第05回 伊佐山 元氏 vol.1 (2)
2016-05-14人間が変わる理由。
伊佐山さんは、人間が変わる理由は「2つ」しかないと言う。そこには必ず「理由がある」という意味でもある。
そして、「人間が変わる理由」の殆どは「外部的要因」だと言っている。
つまり、普通の家庭に生まれて、普通に学校に通って、普通に運動して、普通に就職していたら、道から逸れるということは、よほど風変わりな遺伝子を持って生まれて来ない限りは起こらないだろうということである。
彼の人生には、「人間が変わる理由」としては、充分すぎる出来事が起きたのである。
彼は18歳の時、1つ下の妹さんを「白血病」で亡くした。
「病気と分かってから、たった『2週間後』に『その人間』がいなくなる、そういう急な話でした。妹が亡くなって、突然、一人っ子になったのです」。
普通の病気であれば、心の準備というか、容態が悪くなると「ああ、この人は余命何ヶ月だ」という「プロセス」があるが、それが無かったのである。
伊佐山さんは当時、受験勉強の真只中にいた。
妹さんが病院に行った時は、「たまたま、風邪をひいた」としか思っていなかった。その時の受験は当然、「チャラになってしまいました」。
DCMのプレゼンテーションルーム。起業家によるプレゼンテーションや投資委員会等が行われる。
壁に飾ってあるのは、投資先の企業のロゴ。
彼は、妹さんの死に直面し、「自分の人生なんて、こんなにあっという間に消え去る可能性がある」ということに気づき、「自分の思いどおりに何かのキャリアを積んで、65歳、75歳まで生きるということは多分ないのだろうと、初めてリアルに感じた」。
健康で病院にも行ったことがないし、自分が死ぬなんてことは絶対にないと思って生きていた彼は、突然の妹の死という出来事に直面し、「明日が自分の最後の日と思って、これからは二人分の人生を生きていかなくてはいけないんだ」と思うようになった。
そのような出来事により、妹さんの死を乗り越えて、翌年、もう一度チャレンジし、「東京大学」に入学する。
彼にとっては、東大という大学に行くことが目的ではなく、「東大」という「ステイタス」をフルに使って、他の人には出来ないことをやってやろうということが目的だった。
そのひとつとして、彼は在学中に、スタンフォードの学生(京都大学の留学生)2人と、アーチパシフィックというI.T.ベンチャー企業を創っている。