「ポジティブな修羅場」。

つい2ヶ月前まで記録的な「猛暑」に悩まされていたことが嘘のように、ちゃんと「冬」は来るらしい。

自宅のベランダ越しの借景には、黄色く色づいたケヤキや赤く染まった桜の木が見える。

ところで、いつから読み始めたか?憶えていないが、524ページというページ数に加えて専門的な内容で、かなり時間がかかったが、ミンツバーグの著書(かなり刺激的なタイトルである)を先週、ようやく読み終えた。

読み進めるには根気がいるが、経営に携わっている(&携わった経験のある)方、部下を持っている方には是非、読んでみていただきたい本である(そのような経験がないと、得るものが少ないと思う)。

さて、ミンツバーグ教授の後は、法政MBAでお世話になっている高田朝子准教授(組織論がご専門)にご献本をいただいた著書(人脈のできる人~人は誰のために「一肌ぬぐ」のか?~)を読了した。

「人脈」というタイトルから、正直、あまり気が進まず、頂いたままになっていたのだが(高田先生、ごめんなさい!)、ミンツバーグの本を読みながら、マーケティングやファイナンス、テクノロジーだけでなく、何をするにしても「組織」のあり方を学ぶ必要があるという至極当然のことに思い至り、ご献本いただいた著書を捲ってみた次第である。

「はじめに」を読んでいる間は、あまり興味を持てずにいたが、第一章の終わりあたりから、高田先生が何を言いたいのか?ご自身の研究成果の何を伝えようとしているのかを理解でき、その後は一気に読み進めた。

詳細は高田先生の本をお読み頂くとして、「人間関係」を、「自分が相手を助けることができる」という自信(その有無)と「相手が自分を助けてくれる」という自信(その有無)という2軸で整理されている。

前者を縦軸、後者を横軸とすると、左上から時計回りに「目下の知り合い(左上)」「対等人脈(相互の信頼に基づく関係/右上)」「シンデレラ人脈(親分・子分の関係/右下)」「脆弱な知り合い(左下)」という4つの象限に分けられる。

高田先生が約70人の方々へインタビューされた結果、「人脈」(上記の象限でいう「対等人脈」)というのは、「困難な仕事や局面を共有し、共に乗り越えること」で出来上がることが分かったそうだ。

また、その関係は、相手に助けられたり、相手を助けたりという「相互扶助的」(最近の政治風に言えば「戦略的互恵関係」?)なもので、尚かつ、長期的な関係であるという。

たしかに、自分自身の経験を振り返ってみても、相手が自分を必要とする時には喜んで協力したいと思っている相手というのは、何らかのシンドイ仕事を一緒にやったことのある人が殆どである。

更に言うと、30代半ばまでの僕は、高田先生のマトリックスでいうと「右下」の象限(シンデレラ人脈)、つまり、自分よりも「年上」且つ「社会的地位の高い人」に可愛がっていただいたことで何とかやって来れたが、インタースコープ創業前後あたり以降に知り合った人(一緒に仕事をした人)で、今も尚、関係が続いている人(&続けたいと思っている人)は、「右上」の象限(相互の信頼に基づく関係)に入る人が殆どである。

つまり、僕の中に今も残っている「充実感」や「達成感」、そして、これからも大切にしたいと思っている人達は、いずれも、高田先生が著書の中で定義されているところの「修羅場(困難な仕事)」をくぐり抜けたことによってのものである(と気がついた)。

これからの人生で、もう一度、出来ればそれ以上、「ポジティブな修羅場」に出会いたいと思う。