「時価総額の意味」を考える。

先週の日経新聞に、セブン&アイ・ホールディングスが「ロフト(生活雑貨専門店)」を連結子会社化するという記事が掲載されていた。

正確には、セブン&アイ・ホールディングスの全額出資会社で「ロフト」の筆頭株主である「ミレニアムリテイリング」が「約100億円」を投じ、森トラストとイオンが保有する株式(計35%)を取得する。その結果、ミレニアムリテイリングはロフトの「70%超」の株主になる。

ロフトの2006年2月期は「売上:556億円」「経常利益:11億円(経常利益率:1.98%)」。今年2月期も「増収・増益」が見込まれているらしい。

新聞記事から計算したロフトの「時価総額」は「286億円」。

今年度(2007年2月期)の予想数値は掲載されていないので予想PER(株価収益率)は分からないが、2006年2月期の経常利益(11億円)から(実効税率50%で)計算すると、PERは「52倍」である。

因みに、主要な「流通系企業」の先週金曜日(2007.02.23)時点での「時価総額/PER/PBR(純資産倍率)」を見ると、以下のとおりである。

セブン&アイ・ホールディングス: 3兆7,646億円/38.58倍/2.08倍
イオン: 2兆325億円/64.13倍/2.7倍
ダイエー: 1,662億円/0.71倍/2.64倍

ローソン: 4,843億円/21.48倍/2.47倍
ファミリーマート: 3,263億円/22.93倍/1.92倍

伊勢丹: 5,129億円/27.39倍/2.66倍
高島屋: 5,477億円/24.27倍/2.06倍
三越: 2,910億円/30.98倍/1.8倍

ここから、ロフトはとても高く評価されていることが分かる。

次に、ネット系新興企業のそれらの指標をチェックしてみた(2007.02.23現在)。

楽天: 8,512億円/308.45倍/4.51倍
ディー・エヌ・エー: 2,072億円/132.1倍/17.24倍
サイバーエージェント: 792億円/18.36倍/2.47倍
オプト: 361億円/115.76倍/4.08倍
マクロミル: 435億円/42.72倍/10.27倍

因みに、経常利益(連結)が最もロフトに近いのは「マクロミル」と「オプト」で、マクロミル:16.5億円(売上:52億円/経常利益率:31.7%)、オプト:6.58億円(売上:294億円/経常利益率:2.24%)である。

ロフトの経常利益はオプトの「1.67倍」であるが、時価総額は「79%」である。同じPERで計算すると600億円となる。

業界の成長性の違いにより、ネット系の新興企業の方が「時価総額やPER」が高いのは理解できるが、その企業が持つ「社会的価値」は、はたして「時価総額」に連動するだろうか?

ロフトは「PBR(純資産倍率)」が出ていないので、その額は分からないが、ネット系企業と違い、店舗や在庫といった「現金化しやすい資産」を持っていることや「従業員数」および「取引先数」等を考えた場合、時価総額では計れない「社会的価値」があるように思う。

「時価総額」は、あくまで、株式市場に参加して「株の売買により利益を得たい人」にとっての「価値」であり、それイコールのその企業の「社会的価値」ではないと思う。

追伸:それにしても、DeNAの「PBR」には脱帽である。マクロミルも、時価総額がピークの時は、PBRが「20倍」を超えていた。