***

HOME > 市場/事業レポート > 社会情勢1 > 【全4回連載】ホットアフリカ。僕が見たアフリカの今

【全4回連載】ホットアフリカ。僕が見たアフリカの今

第1回 アフリカ経済の光と影

小栗充博氏
小栗充博
東京大学教養学部在籍
2003年にアフリカに拠点を置くNGO、ADEOにインターンとして参加。以来、日本支部のアデオジャパンのメンバーとして、日本ならびにアフリカ現地にて、『世界エイズデー』を初めとした様々なイベントの企画およびイベントへの参加、さらには、複数のNPO法人と交流を持ちアフリカの地域開発プロジェクトに従事。また、自身の知見や経験に基づき、アフリカの諸問題や国際協力等をテーマとして多くの執筆や講演を手がける。

アフリカの水を飲んだものは・・・

目が覚めて、窓から茶褐色の広大な大地を確認し、また彼の地に帰ってきたことを実感する。飛行機のモニターを見たところ、ちょうどエチオピアの上空を飛んでいるのだろうか。乾燥した大地にところどころ川が流れている。

日本で手に入るたいていのガイドブックには、「アフリカの水を一度飲んだものは、再びアフリカに戻ってくる」という一種ことわざのような言葉が紹介されている。例に漏れず、私も5回目のアフリカ訪問を成し遂げようとしている。

近年のアフリカへの注目の高まりは目を見張るものがある。今年2008年は、日本にとってもアフリカイヤーだった。5月下旬に日本政府が主催した『第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)』文末『用語集/参考情報』の1を参照の際には、音楽や食事といった文化的なものから経済的なものまでアフリカに関する様々な情報がマスメディアを通じて広く流布された。私の母親も、「最近アフリカに関する話題が妙に多くてびっくりした」と私に電話をかけてくるほどであった。

これまで、主に「援助/国際協力」といった側面で語られることの多かったアフリカだが、今回のTICAD Ⅳは「“Vibrant Africa”-元気な アフリカを目指して」をテーマに掲げ、民間からの積極的なアフリカへの投資を促進する役割を期待されていた。多くの日本企業もアフリカへの進出に関して、かなりの興味を寄せていると聞く。 


         

曇りのない子供たちの笑顔は、アフリカを訪問した人々の多くを魅了する。デジカメの画面で撮ったばかりの写真を見せると、大きな歓声をあげて喜んでくれる。
たとえ親を失った遺児たちであろうと、素敵な笑顔を忘れることはない。笑う門には福来る。明るい未来が彼らを待っていると願って。

なぜ今アフリカなのか。これを考える上でヒントとなるデータを俯瞰しながら、アフリカの今と未来について考えてみようと思う。

アフリカはひとつの国ならず

アフリカの話をする際に、よくアフリカ大陸がそのままひとつの国であるかのように、まとめて語られることがある。
実際には総面積約3,000万平方キロメートルの広大な大陸に、53カ国が存在する
(ちなみに、南米大陸は、約1,800万平方キロメートルの広さで12の独立国が存在する)。



※上記クリック拡大参照

アフリカ大陸の53カ国は、国によって政治・経済状況は大きく異なるので、大陸全体を「アフリカ」としてまるで均質のものとして語ることには無理があるように思える。一方で、53カ国をそれぞれ個別具体的に取り扱おうとするのも決して得策ではない。事実53カ国のうち42カ国では、人口が2,000万人に満たず(2005年時点の東京の人口は約1,260万人(総務省統計局『平成17年国勢調査』より))、一部の大国を除いて大陸は小国の集団であることがわかる。
ここで、2006年のアフリカ大陸の総人口は9億2,500万人文末『用語集/参考情報』の2を参照であり、これは世界人口の14.2%にあたる。このようにひとまとめて論じることを避けながら、すべて個別にではなく、ぼんやりとした地域性を与えながら、様々な切り口でアフリカの諸国文末『用語集/参考情報』の3を参照を眺めていきたい。

アフリカの経済成長 <概要>

アフリカ開発銀行(AfDB)は5月11日に『2008 African Economic Outlook』を発表し、アフリカ地域の2007年経済成長率は5.7%になると推定、2008年と2009年はさらに伸び、5.9%に達すると予測している。
世界銀行が発表した『2008年世界経済展望』によると、世界の経済成長率が3.6%(2007年見込み)であるため、
アフリカ地域は、経済成長率10%を超えるインド・中国両国には及ばないものの、高水準で経済成長を続けているように見える。

