第03回 本間毅氏 vol.3 (2)

第03回 本間毅氏 vol.3 (2)

新しいゲームと新しいルール。

ソニーでは、色々な部署の仕事を経験させてもらってきたらしいが、その課程で本間さんが学んだことは、ソニーという大企業には「カルチャーの違い」があることだという。

たしかに、ソニーには、元々の「エレクトロニクス」部門があり、音楽や映画といった「エンターテインメント」部門もある。それらの事業はまったく性格が異なるわけで、組織や人材のマネジメントの仕方も大きく異なる。しかし、「カルチャーの異なる人たち」がぶつかり合う中でこそ、「新しい何か」が生まれてくるのだそうだ。

「エレクトロニクスの場合は、商品のクオリティやデザインなどが大事なので、美学があって、微に入り細に入り、みんなでマネジメントする。エンターテインメントは逆に、音楽会社の社長が一番分かりやすいプロデューサーというわけではないんですよ。一番売れている人でもない。とある社長経験者が教えてくれたんですが、『社長としての仕事は、自分がレコードをプロデュースすることではない。いいプロデューサーに目をつけてそいつにやらせて、あとは俺が責任を取る。ダメだったらそいつを切る』と。両方のカルチャーは違いますが、両方とも真なりです。でも、どうしても社内では、物事がそこでスタックしてしまうことが多い。でも僕は両方の言語を知ることができたという点では、すごく恵まれています。1つの会社の中にある違うカルチャー、違うビジネスをどうやったら結び付けられるかを考えるのは、ある意味すごくクリエイティブなことなんです。今、ソニーが言っている「ハードウェアとコンテンツの融合」という話は、そこ抜きには絶対に語れないですから」。

写真:本間毅 氏

意外とそうでもなかったですよ。新しいゲームを始めたので、ルールが違うだろうと思っただけなので。

僕は、本間さんの話を聞きながら、こんな質問をぶつけてみた。

「自分で会社をやっていたのに、組織に入ると色々な人にお伺いを立てたりすることになり、ある意味で屈辱的だったり、なんで俺がこんなことしなきゃいけないんだよって、思ったことはないんですか?」

すると本間さんは、こう答えてくれた。

「新しいゲームを始めたのだから、ルールが違うだろうと思っただけなのです」。

「過去を引きずらない」というのは、本間さんのような「生き方」を指すのだろう。