ソフトバンク・vodafone は成功するか?

シャープ「AQUOS」の液晶モニター付きケイタイ電話が本日(5/27)、ソフトバンク傘下となったvodafoneから発売された(ということを日経新聞の全面広告で知った)。

僕は社会人になってからずっとマーケティング畑を歩んできたので、昔から僕を知る人の中では、起業家という属性以外に、マーケターなりマーケティングコンサルタントとして認知されている。

そんなこともあり、今後、このBlog でも、たまにはマーケティング的な話しをしてみようと思う。

ある時、ある人と、ソフトバンクのvodafone買収と今後の事業展開に関する話しをしたことがある。

僕は、デジタルガレージの共同創業者である「伊藤穣一氏(みんな彼のことをJoiと呼ぶ)」と仕事をする中で「Blog」というモノの本質を理解してきたという経緯があり、日本のBlog文化には少々違和感を抱いている。

Blog発祥の地、アメリカでは、基本的に実名で書くのがBlogである。それ故に、事実と異なることがあれば他のBloggerからクレームが飛んでくることを覚悟で書いている人が多いし、そのお陰で下手なマスコミ(記者)よりもクオリティの高い記事(コンテンツ)が生まれているということを、Joiから教わった。

そんな背景により、このBlogにおいても、基本的に、すべてのこと(書く対象の人やモノ事)を「実名」で書いているし、自分自身の顔写真もデカデカと公開しており、逃げも隠れもするつもりはない(笑)。しかし、今回は、僕が話しをした「ある人」の社会的影響力の大きさを考えて、変な誤解が生じるリスクを避けるため、その人の名前は伏せたままにしたい。

「孫さんがvodafoneを買収したのは正しいと思うし、新会社の社長に孫さん自らが就任したのも正しいと思うよ。何故かというと、今のソフトバンクにとって、ケイタイ電話事業は最も大切な事業だと思うし、それをドライブできるのは孫さんしかいないと思うから。だけど、孫さん、あるいは、ソフトバンクが『コンシューマーブランディング』が出来るか?というと、そこはわからない。だってさ、これからvodafoneショップに二本線が入ったSonfbankのロゴが入るんだよ? 買いたいと思う? 俺だったら、au by KDDI みたいにするな」と、その彼は言っていた。

僕も全くの同感である。

ケイタイ電話の「機能的価値」は「通話・通信・記録」がメインであるが、購買に際する「選択基準」となると「デザイン」や「イメージ」という属性が上位に来るはずである。

成熟した商品は、むしろ、「情緒的価値」の方が重要であり、新しいテクノロジーも機能もそのすべてが、提供すべき「情緒的価値」に集約されていなければ機能しない。

B2Bブランドとしてのソフトバンク、あるいは、「孫さん」という偉大な「起業家ブランド」や「企業」としての存在感があるのは言うまでもないが、そこにあるイメージは「無骨に力強く、世の中を変革して行く」というものであり(ひとりの人間として僕はそう感じている)、ケイタイ電話という「プロダクト(カテゴリー)」に求められるイメージとは、かなり乖離しているように思う。

孫さんにそういう概念や認識があるか?もし、無ければ、孫さんが全幅の信頼をおけるマーケティング責任者をおくことが、成功のカギを握るのではないかと思う。

僕はある時、孫さんの講演(90分)を、3メートルと離れていない距離で拝聴させて頂いたことがある。隣には偶然、ネットエイジの西川さんが座っていた。

孫さんの講演が終わった直後、西川さんと「30分ぐらいにしか感じませんでしたよね!!!」と、どちらからともなく言ったことを覚えている。

そのぐらい、孫さんの話しには「説得力」があったし、起業家としての彼の話しには引き込まれるものがあった。特に、そのスケール感の大きさには、何とも表現し難い感動を覚えた。

しかし、ケイタイ電話は成熟市場であり、B2Cのビジネスだ。偉大な孫さんにとっても、チャレンジだと思う。

因みに、ブランド・マーケティング的には、こんな説明が成り立つ。

「記号性と意味性」の一致。

これは僕が20代の時に働いていたODSというコンサルティング会社でお世話になった森行生さんから教わったフレームワークである。

VOLVO(ボルボ)という車をご存知の方は多いと思うが、一時期のVOLVOが徹底して訴求していたのは「安全(な車)」というコンセプトである。

事実、車に関するイメージ調査をすると、VOLVOに対して抱かれている「イメージ(意味性)」としては「安全」という項目が高いスコアを示していたが、「安全な車は?」という質問をすると、必ずしも「VOLVO」が想起されるわけではなかった。メルセデス・ベンツなり、BMWなり、当時であればクラウンなりの名前が挙がっていた。

別の事例を挙げれば、「コーヒーを飲みたい(意味性=ベネフィット)」と思った時、ドトールか?スターバックスか?エクセルシオーレか?タリーズか?という選択肢の中から「選ばれる」必要があるということだ。

要するに、人間というのは自分が求めるもの、マーケティング的に言えば「ベネフィット」を満たしてくれる商品やサービスを購入する。

そのときの「思考回路」は、「VOLVO(記号性)」と言えば「安全(な車)」ではなく、「安全な車(意味性)」は何か?という構造になる。

つまり、VOLVOであれば、様々な高級車がある中で、自社のターゲットとしている顧客が求める「ベネッフィット」に「最もフィットしたブランド」になれるか?が、勝負なのである。

企業というのは必ず、創業者やトップの「人間性」が表れる。

僕にとって「初めてのB2Cビジネス」となるドリームビジョンの理念やコンセプト、そして、やろうとしていることをを考えた時、その「イメージづくり」には可能な限りの投資をしたいと思っている。

僕を直接知っている人なら別であるが、何も知らない人からみて、ドリームビジョンから発信される情報やサービスが「ダサイ」ものであったら、説得力はないと思うからである。

「夢を実現する」にはイノベイティブである必要があるし、僕自身が「セナ」や「カズ」や「伊達公子」から「勇気」をもらってきたのは、彼らの生き方が「イノベイティブ」であり、尚かつ「カッコよい(絵になる)」からである。

もちろん、イメージ(表面)以前に、上に挙げた彼らのように「中身(事業)」がしっかりしていなければ機能しないは言うまでもない。

「夢を実現する」ことを理念としている会社の創業者である僕自身が「夢を実現する」ことなくして、より多くの人の「夢の実現」を支援できるはずがない。

最後になって、今回のテーマである「マーケティング」の話しから少々逸れてしまったが、要するに、企業というのは「人」がやるものなので、同じ事業をやるにしても「誰がやるのか?」ですべてが決まる。

マーケティングの世界で「(ブランド)パーソナリティ」という概念がある。まさしく、それが重要なのである。

追伸:僕のBlogの読者である「マーケティングジャンクション」の「吉澤さん(秀逸なマーケティングプランナー/コンサルタント)」のコメントが(あるか?)楽しみでもあり、怖くもある(笑)。