「国税庁」と「シェアリングエコノミー」。

失意のどん底だった2009年の夏。法政大学経営大学院の小川教授からの一本の電話で、その翌年の4月から同大学院(MBA)イノベーション・マネジメント研究科(通称イノマネ)で、僕の起業経験、その中でも「失敗から学んだこと」をベースに、イノベーションや起業について教えている。早いもので、8年目になる。

僕が関与していた一昨年の学生たちの一人の「小林大亮」さんがこの夏、「シェアードブルワリー」なる「ビールの醸造所」を八王子にオープンする。

彼は以前、今話題の「築地市場」で働いており、法政大学MBAを修了した後は「農業をベースにした事業」か「マイクロブルワリー(プチ醸造所)」を立ち上げたいと考えていた。僕は彼に対して「どちらかに決めないといけない」と言ったところ、彼は趣味でやっていた「ビールもどきの飲料を自宅で醸造する」という行為を事業にすることを選択した。

日本の法律では「お酒」を個人で醸造することは禁じられている。それは、誰もが知っていることだ。

お酒を醸造することのライセンスを取得するには、国税庁が定める「一定量以上の醸造量」を確保する必要がある。その容量は忘れたが、とても個人で達成できるリッター数ではない。

しかし、小林さんのように、出来ることなら「自宅でビールを醸造したい」と思っている人は一定数いるという事実を聞き、であれば、僕は彼に「小林さんが国税庁が指定する容量を満たす『醸造所』を立ち上げ、それを他の人達と『シェア』すればいい」と提案した。

「シェアードブルワリー事業」である。

彼は僕の提案を受け入れ、イノマネ修了後、実際に「シェアードブルワリー事業」開業に向けて準備を始めた。会社を設立し、物件を借り、醸造に必要な機材を「輸入」する手続きを開始した。当然、それなりの「資金」が前倒しで出ていく・・・。

僕をイノマネに拾ってくれた小川先生がブログで詳細に記述されているので、興味のある方は是非、読んで頂ければと思うが、起業経験が無い彼には、相当なプレッシャーだったと思う。

イノマネには、MBAと併せて、中小企業診断士の資格が取れるコースもあり、修了後、中小企業診断士として仕事を始める人はそれなりにいるが、彼のように実際に「起業」する人は、殆どいない。

そういう意味で彼は、稀有な存在であり、パイオニアと言ってもいい。是非、成功してほしい。

僕には、彼の背中を押した責任もあり、先日、少額だが、第三者割当増資を引き受けた。

今年の夏の間には、彼の「シェアードブルワリー」で醸造されたビールが飲めるらしい。八王子まで行ってみることにする。

皆さんも是非、飲んでみて欲しい。そして、ご自分のビールを造ってみて欲しい!!