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排出権取引市場の今


拡大する排出権市場で勝つための施策とは                          

森本泰三氏 森本泰三氏 森本泰三
高校からハワイ州に留学をし、ハワイにて大学を卒業。卒業後1年間のオアフ島での就業経験を経て、Hawaii Pacific UniversityにてMBAを取得(専攻:ファイナンス(ポートフォリオマネージメント))し、2001年に帰国。
帰国後は、金融ベンチャー企業にてエンジニアとしての勤務経験、および、2社の外資系金融機関にて個人金融のリスクマネジメント業務の経験を有する。
早稲田大学ビジネススクールMBA1年在籍

排出権市場拡大の背景


世界銀行のState and Trends of the Carbonという報告書によると、世界の炭素市場(排出権市場)規模は、
2007年に約640億米ドル(1米ドル=105円換算で、約6兆7,000億円)に拡大した。
日本国内のカーボン・オフセット市場については、カーボン・オフセット分野のパイオニアとして著名な英カーボンニュートラル社と事業提携し、日本でカーボン・オフセット事業を手がける株式会社リサイクルワン は、2008年は5億円、2009年は
18億円、2010年は75億円と、日本市場の急成長を予測している。

※カーボン・オフセットとは
市民、企業、NPO/NGO、自治体、政府等の社会の構成員が、自らの温室効果ガスの排出量を認識し、
主体的にこれを削減する努力を行うとともに、削減が困難な部分の排出量について、他の場所で実現した
温室効果ガスの排出削減・吸収量等を購入すること 又 は他の場所で排出削減・吸収を実現する
プロジェクトや活動を実施すること等により、その排出量の全部又は一部を埋め合わせること
(環境省『我が国におけるカーボン・オフセットのあり方について(指針)』より)




※上記クリック拡大参照

日本での市場が急成長する背景には、京都議定書に定められている通り、日本は2012年までに1990年比で温室効果ガスを6パーセント削減するという約束があり、各企業が排出量の削減を自主的に推進することが考えられる。
それに伴い、企業が排出権を購入したり、または、自社商品の差別化の為、商品に排出権を付けて販売したりするなどで、市場が急成長していくものと予想される。また、2050年までに温室効果ガスを50%削減する長期目標を、世界全体の目標として採用することを主要国が求めていくことで一致しているため、「他国のモデルとなる世界に冠たる環境先進国家として、地球温暖化問題において世界をリードする役割を果たしていく」方向性を打ち出している日本は、今後地球温暖化対策の取り組みを積極的に推進していくものと考えられる。


国別排出権シェアの変化

             
世界銀行の『State and Trends of the Carbon2007』によると、2006年にCDM&JI Buyers(排出権購入国)の中でシェアが最も大きいのは、イギリスであり、全市場のおよそ50%を占める。



※上記クリック拡大参照

金額ベースで見ると、日本は約5,400億円(2005年)から、約2,300億円(2006年)と低下し、逆にイギリスは
約1,800億円(2005年)から、16,500億円(2006年)と約9倍に拡大した。2006年にイギリスの購入額が日本を逆転し、シェア50%に到達した理由は、2005年に始まったEU-ETS(EU内での排出権取引制度)の第一フェーズの影響や、国際的な事業を行う金融機関の本拠地が多数あるイギリスが市場を牽引し、イギリスの民間企業や銀行、
炭素ファンド等が排出権をより多く購入したことであると考えられる。
(『みずほ政策インサイト 国際排出権取引の現状と今後の展望』(みずほ総合研究所)を参照のこと)。
日本でも2008年の秋に東証が排出権取引を試験的に始める為、今後は日本の排出権購入シェアは
拡大すると考えられる。
※ CDM:Clean Development Mechanismクリーン開発メカニズムとは
先進国の資金・技術支援により開発途上国において温室効果ガスの排出削減等につながる事業を実施し、
その事業により生じる削減量の全部又は一部に相当する量を先進国が排出枠として獲得し、その先進国の
削減目標の達成に利用することができる制度 (財団法人 地球環境センター ウェブサイトより)

※ JI:Joint Implementation共同実施とは
排出削減等につながる事業を互いに削減目標(排出枠)を有する先進国間で実施するもので、
その事業によりホスト国で生じる削減量の全部又は一部に相当する量の排出枠を投資国がホスト国から獲得し、
投資国の排出枠に加えることができる制度  (財団法人 地球環境センター ウェブサイトより)

ビジネス展開のポイント

             
今後当事業分野に、ベンチャービジネスとして新規参入する場合、個人向けの排出権販売ビジネス、または、
中小企業向け排出権販売ビジネスでの成功可能性があるものと森本氏は期待する。
排出権を小口化販売する企業を「カーボン・オフセット・プロバイダー」と呼ぶ。国内では、個人向けカーボン・オフセット・プロバイダーとして、ジーコンシャス株式会社日本カーボンオフセット株式会社リサイクルワン 等が存在する。
一方、中小企業向けプロバイダーとしては、ラウル株式会社 (Green Site License(GSL)を運営)が当分野で積極的に事業展開している。株式会社リサイクルワンは、2008年7月からYahoo!カーボンオフセット 上で、個人向けに排出権を販売し始めた。当サービスでは、開始1ヶ月半で、20代・30代を中心に2,800人以上が利用した。
平均購入価格は300円で、手軽さが人気につながっている。(詳細は、日本経済新聞2008/8/21を参照のこと。)
森本氏は、今後ベンチャービジネスとして当事業分野への参入を計画しており、参入時のビジネスとしては下記のような施策を検討している。

■海外の有力企業との提携を打診し、信用度を上げる。
■仕入れとなる排出権の購入を信託銀行ではなく、直接商社から購入してコストを下げる。
■個人より中小企業をメインターゲットとしぼり、排出量の計算や削減方法、国別登録簿への口座開設などの
コンサルティング料と排出権の販売の2つの収益を考える。
マーケットの拡大、CSR活動の推進、取引市場の設立などで、日本国内でも環境ビジネスの関心が高まっており、
ビジネス機会は十分にある。このような環境の中、当事業分野での成功には、早期の市場参入がポイントであると
森本氏は指摘している。


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