郵政問題の本質。

日本郵政の西川社長が辞任(事実上の更迭)し、後任社長に「元大蔵省事務次官」の斎藤次郎氏が決まったという人事には、言葉が無かった。

脱「官僚支配」を錦の御旗にして、先日の選挙を闘ったのではなかったか?

人間は、期待値とその結果のバランスで、満足したり、失望したりするわけだが、「308議席」という「高い期待値」を背負った民主党は、はたして、その期待値に応えられるだろうか?

少なくとも僕は、失望しかけている。

郵政民営化の論点は、

1. 巨大な郵便貯金の存在意義:

・郵便貯金は以前、大蔵省資金運用部にすべて預託され、「財政投融資」の資金として活用されていたが、その巨額(300兆円)さ故に、民業圧迫だという点。

・2001年に上記の制度が廃止され、2007年に民営化されるまでの間は、日本郵政公社により、一般の金融市場において運用されていたが、民営化時点で全体の「約8割」が「国債の運用」に充てられており、「赤字国債の財源」にされていた点。

2. 収益構造と人員構成の歪み:

・郵政全体で「24万人」いる従業員の「88%(212,000人)」が「郵便事業」に従事しているが、その売上は2兆1000億円と、連結売上高の20%にも満たない。つまり、郵政事業の利益の大半は「郵貯事業(簡保を含む)」が稼いでいる。

・また、インターネットの出現により、eメールやウェブサービスの使用率が高くなり、また、規制緩和による「メール便」の出現等により、いわゆる「郵便」ニーズは激減してきており、このままでは、いずれ事業として立ちいかなくなる点。

・どう考えても「赤字」にならざるを得ない地域を含めて「全国均一サービス」を維持するために、「信書(僕には、この定義もよくわからない)」に関して独占を認め、その利益で赤字を補てんしてきているらしいが、それも上記の理由により、時間の問題で機能しなくなるだろうと思われる点。

だと、僕は理解している。

しかし、この「構造的問題」を、有権者の何割が正確に理解しているだろうか?

そういう僕も、今回の郵政問題を受けて、ネットで色々と検索して勉強し、上記の理解に至っている。

と考えると、僕らの母親が、この問題を正確に理解しているとは思えない。いや、100%あり得ない。

有権者に、政策の是非を判断する知識がない(不十分)なことが、悩ましい点である。

ところで、僕の記憶では、小泉さんは、いわゆる「郵政選挙」の時に、「公務員の数を減らすためには、24万人もいる郵政事業の民営化が最もインパクトがある」と、街頭演説で話していたが、それは、問題の本質を街角の人々にきちんと伝えることの難しさを理解しており、であれば、「数」を伝えた方がわかりやすいだろうと考えてのことだったのではないかと思う。

そして、小泉さんの持つ稀代のエンターテイナー性が、国民の支持を取り付けたということだ。

いずれにしても、「構造改革=格差社会」という短絡的な主張で物事を片付けようというのは、どう考えても問題である。

尚、郵政問題を詳しく理解したい方は、こちらをご覧いただければと思う。

http://agora-web.jp/archives/769808.html
http://news.livedoor.com/article/detail/4407347/