「デジタルガレージ」という「文脈(コンテクスト)」。

デジタルガレージ(DG)は、林さんと、JOIこと伊藤穣一氏によって設立された、名前のとおり、常にインターネットの最前線を行くベンチャー企業である。

僕の記憶が正しければ、DGの設立は1995年。今年で13年目になる。

そのDGに関する特集記事が、昨日の日経ヴェリタスに見開きで掲載されていた。林さんたちの顔写真入りで、とてもよいIRになったと思う。

林さんと初めてお会いしたのは、2003年12月だったと思う。ある証券会社の方の紹介で、富ヶ谷にあるDGのオフィスを訪ねた時だった。

デジタルガレージという会社や林さんやJOIのことはメディアを通じて知っていたが、実際に林さんに会ってみると、思ったよりも「気さく」な人だった。

そんなことでご縁ができたわけだが、その後、2004年4月、当時の株主だったベンチャーキャピタルが保有するインタースコープ株式の一部をDGに譲渡してもらい、DGにインタースコープの筆頭株主になってもらうことになった。

2004年という年は、僕にとっては、忘れ難い年である。

インタースコープを創業する前の僕にとって、「JOI」は憧れの人でしかなかったが、その「JOI」と一緒に仕事をする機会に恵まれた。

それは、テクノラティという「ブログ検索エンジン」運営会社を日本にもってきて、DGとの合弁会社を設立しようというプロジェクトだった。テクノラティ本社のあるサンフランシスコに出張に行ったり、日本でのビジネスモデルを議論したりと、「JOI」との仕事はとても楽しかった。

そんなこともあり、僕は、林さんには、とても感謝をしている。また、是非、ゴルフでもご一緒させてもらえればと思っている。

さて、そのDGであるが、株式市場からの評価は決して良いとは言えない。

日経ヴェリタスに書いてあるとおり、子会社の「カカクコム(価格.com)」の時価総額よりも、親会社であるDGの方が時価総額が低いのである。林さんにとって、このことは、とても大きな精神的な負担になっていると思う。

このことも含めて、事業構造と財務体質を改善するため、DGは大きな構造変革を行う意思決定をした。興味のある方は、DGのIRページをご覧いただければと思うが、2年間続けた「純粋持株会社」としての「連結経営」に終止符を打ち、DGでいうところの「ソリューション事業」をDG本体に統合して、DGを「事業持株会社」とすることにした。

株式市場が、そのことをどう評価するか? DGにとって、とても大事な局面を迎えている。

さて、そのDGであるが、同じネットビジネスとは言え、ECやオンライントレード(オンライン証券)などのビジネスモデルと比較すると、分かり難さは否めない。

しかし、それは、DGのビジネスモデル(事業構造)の特徴である。

林さんの言葉を借りれば、DGは創業以来、常に「波打ち際」を走り続けており、つまり、ネットビジネスの最先端を模索し続けるのが「DGらしさ」であり、事業ポートフォリオに占める「研究開発・先行投資」が多い。その結果、数多くの「日本初」というビジネスを世に送り出してきている。

もうひとつ、DGがユニークなのは、林さんのいう「コンテクスト(文脈)経営」にある。

「人と人」や「事業と事業」「会社と会社」というように、その時代の求める「何か」を敏感に察知し、新たな「関係=価値(文脈)」を創造するという、その経営なり、事業運営のあり方そのものが、DGらしさなのだと思う。

その過程においては、失敗することもあり、人が集まっては離れて行く(僕もそのひとりである)ということが繰り返されるのだろうが、それが、ネットビジネスにおける「人脈(コンテクスト)」を創造することにも繋がり、それが、また、新しい「文脈(コンテクスト)」を生んで行くのだと思う。

人によっては、「DGは何をやろうとしているのか分からない」と映るようだが、林さんやJOIたちがやろうとしているのは、大きくはインターネットという領域において、「次の時代」が求める「コンテクスト(様々な関係)」を創っていくことであり、常に「新しい社会的価値」を創造していくということのように思う。

「定量的(時価総額)」には苦戦をしているかもしれないが、そこには「定量化できない価値」があると思う。

これからも、「コンテクスト経営」という「挑戦する生き方」を続けて行って欲しい。