「刑務所」も金融商品になる。

マネックスの松本さんがご自身のブログで「ここ1ヶ月で世界の景色が変わった」と書いているが、金融業界にいる方にとっては「天変地異」が起こったとでもいうような、とても大きな地殻変動だったのだろう。

僕は今まで、商社、市場調査、コンサルティング、広告代理店、ネットベンチャー、ベンチャー投資といった世界に関わって生きてきたが、例えば、「丸紅」は救済されて「三井物産」は潰されたとか、「東急エージェンシー」は救済されて「読売広告」は潰されたとか、また、ビジネスとしてはあまり関わったことがないが、「東急百貨店」は救済されて「高島屋」は潰されたとか、ということが起きたら、さすがに日本社会は混乱するだろう。

そういう「ルールが分からない」という事態が、人々をパニック状態にさせ、「投げ売り=信用収縮」を引き起こしたのだと思う。

余談だが、「アナロジー(比喩)」は、物事を理解するのに有効である。

さて、これは、ある方から聞いた話しだが、「経済合理性」を「金科玉条」とする米国社会では「キャッシュフロー」を生んでいるものであれば、何でも「金融商品」になるそうだ。

今日のエントリーのタイトルに書いたとおり、「刑務所」も「不動産REIT」になるのである。

そして、これは、極めて「手堅い」投資案件と言える。そう、犯罪は減らないし、政府は「予算」を削ることがない(削れない)からだ。

また、「レバレッジ」という概念とその機能も、大きな役割を果たしている。投資銀行は、そのお陰で「大きな利益」を産んできたわけである。

仮に、100億円の自己資金があり、それを元手に300億円の「借金(担保価値)」をし、ある刑務所を購入するとする。尚かつ、世界的な「カネ余り」で「低金利」の現在、金利2%で300億円を調達したとする。

仮に、刑務所という「金融商品」が年間「10%」の利回りで回るとすると、400億に対して「40億円」の利益を産む計算になる。しかし、自己資金は「100億」なので、表面的には「40%」の利回りとなる。金利を差し引いても「34%」で回ることになる。

これが「投資銀行」の利益の源泉だったわけである。

しかし、それは「時価会計」の元、元本が割れない、つまり、安定しているという「前提条件」の元でのロジック(論理)である。そう、ロジックというのは絶対的な正しさではなく、ある「前提条件」のもとでの話なのである。

これも余談だが、ロジカル・シンキングが出来ればビジネスが出来る、と考えるのは、早計である。むしろ、これからは「FEEL(感受性)」の時代。MBAに加えて、「MFA(Master of Fine Arts)」的能力が必要である。

話しを元に戻すと、「元本(担保)価値」が割れない(目減りしない)ということが、「サブプライム・ローン」の前提条件だったわけである。

つまり、家賃並みの「金利」だけ払ってくれれば、元本は返済しなくてもいいよ、というのがサブプライム・ローンの正体であり、それを「金融商品」として売っていたわけなので、返済が滞り始めて、元本価値が割れれば、高利回りの「前提条件」が崩れるし、バランスシート(資産価値)が痛む、というわけである。

米国では、過去18年間、不動産の「値上がり」が続いてきたらしい。

そのトレンドを活かし、サブプライム・ローンで住宅を「買った」人達が、数年後には、価格が上昇した「住宅」を売って、さらに高額な住宅に住み替えるということで、転売によって市場が機能していたわけだ。完全な「不動産・金融バブル」である。

尚かつ、抵当に取っている住宅の価格が上がり、いわゆる「含み益」が発生した場合、その「含み益」を担保に「ローン」を貸し出していたらしい。「レバレッジ、ここ極まれり」である。

そういうのを「砂上の楼閣」というのだろう。

しかし、である。

マネックスの松本さんが言うとおり、自動車ローンも含めて、すべては「信用経済」であり、それ自体が「レバレッジ」効果である。

それが機能しなくなれば、景気が悪化するのは「自明の理」でもある。何事も「ゼロ100」ではなく、「程度問題」ということだ。

今年は、たしかに、世の中の「景色が変わった」と思う。では、世界は今後、どのような景観になるだろう。

一時的にはトンネルに入るかもしれないが、その「トンネル」を抜けた時には、新しいパラダイムが拓けていると思う。

僕は、その「未来」に期待している。

そして、その未来の一翼を担う人間になりたいと思っている。