金儲けって悪いことですか?

村上ファンドの村上氏の言葉である。

僕は勿論、お金儲けは悪いことだとは思わない。僕もより多くのお金が欲しい。

しかし、何のために「お金儲け」をするのか? それによって、その人の価値が決まると思う。

ホリエモンこと堀江さんは、「世の中、カネで買えないものはない」と言ったらしい。

本当にそうなのか? 少なくとも僕はそうは思わない。

日経新聞の別冊「THE NIKKEI MAGAZINE(日経マガジン)」の2月号に、「清富の実業家 大原孫三郎の贈り物」という特集があった。

大原孫三郎は、クラレクラボウ中国銀行の「創業者」として知られているが、実業家としての顔の他に、東洋一の病院を目指して設立した「倉敷中央病院(岡山県倉敷市)」や大原美術館「」、また、現在の「法政大学大原社会問題研究所」の元となる「工場保健衛生研究所」や「果実王国」となった岡山県の技術基盤を創ったと言ってもよい「大原農業研究所(現在の岡山大学資源生物化学研究所)」を設立したりと、いわゆる「ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)」的な側面を持っていた。

その一方、奥さんが46歳の若さで亡くなった後は独身で過ごしたものの、「芸者の愛人に入れあげて大変だった時期もある(彼の孫にあたる謙一郎氏の弁)」らしく、「聖人君子とは言えない人物だった」ようである。とても「人間臭い」人だったのだろう。

その大原孫三郎氏は晩年、長男(謙一郎氏の父)に「わしの人生は失敗の連続だった」と語っているという。

これだけのことをやりながら、何が不満だったのだろう?と誰もが首を傾げたらしいが、「下駄と靴と片足ずつ同時に履けると思ったが、この考え方は無理だったことを知った」という自省の弁も伝えられているという。

「未完」の想いを言い遺してこの世を後にした彼は、「私は種を撒いただけだ。どう育てるかは、若いお前たち次第だ」と言いたかったのかもしれない(特集の筆者/安西巧氏)。

「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」。「高貴な人物には、その地位に応じた社会的責任を負う義務がある」というフランスの名言で、この特集は締めくくられている。

「しかし、昨今の日本の成功者たちは掲げる志を失ってしまったかのようにみえる」という言葉が付け加えられている。

大谷さんが言うように、投資家なら誰でもよいということではない。

「理念なき繁栄は滅びる」のである。