第02回 出口治明氏 vol.1 (1)

第02回 出口治明氏 vol.1 (1)

古い僕は、すべて捨てようと思ったんですよ。

出口さんのことは、岩瀬氏と初めて言葉を交わしたセミナーで拝見していたが、実際に会話をしたのは今回の取材が初めてだった。

大袈裟でも嘘でもなく、会議室のテーブルを挟んで座った時、僕は何を質問すればいいか?まったく頭に浮かばなかった。出口さんは、それぐらい、言葉には表せないオーラを発していた。

僕よりも15歳も年上の出口さんに対して、こういう表現は失礼なのかもしれないが、出口さんは「還暦」にして、未だに「少年」のような方である。当然のことながら歴戦のツワモノで、社会の裏も表も知り尽くされているはずであるが、それでも尚、ピュアな心を持っていらっしゃる。そんな方だ。

そんな出口さんらしいエピソードがある。

前号までに何度も登場した谷家さんという方と会い「保険会社を創りませんか?」と持ちかけられた時、その場で「分かりました(やります)」と答えたそうである。
尚且つ、その瞬間に「3つ」のことを決めたという。

写真:出口治明 氏

思ったことがすべて実現するわけではないけれども、「思わないことは実現しない」ですね。

日本生命から人を連れてこない。

出口さんは日本生命出身で、生命保険業界では誰しも知るところの有名人である。当然のことながら、日本生命にはかつての部下もいるし、出口さんを慕っている人もたくさんいる。でも、出口さんは「日本生命から人を連れてこない」と決めた。

「最初に決めたことは、日本生命から人を連れてこないこと。一番簡単なのは、能力もよく知っていて、僕のことを慕ってくれている部下を連れてくることですよね。でも、谷家さんは、僕がまったく知らないタイプだったので、オーバーに言えば『古い僕は、すべて捨てよう』と思ったんですよ」。

その結果、出会ったのが岩瀬氏だった。谷家さんの紹介である。

「谷家さんから、『何を準備すればいいんですか?』と聞かれたので、すぐに、若くて保険のことを何も知らない人を一人探してくださいと言いました。岩瀬君は気分を悪くするかもしれないけど、誰でも良かったんですよ、オーバーに言えば(笑)。谷家さんの紹介なら間違いがあるはずがないと思っていたら、岩瀬君のようにですね、想像していたよりも、倍ぐらい優秀で、チャーミングな人が来てくれて、僕は本当にラッキーだと思いました」。

まるで絵に描いたような話しであるが、紛れもない事実である。