それでも、New York が好きな理由。

10ヶ月ぶりの New York。初めてこの街を訪れたのは、1986年2月。大学4年生の時だった。不良?外国人が集まる東京のバーで知り合ったアメリカ人(当時は学生)の友人宅に約1ヶ月泊めてもらって、昼夜なく、マンハッタンの街を遊び歩いた。あれから、29年。かれこれ20回以上、この街を訪れている。

New Yorkの魅力は大きく2つ。ひとつは、よそ者を受け入れること。この街には「外国人」という概念が存在しない。世界中からユニークで魅力的な人間が集まってくる。挑戦者は誰でも歓迎する。但し、ビジョンと野心を持っていない人間には厳しい街でもある。

2つ目は、上記と重複するが、その独特なカルチャー。ここ数年は仕事柄、シリコンバレーの方が行く機会が多いが、New York には、その産業的バックグランドのせいで、金融、広告、デザイン、アート、ファッション、リテイル、不動産等、Tech-savvyやGeek以外の人間も受け入れる(むしろその方が多い)多様性がある。

一方、若い頃は NewYork に傾倒していた僕も、ここ数年、Moscow, St. Petersburg, London, Paris, Singapore, Vietnam等、様々な国や都市に行くようになり、London や Paris, St.Petersburg等の魅力を理解するようになったせいか、以前ほど盲目的にNew York にハマっているわけではない。

そのNew Yorkだが、今回の訪問は、僕にとって特別な意味がある。

2011年5月に、ベンチャーナウの竹内さん、ネットエイジの西川さんと一緒に始めたピッチイベント「Innovation Weekend」を、初めて、ここNew York で開催する。異国の地で、尚且つ、英語で、僕たちがイベントを主催するのである。1986年に初めて New York に来た時、どうしてそんなことが想像できただろうか?

お陰様で20社以上のスタートアップがピッチへ応募してくれ、その中からベストな7社を選出した。そして、オーディエンスとして登録してくれている人は150人を超えた。

ところで、アメリカに来る時は特に「時差ボケ」が酷い僕は、着いた初日はアポはいれず、いつもはゆっくりと過ごすのだが、50歳を越えて、人生が残り少なくなってきたと感じているからだろうか?今回は初日からアポを入れ、尚且つ、夜は初めて会う方との会食まで入れた。今日も4件、明日は5件、アポを入れている。

僕の話だけでは申し訳ないので、この2日間で学んだことを紹介したい。

New York初日は、Brooklyn にある Made in NY Media Center というインキュベーション施設を訪問した。

たしか、2年前にオープンしたと言っていたと思うが、ここ数年のNew York は、その理由は忘れたが、Film Maker(映画製作者)、シナリオライター、ジャーナリスト、デジタルコンテンツ・クリエイター等が、Los Angeles や San Francisco等に流出してしまう傾向にあったらしく(一方、I.T.系のスタートアップは物凄い勢いで増えている)、それに危機感を抱いたMichael Bloomberg NY市長が助成金を出し、NY Media Center(クリエイター達のためのインキュベーション)を運営する組織を募集したという。

僕がプロデューサーとして関わっている「大阪GI(Global Innovation)創出支援事業」や、London Tech Cityというスタートアップのムーブメント(僕は London Tech City Global Fellowのメンターを仰せつかっている)とその思想や目的は同じである。

世界中の「都市」が、いかにして若い優秀なタレント(人々)を惹きつけるか?(誘致するか)を競っているということだ。

もうひとつ、Brooklyn Boulders という極めてユニークな施設を訪問した。Bouldersは「大きな岩」という意味で、「屋内ロック・クライミング」施設である。

古い倉庫を改造した施設内には、高いところで、5~6メーターはあろうかという壁が作られており、本格的なロック・クライミングを体験(練習)できる。年甲斐もなく、初めて挑戦してみたが、なんとか初心者コースはクリアできたw。

Brooklyn Boulders は、ボストンにも進出しており、TEDx Bostonの会場にもなっており、最近、注目の施設のひとつらしい。

彼らは、ロック・クライミングを単なるスポーツとして捉えているのではなく、人と人とを繋ぎ、コミュニティを作るための触媒として位置づけている。

例えば、ロープにぶら下がって登るロック・クライミングはペアを組んで行うが、相手が落ちれば命の危険さえあるわけで、それがお互いの信頼感を生み、彼らのメンバー(登録者)の中には、一緒に起業したり、結婚した人達もいるらしい。

NY Media Center で案内してくれた女性が言っていたが、New York では、大手の映画制作会社や広告代理店等に務めていることができる人達でも、様々なバックグランドの人達との出会いと刺激を求め、敢えて、組織を飛び出し、NY Media Centerのメンバーになっている人も少なくないという。

NY Media Center のメンバーも、Brooklyn Boulders のメンバーも「同じ会社」という絆ではなく、別の何かで繋がっている「コニュニティ」を求めているということだ。

そのようなトレンドは東京でも感じらなくもないが、まだまだ「就社」意識が強い日本と、雇用の流動性が高い New York(米国)では社会的バックグラウンドが異なり、また、そもそもが移民の国である米国と日本では、人々が置かれている環境も価値観も異なるということだ。

話は変わるが、ここ数ヶ月、仕事だけでなく、プライベートでも多忙を極めており、とにかく時間がない。

時間に追われている時に、子供に騒がれると、とんでもないことになるという理由で、僕はついつい、次男(3歳5ヶ月)に甘くなる。

長男(小4)は、そのことに気づいており、「お父さんは、◯◯に騒がれるのが嫌で、そういうふうにするんでしょう?」「◯◯が悪いのに、僕のせいにしないでよ」「そんなに甘やかしていたら、◯◯はとんでもない大人になってしまうでしょう」とクレームをつけてくる。彼の主張は正しいことが多い。

次男は、ある意味、賢い人間で、自分の形勢が悪くなると、とにかく「泣く」。そうすれば、自分の主張を聞いてもらえると分かっているのである。

あまりに忙しいせいで、子供たちの教育が疎かになってしまっているのでは、本末転倒である。

New York からiPhoneの「Face Time」で電話をし、子供たちの顔を見れば、時差ボケも飛んで行くし、家族は「血の繋がっているコミュニティ」とも言える。

Innovation Weekend New York の会場スポンサーである「WeWork」もサービスとしてデスクやMTGルーム、Wi-Fi、イベントスペース等を提供しているが、ことの本質は「コミュニティ」であり、みんな一緒に頑張る仲間を必要としているのである。

パーソナルな時代になればなるほど、人々はコミュニティ(自分の帰属場所)を求めるのだろう。

僕たちもNew York のスタートアップコミュニティに溶け込めたらいいな・・・。