「下流社会」~新たな階層集団の出現~(三浦展)

つい先日のエントリーでも引用した、三浦展氏が2005年9月に出した「下流社会 新たな階層集団の出現」を読んでいる。とても興味深い本だ。

僕はドリームビジョンを創業してからこの10ヶ月、経営に関する本はそこそこ読んできたが、統計やマーケティングに関する本は殆ど読まなかった。そういう意味で、この本は久しぶりに読む「僕を育ててくれた業界」の本である。文調や出てくる「単語」に、懐かしさを感じる。

まだ、途中までしか読んでいないので結論めいたことは言えないが、三浦氏が言いたいことは、この国(日本)の未来を担う「若者」の間において「経済的」な「上昇」を望まない層が出現し、尚かつ、固定されてしまうこと、意識の面においても社会の底辺に甘んじることを善しとする人口ボリュームが増えることに対する警鐘なり危機感なのだろう。

ところで、僕は1986年、22才の時に、初めてニューヨークを訪れた。

その時に感じたことは、(その時点から)15年後の「東京の環七以内」は、間違いなく、「今(その時点)のニューヨークと化すだろう」ということだった。つまり、経済的且つ知的階層が「2極化」し、犯罪が多くなり、治安維持のための社会的コストが増大するということだ。結果的に、東京都心部は、そのような傾向を見せている。

それは何故か? 今の日本社会、特に、都会では、自分が持って生まれた「アセット(能力資産)」では、報われない、と思う人が増えているからだと思う。

もうひとつ、僕が初めてニューヨークを訪れたことにより、予見したことがある。

それは、日本において「出生率」が低下するだろうということだ。

それは何故か?というと、高度成長期のような万人が将来の所得上昇がほぼ約束されていた時代は過ぎ去り、将来の所得は「保証されない」時代が来るだろうということを、ニューヨークの人々と交流することで感じたからだ。

そういう僕自身、将来の所得が「右肩上がり」で上昇していくなんてことは、どうやっても信じられず、子供を設けることを、40才過ぎまで躊躇してきたという事実がある。

話しは変わるが、僕の妻の父親は、今話題の「不二家」の「ペコちゃん人形」の作者だが、彼は「お金や名誉」には全くと言って良いほど執着しなかったらしく、お酒を飲ませてもらえれば仕事をしてた人だったため、彼女の家の経済状態は、常に不安定極まりなかったようだ。そのせいか、夫婦だけなら構わないが、子供には絶対に貧乏はさせたくないという強い思いが、彼女にはある。

統計的事実として、東京大学合格者の家庭の平均世帯年収は「1,016万円」である。

その事実をどう受け止めるのか? 日本の未来を決めることである。

三浦 展
下流社会 新たな階層集団の出現