初めてのフィリピンと「IGNITE」。

7月中旬、フィリピンで行われたIGNITE」というカンファレンスで、現時点で予定されている海外出張はすべて終了した。

人生初めてのフィリピン。1,000人を超える参加者の前で、錚々たるメンバーと一緒にパネルディスカッションに登壇させていただいたのは、とても光栄だった。

貴重な機会をご提供いただいたTECH SHAKEの足立さんPaolo Rentero氏Daisuke Ueno氏Kazuo Koike氏(dentsu X)をはじめ主催者の皆さんに、改めてお礼を申し上げたい。

ところで、成長著しい東南アジアだが、フィリピンのスタートアップシーンは、今ひとつ、テイクオフできずにいるらしい。

詳しくは、リブライトパートナーズの蛯原さんのブログやツイートを参照されたいが、フィリピンには「シリーズB」に至ったスタートアップが一社もないと聞く。

フィリピンと言えば、英語が通じる国という認識があるが、VC(ベンチャーキャピタル)から投資を受ける(受けられる)スタートアップとなると、フィリピン以外の東南アジア出身の創業者も、ビジネスレベルの英語を話す。そうでなければ、投資は受けられないだろう。つまり、英語が話せるというのは必要条件ではあっても、充分条件ではない、ということだ。

また、米国の大学に留学経験のあるケースも少なくない。

例えば、我々のパネルのモデレーターだった Manny Ayala 氏は、米国の名門 Yale University を卒業し、尚且つ、Harvard Business School でMBAを取得している。彼は、母国に対する愛情が深く(話していて、そのことが伝わってきた)、フィリピンに戻ってきて仕事をしているが、そのまま米国に留まったり、シンガポール等で仕事をしていたりと、フィリピンに戻らない人も少なくないと聞いた。

冒頭に書いたとおり、僕はフィリピンは初めてであり、東南アジアに関しても詳しくないので、良い機会だと思い、少し調べてみた。

フィリピン人口は「約1億98万人」、首都圏人口は約1,288万人(いずれも2015年フィリピン国勢調査)。GDP:3,049億USD(主なソース:世界銀行, 2016年)。1人当たりGDP:2,991USD(IMF)。

因みに、タイ人口は、6,572万人(2015年タイ国勢調査)、GDP:4,068億USD(主なソース:世界銀行, 2016年)、1人当たりGDP:6,033USD(2016年NESDB)。マレーシア人口は、約3,200万人(2016年マレーシア統計局)、GDP2,964億USD(主なソース:世界銀行, 2016年)、1人当たりGDP:9,360USD(IMF2016)。

1人当たりGDPは、マレーシア:9,360USDタイ:6,033USDフィリピン:2,991USDの順。しかし、人口は3ヵ国中唯一の「1億人超」。ポテンシャルはあるはずだ。

主な産業は、商業・飲食・宿泊:20%製造:19.6%農林水産:9.7%、その他サービス:33.1%となっている(出所:国連2016年)

フィリピン国家統計局によると、主な輸出品目「半導体」等の「電子・電気機器や輸送用機器」等。輸出先のトップは日本(2016年時点)で、輸出全体の20.7%。次いで、米国15.4%香港11.7%中国11.0%

また、近年は、コールセンター等の「BPO(Business Process Outsourcing)」が大きく伸びており、日本の外務省によると2016年1月現在、BPO従事者はフィリピン全就業人口の約56%を占めるという。

少々乱暴だが、要約すると、先進国に対する人件費の安さをもとにした受託型の産業構造であり、自社プロダクトを開発する企業や人材が、まだまだ不足しているということなのだろう。

しかし、そのような現状のフィリピンの首都マニラで開催された「IGNITE2018」は、開催2年目にして、フィリピンを代表する五つ星ホテル Makati Shangr-La1,000人を超える参加者を集め、とてつもない「熱気とエネルギー」、そして「希望」に満ち溢れていた。

日本人(登壇者)は、僕以外(順不同、敬称略)に、Mitsuru Kikunaga at PEAPRA, Takashi Kawabata at UZABASE, Kotaro Sasamoto at Dentsu Ventures, Takeshi Ebihara at Rebright Partners, Koichi Saito at KK Fund, Ryusuke Hirota at Spiral Ventures, Yuto Kono at Genesia Ventures, Takeshi Kitao at CyberAgent Ventures, Hajime Sato at Infocom, Kohki Sakata at IGPI Singapore が登壇されていた。

中でも、リブライト・パートナーズの蛯原氏のトークは、いつもながら理路整然としており、極めてシャープだった。

最後に、今回の貴重な機会を下さった足立さんとの出会いを紹介したい。

あれは、僕がサンブリッジ グローバルベンチャーズを経営していた2013年か2014年だったと思う。大阪市のグローバルイノベーション創出支援事業という事業を受託し、あるイベントを開催していた時だった。

当時、スペインのMBA留学中だった足立さん(神戸市出身)は、一時帰国中だったのだと思うが、イベントの開始前だったか後に、僕のところに来られて、将来はスタートアップ関連の仕事をしたい、という話をされたと記憶している。

数年後、足立さんから、facebook で連絡があり、今はフィリピンでビジネスをしており、スタートアップ関連メディアの立ち上げやイベントを企画しているという話を伺った。

昨年も熱心にお誘いいただいたが、デング熱経験者の僕は、夏場のフィリピンというだけでビビってしまい、何だかんだと理由をつけ、イベントへの参加は見送っていたが、今年もまたお声がけいただき、勇気を出して参加した。

僕はサンブリッジ グローバルベンチャーズ時代、Innovation Weekend というイベントを運営していたのでよく分かるが、1,000人を超えるイベントを開催するのは、その集客は勿論、当日の運営を含めて、並大抵の努力とエネルギーではない。

Innovation Weekend を日本発のグローバルイベントに育てる!という目標は残念ながら実現できなかったが、足立さんはきっと、IGNITE をフィリピン発のグローバルイベントに育てていくだろう。

甚だ微力ながら、その大きな目標の実現に、少しでも協力できたら、そんな幸せなことはない。

頑張れ、足立さん!!