第02回 出口 治明氏 vol.1 (2)

第02回 出口 治明氏 vol.1 (2)

僕の人脈を使うのはやめよう。

出口さんが二つ目に決めたことは、それまでの人脈を使うのはやめようということ。

「古い僕は捨てるので、なんでも谷家さんと相談して、僕の人脈を使うのはやめようと思いました。というのは、ゼロから保険会社を創ろうと思った時にですね、こんな機会って滅多にないと思ったんですよ。『紙(事業計画書)』は無かったんですが、僕の頭の中では、ビジネスモデルはもう殆ど完成していました。せっかくの機会だから、このビジネスモデルだけで勝負しようと思ったんですね。分かりやすい例で言えば、ネットバンクとして市場の高い評価を受けていた新生銀行には、僕が知っている人はほとんど誰もいないんですよ、幹部では。でも、三菱東京UFJやみずほやSMBCだったら、役員クラスの友達がいるんですよ。でも、それは、個人的な縁で頼むわけじゃないですか。そうではなくて、ビジネスモデルだけで勝負しようと思ったんです。新生銀行とは、ビジネスモデルが近いわけですから。せっかく、谷家さんという素晴らしい人と出会ったんだから、もう真っ白で全部ゼロから考えて、このビジネスモデルだけでやっていこうと」。

その時、出口さんは「58歳」。日本にも、こんなステキな人がいるのである。

写真:出口 治明 氏

この「ビジネスモデル」だけで勝負しようと思ったんです。

期間の長いお金。それが「生命保険」。

ところで、出口さんの「三つ目の決断」を紹介する前に、少しだけ生命保険に関する話しをしたいと思う。

谷家さんという方はご自身も素晴らしい投資家であるが、投資に関心のある方なら誰でも知っている「ウォーレン・バフェット」を尊敬されているそうである。そのバフェットの力の源泉が「保険会社」にあるという。

つまり、保険というのは、とても「期間」が長いお金であり、バフェット(彼の経営する会社は、バークシャー・ハザウェイという)は、ふたつの保険会社(損保と再保険)を傘下に持っており、そこで預かったお金で投資をしている。資金調達から運用まで一気通貫。そして、短期の変動に一喜一憂せず、長い期間、保有することができる。そこがバフェットの強みなのだという。

インタビューの最中、出口さんがこんなことを言っていた。

「僕の理解では、普通の投資家が何故負けるのかというと、ある株を買って、値上がりした時に売って大儲けをしても、そこで得たキャッシュをすぐにまた投資しなければならないからだと思うんです。要するに、いつも何かを買わなければならない。いつも、業績をあげなければいけない。それが投資の失敗の原因だと・・・。でも、保険会社は期間が長いので、待つことができる。そんなことを谷家さんが言っていたと思います」。

そのような背景により、谷家氏が日本の保険業界に何かチャンスがありそうだと思っていたところに、生命保険のプロである出口さんとの出会いがあり、出口さんが「ネット専業の生命保険」というビジネスモデルを提案し、将来の顧客(契約者)になりそうな「ネット世代」であり且つ投資のカルチャーもある岩瀬氏が加わり、ライフネット生命保険が誕生したわけである。

次回に続く。

文章・写真: 株式会社ドリームビジョン 平石郁生