日本語と井上陽水。そして、入学式。

日本語と井上陽水。そして、入学式。

初めて買ったLPレコードは、井上陽水の「招待状のないショー」というアルバムだった。僕はそれほど熱心なファンというわけではなかったが、2つ下の弟が好きだった。

彼の音楽は独特で、メロディもさることながら、詞に綴られた日本語は文字通りに受け取ったのでは意味不明で、その世界観は実にミステリアスだ。彼の艶やかでハイトーンな声が、その世界観を見事に表現している。

先週の金曜日(4/12)、NHK23時から、2週連続で井上陽水の特集があり、忘れないようにGoogle Calendar に入力しておいた。

その日は、テレビ東京の「アド街ック天国」という番組で、東京は品川区にある戸越銀座という街を紹介していた。戸越銀座で生まれ育ち、今も戸越銀座の住人の、僕の大好きなチャーが出演していた。

以前にも同じようなことを書いたことがあるが、井上陽水にしてもチャーにしても、その才能は間違いなく世界レベルにあると思う。

でも、井上陽水の世界観は、日本語以外の言語では表現できないだろう。日本特有のカルチャーや社会構造、世相に関する理解がないと、その魅力は伝わらないと思う。

日本語という言語に加えて、ハイコンテキストな日本のカルチャーは、世界進出のボトルネックであり、魅力の源泉でもある。

偶然かもしれないが、同じくハイコンテキストな文化のフランス🇫🇷において、JAPAN Expo が尋常じゃない盛り上がりを見せているのは、洋の東西を超えて、伝わるものがあるのだと思う。

その点、スポーツは言葉やカルチャーのハンディは無い。音楽で言えば、パヒュームのようなビジュアルと音による表現の方が、カルチャーの壁を超えられるのだろう。とても歯痒い思いがする。

ところで、僕の盟友の大谷真樹さんが、インフィニティ国際学院という「旅する高校」を立ち上げた。そのインフィニティ国際学院の「DAY1」、事実上の入学式が先週の木曜日、六本木の国際文化会館で開催された。大谷さんは、入学式が嫌いだったらしい。

インフィニティ国際学院は、一年目はフィリピンで徹底的に英語を勉強する。2年目からは世界各地を旅しながら、自分の目で世界を学ぶ、ミネルバ大学の高校版のような学校だ。

日本が、失われた20年どころか、30年という不名誉な状況に陥ってしまっている原因は、間違いなく、教育にある。

大谷さんが20年前に作成した自分の人生のマイルストーンには、20年後に「学校を設立する!」と書いていたそうだ。予言は自己実現する!というらしいが、文字通り、それから20年後の2019年、大谷さんはそれを実行に移したのだが、本人は偶然、そのマイルストーンを書いた紙を見つけるまで、自分が書いていたことを忘れていたそうだ・・・。神がかっているね、大谷さんは!

話は変わるが、バブル経済の頃の入社式は、人それぞれの服装だったようだが、最近の入社式は、制服か?と見紛うほど、男女ともダークスーツらしい。それを異常だと思わない経営者こそ、異常であり、失われた30年の元凶である。ダイバーシティという言葉が白々しい。

今年の東大の入学式で「上野千鶴子」さんが述べられた祝辞が話題になっていたが、仰る通りだと思う。

僕は、昭和一桁生まれの両親の元、昭和38年に、福島県郡山市に生まれた。当時、尚且つ、地方都市では極めて珍しく、二親とも大卒で、母親もフルタイムで働いている家庭に育ったこともあり、結婚して子供を生んだ後も、女性が働くのは当たり前という価値観で育ったが、そのような価値観を持っている男性は珍しい存在だということを、上野千鶴子さんが指摘されたとおり、社会人になってから理解した。

また、そういう僕自身、完全に男女平等という意識があったのか?今もあるのか? 謙虚な姿勢を持ちたいと思う。

時代錯誤な状況に陥って30年も経ってしまった日本を救うべく、大谷さんが立ち上げたインフィニティ国際学院のナビゲーターなる役職を仰せつかっている僕も、微力ながら未来を担う若者の役に立ちたい。

そして、日本語という言語とカルチャーの壁を越え、日本がもう一度、国際社会で輝ける未来を築くべく、僕は僕の持ち場で、この先の人生をコミットしたい。

追伸:「光陰矢の如し、学成り難し」を身を以て実感している年齢になったこともあり、井上陽水のライブに行ってみようと思っている。

ベルリン&パリに向かう成田エクスプレスの車中にて。