「見返り」のない愛情。

経営には「愛」が必要だ。

この話は、今となっては僕にとって無くてはならない存在となっている、庄司さんという伊藤忠商事に勤務する方から聞いた話しである。

彼は僕と同い年だが、28才の時、伊藤忠商事が出資している会社(ハンガリーにある会社)の社長として赴任したそうだ。僕が初めて起業したのも28才の時。彼とは不思議と人生の節目が共通している=縁がある。子供が生まれたのも同じ年だ。

赴任したのは小さな会社だったそうだが、若くして社長を務めるということで、当時お世話になっていた本社の役員の方に挨拶に行った際に言われたのが、「経営は愛だ」という言葉だったという。

彼が赴任した会社は「赤字」だったらしいが、庄司さんが赴任した一年後に、見事に「黒字化」した。

彼が経営していた会社には未婚の母の女性がいて、彼がその彼女に「お子さんの誕生日でしょ!!」と言って、帽子をプレゼントしたことがあったという。

彼女はそのことをずっと覚えていて、庄司さんが企画して開催した「クリスマスパーティ(黒字化を祝っての従業員の慰労会)」の席で、「Mr.Shoji, うちの子は、今もあの帽子を喜んでかぶっています。本当にありがとうございました」と言ったそうだ。

庄司さんは、その時初めて、赴任前に本社の役員の方に言われた「経営は愛だ」という言葉の意味が分かったという。

ところで、僕は経営者としては、まだまだまだまだ未熟者であるが、2つだけ、とても小さなことだが、自分で誇れることがある。

ひとつは、インタースコープを創業して2年目に、僕が発案して、毎月、その月に生まれた従業員の方に対して「バースデイカードと誕生日プレゼント」をあげることを始めたことである。

プレゼントの方は、従業員数が増えたことにより、コストの問題と総務のスタッフの負荷を考えて途中で止めてしまったが、バースデイカードを贈ることは、今も続いている。

もうひとつは「ウエルカム・カード」という仕組み。

これは、受付のところにコルクボードだったかマグネット式のボードを置いて、来社される方の「お名前」と一緒に「内線何番をお呼び下さい」というカードを貼っておくもの。お客様が迷わなくて済むようにするためのものである。

僕の立場上、社内への提案は、ある女性社員の名前でしてもらったが、僕が発案したものだった。

もっと正確に言えば、僕がその女性社員と一緒に、ある会社を訪ねた時に、そのようなカードが貼ってあり、これは素晴らしい「ホスピタリティ(おもてなし&気配り)」だと思ったので早速、社内に導入したということである。

ドリームビジョンはまだまだ数人の会社でそのような必要はないが、僕が常々社内に言っているのは、そういう「ホスピタリティ」である。

どんなに優秀でも頭が良くても、そういうホスピタリティがない人とは、僕は仕事をしたくないし、採用するつもりはない。

そして、僕自身が、一緒に「井戸を掘ってくれている人達(一緒に働いてくれているスタッフと僕を信じて出資してくれた人達)」に感謝する心を持ち続けたいと思う。