコンバレー等を周り、2015年11月、僕にとって初めての訪問となるベルリンで、Innovation Weekend Berlin 2015 を開催した。

World Tour 開始当初は、ピッチするスタートアップの募集も観客も覚束ず、めちゃくちゃ苦労をしたが、2015年からは順調にピッチスタートアップの応募があるようになり、実は、ベルリンでも面白いスタートアップが25-30社ほど集まっており、募集は締め切っていた。

ところが、Innovation Weekend をベルリンで開催すること知った、ミュンヘンで Story Maker というPR会社を経営するBjoern Eichstaedt という知り合いから、とても面白いスタートアップがあるから是非、ピッチに誘った方がいい!と言って紹介されたのがInfarmだった。

Infarm は、Innovation Weekend Berlin 2015 で優勝し、尚且つ、毎年12月に東京で開催していた Innovation Weekend Grand Finale という、年間チャンピオンを決めるイベントでも優勝した!

当時のInfarm は、パイロット(試作機)を1台、METROという業務用のスーパーで稼働しているだけだったが、2020年7月21日現在、世界中で稼働している InStore Farm は「950台」にまでなった。

僕(ドリームビジョン)は、2016年からInfarmドイツ法人に出資しており、彼等の日本市場参入をサポートしてきたが、2020年2月、遂に日本方を設立し、代表取締役社長に就任した。そして、JR東日本からInfarm ドイツ法人にご出資いただき、子会社の紀ノ国屋Infarmを導入いただくことになった。5年前、ベルリンで初めてファウンダーたちに会った時には、想像さえしていなかった。

さて、そんなInfarm の日本法人を経営することになり、日本市場へのローンチの準備を進めている中で、感じたこと、学んだことを共有したいと思う。

1, 電気自動車やスマートフォンの企画開発・製造・販売と似たような事業構造。

Infarm の事業は「LEDと水耕栽培」により、屋内で野菜を育てて収穫し、販売することである。その野菜を栽培するには「InStore Farm」というハードウェアが必要だが、心臓部は「独自開発のソフトウェア」だ。Apple や Tesla のような事業構造に似ている。

Infarm の事業は、R&D, Crop Science, Supply Chain Management, Marketing/PR, Business Development, Corporate Sales, Finance & Accounting, HR, Academy, Installation Engineering, Software Development, Operation, New Market Expansion, etc.と様々な機能とタスクにより成り立っている。従って、何かひとつ、変更を加えようとすれば、それはすべての部署や機能に影響することになり、入念な業務設計と運用が求められる。Synchronized Swimming の如く、一糸乱れぬ演技が必要不可欠である!

2, Cosmopolitan culture(コスモポリタンなカルチャー)

Infarm では現在、日本を含めて計10ヵ国に進出しており、約600名近いスタッフが働いている。国籍は30ヵ国を超えており、社内公用語は「英語」である。但し、英語を母国語とする人は、20%程度だろう。

従って、お互いに「異なる」ことが前提であり、相手がどのような判断基準に基づいて発言しているのかを理解しようとする姿勢が求められる。一方、日本のような同調圧力はない。極めてオープンで風通しの良いカルチャーだ。

翻って、日本の多くのスタートアップのように、経営者も従業員も株主も顧客も、その殆どが日本人という環境では、ユニバーサル(グローバル)に通用する事業やプロダクトを開発することは難しいということを実感する。

3, Attracts global talents!(世界中から優秀な人を惹き付ける!)

とても嬉しいことに、Infarm には世界中から才能豊かな、そして、人間味溢れる素晴らしい方々が応募してきてくれるし、様々な会社がInfarmを導入したり、一緒に仕事をしようと言ってくれる。申し上げるまでもなく、とても光栄なことだ。

その理由は偏に、Infarm の哲学、理念、ビジョン、実現したい未来にある。

食品の30%以上が、生産後、我々の食卓に並ぶまでの間に「廃棄ロス」になってしまうという現実がある。その廃棄ロスにも「エネルギー」が消費され、CO2(温室効果ガス)が排出されている。それを放置しておいていいはずがない。

国連によると、2050年には、この地球上に「100億人」が暮らし、その「70%」が「都市」で生活することになる。究極の「地産地消」を実現するためには、「都会で野菜(農産物)を栽培し、都会で消費する」のが最も良い。

Infarm は、そのドン・キホーテ的とも言える遠大なビジョンの実現に向けて、既に世界10ヵ国に進出し、前述のとおり、1,000台近い InStore Farm を稼働させている。

崇高な哲学、理念、ビジョン、そして、JR東日本、紀ノ国屋という素晴らしいパートナーのご支援を頂戴し、Infarm 日本法人の経営を仰せつかっていることは、物凄い責任とプレッシャーではあるが、これほどやり甲斐のある仕事はない。

Infarm 日本法人は、僕を含めて、まだたった3人(3人目は、この春、大学を卒業したばかりの Insane Carzy に優秀な女性)だが、地球規模のビジョンを実現するための「仲間」を絶賛募集中である。

ご関心を持っていただけた方は、是非、ご応募いただきたい。

心より、お待ちしています!!