アフリカの経済成長 <非資源部門産業の成長>

ナイジェリア、エジプト、ケニア、南アフリカなど、各地域の中で中心を担う国々では、非資源部門産業の成長が著しい。都市での高層建築の建設ラッシュや通信産業、サービス産業の進展など明らかな経済発展を垣間見ることができる。







ケニアの首都ナイロビのダウンタウン。多くの市民にとって公共交通として機能する「マタツ(ミニバス)」が所狭しと並んでいる。
ナイロビの人口は約200万人と言われている。高層ビルが多くそびえ立つアフリカ有数の経済都市。

このような地域の大国での成長もあり、アフリカ地域全体で情報通信技術(ICT)の市場が特に著しい成長を見せている。 特に携帯電話の普及は目を見張るものがあり、国連のIPS文末『用語集/参考情報』の4を参照によれば2000年の時点でわずか1,600万人であった携帯電話契約者が、2001年には固定電話の契約者数を上回り、昨年2007年には2.5億人にまで拡大し、現在ではすべての電話の9割が携帯電話となっているという    
(詳細は、Deen, T. (2008) : “Mobile Phones Soar in Internet-Starved Africa”, IPS を参照のこと)。





ケニアでも他のアフリカ諸国の例に漏れず、携帯電話の普及がものすごい勢いで進んでいる。最低限の標準機能を備えた機種であれば、日本円で3000円~5000円。音楽再生機能や高性能カメラがついたものだと2万円ほどのものもある。
友人のNOKIA(写真)は、Gmailもできる最新版。

携帯電話市場の過熱に見て取れるように、世界全体のおよそ15%にも匹敵する約9億の人口さらには高い人口増加率を背景に、アフリカ大陸が将来的に世界の中で巨大な消費市場になりうる可能性を充分に秘めているといえる。

アフリカの経済成長 <アフリカ資源への注目>

アンゴラや、スーダンなど政情が不安定ながら、豊潤な石油資源と最近の原油価格上昇によるオイルマネーの流入を背景に、それぞれ26.9%、11.3%という高い経済成長率を記録している国もある。




ケニアの農村地域で立ち寄ったガソリンスタンド。アフリカにも資源に乏しく原油を輸入に頼る国は多く存在する。ここでのディーゼルオイルの価格は、日本円で1リットルあたり、180~190円ほど。日本と同様、世界的な原油価格上昇の影響だという。

ただその成長が国民所得や生活レベルの向上に直接反映されているかは疑わしく、一部の支配層を潤しているだけという批判も多い。アンゴラ、スーダンだけでなく、アフリカ大陸の多くの地域における埋蔵資源の存在は世界的に注目を集めており、国内での紛争や混乱の原因となっているのも事実である。そしてこのような国々の多くでは、資源の獲得を目論む他国政府の支援を受けて独裁的な政権が存続している。
『ブラッド・ダイヤモンド』文末『用語集/参考情報』の5を参照では、その構図がわかりやすく示されている。

経済成長の阻害要因

民主主義的な政体の下で、海外からの積極的な投資誘致に成功した国々でも、急速な開発が進む一方で国内の経済格差が広がり、経済発展に預かることのない貧困層が依然として多く存在し不満を募らせていることもある。街を歩けば拡大する都市スラムのすぐ近くに、高層ビル群がそびえ立っていることに気づく。

外務省ホームページ 国政モニター課題報告「今後の対アフリカ政策の在り方について」(平成18年7月実施)の参考資料『アフリカの現状と日本の対アフリカ政策』によると、サブサハラ地域全体で、1日1ドル未満で生活する人が、全体の41.1%を占め、貧困が大きな問題となっているのは疑いない。正確なデータがないものの、失業率、特に若者の失業率が非常に高いことが予想されており、国内の大きな消費者層となりうる人々が貧困から抜け出せないことは、国内経済の発展にとっては大きなネックとなっている。

また南部アフリカ諸国では、HIV/AIDSの蔓延と対策の遅れから平均寿命が著しく落ち、それが国家としての経済成長率の減少を招いているところもある。スワジランドでは15歳以上の成人のHIV感染率が、33.4%(2005年)と非常に高く、平均寿命は40歳以下まで下がっている。HIV/AIDS労働人口に与える影響は計り知れず、国力の低下を招いている。HIV/AIDSと並び、マラリアや結核(TB)は3大感染症とされ、アフリカ諸国ではその経済成長すら阻害する一因となっており、疾病対策の必要性が大いに強調されている。

