"世界のTOYOTA" 迫られる戦略の転換
世界のTOYOTA
内国会社として最大の売上高、最大の営業利益、最大の株式時価総額を誇るトヨタ自動車株式会社。2007年1-3月期の四半期ベースでのグループ世界販売台数が世界一を記録(2007年4月28日 共同通信)、2008年3月期の売上高およびすべての利益項目で過去最高を達成(
トヨタ自動車 アニュアルレポート 2008 より)など、将に日本発、"世界のTOYOTA"と呼ぶにふさわしい、世界一の自動車カンパニーとして不動の地位を築いた。
しかし、輝かしい成績を残した2008年3月期からは一転、2009年3月期の第1四半期は、連結営業利益が前年同期比38.9%減、単独営業利益が前年同期比46.5%減、そして2008年10月7日、トヨタは、2009年3月期連結決算の業績予測を下方修正する方針であることを明らかにした。
当レポートでは、金融危機や景気の減速が、"世界のTOYOTA"の業績に与える影響を具体的な数値を基に分析しようと思う。
自動車事業の海外依存
トヨタ自動車の主力事業は、なんといってもグループ全体の売上(2008年3月期は、26兆2,892億円)の約9割を占める自動車事業である。2008年3月期には、自動車事業の営業利益は2兆円に達し、当事業は将に"世界のTOYOTA"グループの業績を牽引する超優良事業として世界に知れ渡っている。
当然ながら、トヨタ自動車の車両販売台数は過去5期で順調に増加を続け、それに伴い、連結売上高も年々増加を続けている。
トヨタの車両販売での特徴は、2005年3月期以降、日本市場の販売台数の減少に伴い、車両販売台数全体に占める日本市場の構成比率が年々縮小傾向にある点である。その一方で、北米、欧州、アジアやアフリカをはじめとする新興国等、海外市場での車両販売台数の増加が著しく、自動車販売の海外依存が強まる傾向にあることがわかる。
※上記クリック拡大参照
また、トヨタグループの連結売上高の構成比率に関しても、日本比率が減り、日本以外の諸外国比率が高まるという傾向が見て取れる。
※上記クリック拡大参照
(注)2004年3月期の「その他地域」には、アジアも含まれる。
一方、営業利益率を見ると、日本市場の方が北米をはじめとする海外市場よりも利益率が高いため、連結の営業利益率は横ばいから減少傾向にある。今後は、営業利益率が上昇傾向にあるアジアやその他地域での業績向上が、利益率を含めた真の業績向上に、より貢献していくものと考えられる。
このように、トヨタグループの売上高成長や利益成長を支えるのは、日本以外の海外市場となりつつある。このことは裏を返せば、トヨタグループの業績が、今回の金融危機や新興国の景気変動、その他様々な経済要因に、より大きく影響を受けることを意味する。
(詳しくは、
トヨタ アニュアルレポート2008を参照)
2009年第1四半期の業績悪化
冒頭でもお伝えしたとおり、トヨタの2009年3月期の第1四半期は、連結営業利益が前年同期比38.9%減という結果となった。ニュース等では、「為替変動の影響」、「米国実体経済の悪化」等が原因であると報じられたが、実際、何がどの程度トヨタの業績に影響したのだろうか。
トヨタグループの連結営業利益は、2009年3月期第1四半期に前年同期比で、38.9%減という結果となった。特に、グループ全体の売上高の約9割を占めるトヨタの自動車事業は、2009年3月期第1四半期は、前年同期比で連結営業利益46.6%減であり、この利益減が、連結業績悪化の大部分を占めている。
では、自動車事業はなぜ対前年同期比減収減益という結果となったのだろうか。
2009年3月期第1四半期における自動車事業の業績を地域別に見ると、アジアならびにその他地域では増収増益を達成した一方で、売上高の8割以上を占める日本・北米・欧州という主要地域での業績が対前年同期比で大幅に悪化した。
主要地域での営業利益の減益の要因は国ごとに異なり、日本市場の要因は、為替変動の影響および諸経費の増加であり、北米・欧米市場の要因は、生産および販売台数の減少であると発表されている。(詳細は、
トヨタ自動車株式会社 平成21年3月期 第1四半期決算要旨 を参照のこと)
日本市場 為替リスクの顕在化
日本市場では、1ドル=121円(前第1四半期) ⇒ 1ドル=105円(当第1四半期)という円高が、2,000億円の減益をもたらした。実は日本市場では、販売台数および生産台数共に対前年同期比で増加していた。にもかかわらず、為替変動があまりにも大きかったために、販売増による収益増加以上に大きな業績への悪影響を及ぼした。
トヨタ自動車の場合、1円の円高ドル安が進むことで年間の営業利益が350億円減少するといわれている。(
MONEY zineニュース より)
米国では、ITバブル崩壊や同時多発テロ以降、個人消費が景気を支えてきた。低金利、低金利を背景とした住宅ローンのリファイナンス、2003年5月に成立した減税法の効果による可処分所得の増加等が米国家計部門の消費を刺激した。米国市場での需要拡大に伴い、新興国や日本から米国への輸出量は増加していった。トヨタ自動車においても近年、米国市場での販売台数は堅調に推移した。トヨタ自動車は、為替リスクヘッジの施策として、現地生産を拡大していたものの、実際には、日本生産・北米販売という構造も残っており、このことも円高による減益を招く要因の1つとなると考えられる。
次に、諸経費の増加による影響としては、金額にして1,355億円と発表されている。
トヨタ自動車株式会社2009年3月期 第1四半期 決算説明会資料では、諸経費の中で最も影響が大きかった項目は、1,355億円のうち約8割を占める「その他(諸経費)」(1,063億円)とされているものの、その具体的な内容は明記されていない。(「その他(諸経費)」の中には、研究開発費、減価償却費、設備投資関連費用、労務費は含まれていない。そのため、外注費、宣伝広告費、販売促進費、製品保証引当金(保証期間中に発生が予想される製品部品の修理または取替に係る費用)、輸送・保管コスト等が考えられる。)
北米市場・欧米市場 景気低迷の影響
既に新聞やテレビニュースでも報じられている通り、マネーマーケット・クライシスは、北米ならびに欧州での個人消費にも悪影響をもたらしている。
2009年3月期第1四半期には、北米市場・欧州市場ともに、自動車生産台数および販売台数は対前年同期比で減少した。
今後も世界的な景気低迷は継続すると考えられているため、第2四半期から第4四半期にかけても、特に北米市場や欧州市場では、生産台数および販売台数の減少は続き、業績にも悪影響を及ぼすものと考えられる。
景気回復や金融安定化が短期間で期待できない現状において、海外市場への依存度が高いグローバル企業は、戦略の見直しを余儀なくされるはずである。"世界のTOYOTA"も例外ではない。
来月11月6日には、第2四半期の決算発表を予定している"世界のTOYOTA"。その業績内容が注目される。