第05回 伊佐山 元氏 vol.1 (4)

第05回 伊佐山 元氏 vol.1 (4)

バックアップ(退路)を切る。

エキサイティングなスタンフォードでの留学生活を送っていた彼だが、「企業派遣」による留学なので当然、興銀からは戻ってくることを期待されていた。

実は、その頃というのは、興銀が「みずほ銀行」になり、5,000人もいなかった会社が、いきなり「4万人」くらいの組織になる時だった。

「良いポジションを用意するから」という話もあったそうだが、「(スタンフォードでの)洗礼を受けた後は、日本の大企業に戻るというのはピンと来ないのです」となる。

もう一度、世の中を変えるようなベンチャーをやってみようと思っていたが、特に、何をするかは決めていなかった。

しかし、スタンフォードにいる間に、何十種類ものビジネスプランを書いていて、その中のひとつをやってみようと考え、銀行に戻ることは断った。

とは言え、何をするのかも決めていない彼に、人事部長は、「家族もいるのに、そんな滅茶苦茶なことを言っていいのか?」と、半ば呆れていたそうだ(笑)。

写真:伊佐山 元 氏

バックアップを断ち切ったことで、自分のビジネスを立ち上げるという想いを深く考えることができるようになりました。

「とりあえず学生ビザはあと1年間あるので、アメリカに残って何かをしようと思いました。それで何もなかったら、日本に戻ってもう1回『みずほ』に就職活動をしているかもしれないし、違うところに就職活動しているかもしれませんが、とりあえずこっちで何かしようと思います、と。そのようにして『バックアップ』を切ったのですね。そうすると、食っていかなければいけないので、もっとフォーカスして自分のビジネスを立ち上げるという想いを深く考えることができるようになりました。その時、相談相手になってくれたのが、このDCMのパートナーのひとりだったのです」。