この連載では、今後のアフリカ諸国の成長にとって重要な課題となると考えられるテーマをいくつか、今回私が訪問したケニアの例を参照しながら紹介していこうと思う。




ナイロビで2番目に大きいスラム、マザレスラムにて。ナイロビの住民約200万人の半数以上がスラムに住んでいるという。写真はスラム内で見つけたレストラン(ケニアで"Hotel"はレストランを意味する)。
スラムでは物価が比較的安く、外部からもお酒を飲みに人々が集まる。

【用語集/参考情報】

1.TICAD(アフリカ開発会議:Tokyo International Conference on African Development)とは日本が国連(UNDP、OSAA)、アフリカのためのグローバル連合(GCA)および世界銀行との共催で開催する、アフリカの開発をテーマとする国際会議。1993年の第一回より5年に一度開催されている。
外務省ウェブサイト より)

2.アフリカ大陸の主要統計は、外務省ホームページ 国政モニター課題報告「今後の対アフリカ政策の在り方について」(平成18年7月実施)の参考資料『アフリカの現状と日本の対アフリカ政策』を参照のこと

3.一般に「アフリカ」という場合、地中海沿岸に立地するエジプト、リビア、チュニジア、アルジェリア、モロッコの5カ国と、サブサハラ以南(サハラ砂漠より南)の48カ国を分けて論じることが多い。私自身、その五カ国についてあえて除外することはしないものの、議論の主な対象がサブサハラ以南の国々となることをご理解頂きたい。
なお、外務省ウェブサイトのアフリカ用語集 では、サブサハラ・アフリカは、「北アフリカ(モロッコ、アルジェリア、チュニジア、リビア、エジプト、スーダン)を除くアフリカ」と定義されている。研究内容や調査対象により、地域の定義については、複数の立場が存在する。

4.インタープレスサービス(IPSとは、地球規模の諸問題と密接に関連する南(開発途上国・地域)における諸問題を、北(先進国)の政策責任者、NGO、各種専門家にコマーシャリズムに左右されることなく伝えていくことを理念として、1964年(昭和39年)に発足したローマに本部を置く、開発分野専門の国際通信社。
IPS JAPANウェブサイト より)

5.ブラッド・ダイヤモンド(Blood Diamond)』 は、エドワード・ズウィック(Edward Zwick)監督のアメリカ映画(2006年制作)。シエラレオネ共和国での、ダイヤモンドの不正な取引をめぐって起きる不毛な紛争をサスペンスフルに描いた作品。レオナルド・ディカプリオ主演。


小栗充博氏お勧め~アフリカ関連音楽・映画~




【Tsotsi】  
オリジナルサウンドトラック
 

南アフリカを舞台にした映画"Tsoti (ツォツィ)"のオリジナルサウンドトラック。 Mdlwembe をはじめ数多くの収録曲を歌うZolaは南アフリカの代表的アーティスト



【Naturel】 
Fania
 

フランス在住でモデルをするFania。
出身地である西アフリカの楽器を取り入れつつ独特の音楽を奏でている。 声も素敵で日本では一度Blue Noteで歌ったのを見たことがある。


【ザ・ベスト・オヴ・フェラ・クティ(2CD+DVD)】  
フェラ・クティ  

アフリカを代表する超有名アーティスト、フェラ・クティ。
他に聞いたことのないようなビートは耳から離れない。
息子のフェミ・クティも活躍中。


Offtime 挑戦者のオフタイム

Backnumber バックナンバー

挑戦する生き方

江原理恵氏vol.2
江原理恵氏
最初の転機が訪れる。 さて、持ち前の「反骨精神」で数字を上げていた江原さんだったが、証券会社時代に
江原理恵氏vol.1
江原理恵氏
世界的な経済金融危機が続く中、数ヶ月ぶりに日経平均が1万円を超え、少し明るさを取り戻しつつあるか
塚田寛一氏vol.2
塚田寛一 氏
笠原さんとの出会い。 塚田さんにとって、イー・マーキュリー(現ミクシィ)やペイメントワン(現GMO

市場/事業レポート

歯科業界の現状
はいしゃは、歯医者?敗者?そして、、、 はじめに 今回のレポートは、歯科業界で、”ビジネス”とし
注目される牛乳販売店の機能
マーケティング・チャネルとしての牛乳販売店 牛乳宅配店への注目 インターネットを活用した新興流通
【全4回連載】ホットアフリカ。僕が見たアフリカの今 番外編
【番外編】私が愛したケニアの人々とその生活