第01回 岩瀬 大輔氏 vol.1 (4)
2016-05-14「社会的意義」。そして、「ゼロ」からやる喜び。
彼の職業選択基準の2つ目である「社会的意義」の定義は、彼の言葉を聴いていると、「既存の枠組みに大きなインパクトを与えられる、社会のあり方をより良く変えられる何かがある」ということのようである。
そして、それは職業選択のもうひとつの条件である「自分にしかできないこと」と密接に関連しており、「社会的意義」が感じられる事業という存在は、時に超頭脳明晰な彼をも「衝動的」にしてしまうほど、大きなエネルギーを持っている。
彼がBCGを辞めてICGに転職した2000年はネットバブルのピークだった。ネットベンチャーにフォーカスして投資を行っていたICGの時価総額(米国で上場していた)は一時、1兆円を超えており(一年後には、100億円になっていたらしい)、米国ではかなり注目されていた存在だった。
そんなこともあり、日本社会では殆ど無名の存在だったにも係わらず、ICG日本オフィスには銀行や商社の人達がこぞって面会に来ていたらしい。
また、当時の日本社会では、ベンチャー投資という行為は、まだ「ニッチ」な領域であり、新しい事業を創っていくことを資金面から支えることに大きな「社会的価値」を感じていたのだろう。そんな凄いことを、たった5人(ひとりはBCGの先輩)で「ゼロ」からやる喜びを感じていたそうである。
人とは違う、自分にしかできないものに係わっているという感覚がすごくあったんですよ。
「すごくやりがいのあることだなと思っていて、尚且つ、日本経済にとってもとても必要なことだと思っていたんですよ。あとは、メンバーがおもしろかった。島田さん(BCGの先輩)もずっと一緒にやっていましたし」。
本人曰く、当時は「これで大成功してやる」と思っていたらしいが、ストックオプションをもらっていたわけでもなく、無知でよく分からないまま、アメリカの株価を調べもせず、ナイーブなまま飛び込んでいったそうだ。しかし、そこには「何か大きいワクワクするものがあり、人とは違う、自分にしかできないものに係わっているという感覚がすごくあったんですよ」。
次回に続く。
文章・写真: 株式会社ドリームビジョン 平石郁生